ノンテクニカルサマリー

公益社団法人と認定特定非営利活動法人との相違とその意味 〜日本における公益的社団法人の構造把握に向けて〜

執筆者 岡本 仁宏 (関西学院大学)
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

特定研究(第四期:2016〜2019年度)
「官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究」プロジェクト

現代社会では、人々によってたくさんの自発的な結社(association)が作られる。その目的は多様で、組織形態もそれに応じて多様である。社団法人格は、このような結社に対するものであって、団体の法人格としては、財団法人と対をなす。1つの社会の中で、どのように結社の構造が変化するかは、社会そのものの姿を見極めるうえで極めて重要である。

一方で、株式会社のような営利追求形態をとるが、他方では、非営利かつ公益追及の形態をとる。営利・非営利、非公益・公益というスケール上に、特定領域限定ではない一般的法人形態として、会社、一般社団法人(普通法人型)、一般社団法人(非営利型)、特定非営利活動法人、認定特定非営利活動法人、公益社団法人が並ぶ。これらの多様な法人格は、それぞれ異なる法的要件によって設立される。

図1:営利・公益スケールによる社団法人格の位置づけ
図1:営利・公益スケールによる社団法人格の位置づけ

会社は、営利目的を原則としつつも株主自治によって営利以外の目的にも開かれている一方、対照的に、一般社団法人(普通法人型)では、非営利目的を原則としつつも、営利目的にも開かれている。さらに、非営利目的法人類型として、税制上の一般社団法人(非営利型)、この類型と税制上類似する特定非営利活動法人があり、一層非営利性が強く要求される認定特定非営利活動法人公益社団法人が存在する。公益活動の実施は、特定非営利活動法人より右の法人が法的要件となるが、左の法人も法人自治に基づいて行うことには支障がない(図1)。

本稿は、これらのうち、非営利性を持つ法人(つまり会社以外)を、平成29年度第4回サードセクター調査データ、「公益法人の概況及び公益認定等委員会の活動報告」(平成29年度版)などの既存調査資料を用いてその特性を概観した。

これらの法人は、1998年の特定非営利活動促進法、2008年の公益法人制度改革三法によって、形成されたものである。これらの法は、1896年(明治29年)制定、1898年(明治31年)施行の旧民法制定以後、110年ぶりになされた、日本の市民社会セクター(物理的強制力を最後の言葉とする政府セクター、貨幣的強制力を最後の言葉とする営利セクターに対するものとして、非営利非政府社会活動の領域)の構造を根本的に変容させる大改革であった。「ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動」(特活法第一条)や「民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業」(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(以下、公益認定法)第一条)のような、民間の自発性に基づく自由な非営利公益活動が解き放たれたのである。その結果、この2つの改革によって、日本の社団の世界の法構造は大きく変容した(図2、3)。

本稿は、この法制度の改革によって、日本の社団型法人の世界が現在どのようになっているのか、に関するスケッチである。

図2:一般的な社団型法人数の推移
図2:一般的な社団型法人数の推移
図3:公益社団法人と認定特活法人推移
図3:公益社団法人と認定特活法人推移

図2で見られるように特定非営利活動法人、一般社団法人は急速に増大した。税制上有利な取り扱いを受ける認定特定非営利活動法人、公益社団法人も、図3で見られるように増大した。しかし、公益社団法人は、5年間の旧制度からの移行期間に、旧社団法人から公益社団法人に移行したものがほとんどで、新しい制度のもとでの公益社団法人は、旧来の社団法人とは異なる特性を示しているが、微増にとどまっている。他方、認定特定非営利活動法人は、2012年改正法によって、その数を順調に伸ばしてきている。

本稿は、これら5法人格の特性を描くとともに、公益社団法人については、その内的構成についても検討した。その結果、法制度改革が確実に社団型法人の性格を変えつつあること、また特定の法規制の形が実体に反映していること、さらに公益社団法人では旧来型の移行法人の占める割合が大きく、その旧来からの性格と新しい法制度との間で齟齬がある場合もあり、その調整あるいは変容が課題となっていること、などが明らかにした。

一般社団法人の急速な増大、近年の認定特活法人の増大、少ないとはいえ新規公益社団法人の参入など、社団法人領域は大きな変動を遂げ、セクターの新しい構図の可能性も示唆されている。