ノンテクニカルサマリー

日本におけるサードセクター組織の現状と課題―平成29年度第4回サードセクター調査による検討―

執筆者 後 房雄 (ファカルティフェロー)/坂本 治也 (関西大学)
研究プロジェクト 官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

特定研究 (第四期:2016〜2019年度)
「官民関係の自由主義的改革とサードセクターの再構築に関する調査研究」プロジェクト

世の中には、政府でもなく、営利企業でもない、「第3の組織」が存在し、さまざまな活動を行っている。それらは、サードセクター組織と呼ばれる。具体的には、NPO、社団・財団、学校法人、社会福祉法人、協同組合、労働組合などである。多種多様なサードセクター組織は、元々日本にも多数存在してきたが、現在、それらの存在感は日増しに高まっている。行政や営利企業では十分解決されない社会問題やサービス供給の主体としての役割が、サードセクター組織に期待されているためである。

サードセクター組織についての設立年、人的資源、財務状況などの団体基礎情報や活動実態については、十分な調査が行われているわけではなく、未解明の部分が大きい。また、サードセクター組織は急速に発展し、変化を遂げている過程にあり、定期的に実態把握を行って行く必要もある。

我々の研究プロジェクトでは過去3回(第1回2010年、第2回2012年、第3回2014年)にわたり「日本におけるサードセクターの経営実態に関する調査」を実施してきた。今回、第4回目の調査を2017年5月に実施した。第4回調査では、「国税庁法人番号公表サイト」を母集団情報として初めて用いた。この母集団情報を用いることにより、経済センサスを用いた過去3回の調査では接近できなかった、零細法人なども調査対象に含めた包括的な実態調査が可能となった。

本稿では第4回サードセクター調査の調査結果について、組織が保有する人的資源、組織ガバナンス、活動の経緯と現況、組織の財務状況、政治・行政との関係性などの観点から分析を加え、サードセクター組織を取り巻く現状と課題について明らかにした。

本稿で概観する調査から判明した基礎的事実は多岐にわたるが、(1)「脱主務官庁制の非営利法人」(一般法人、公益法人、NPO法人など)、「主務官庁制下の非営利法人」(社会福祉法人、学校法人、職業訓練法人など)、「各種協同組合」(消費生活協同組合、農協、共済など)の間で、組織力や活動実態などさまざまな面で大きな差異があり、日本のサードセクター組織は「三重構造」化していること(図1)、(2)サードセクター組織の役員に占める女性比率の平均値は19.5%であり、サードセクターの指導層においても強いジェンダー・バイアスが見られること(図2)、(3)営利企業の経営手法の導入などの「非営利組織のビジネスライク化」が一部の組織で見られること、(4)労働組合や「NPO」に対する「不信」がサードセクター内部でも見られること、などの新たな重要事実が浮かび上がった。

図1:法人格による年間総収入額の中央値(万円)の違い
図1:法人格による年間総収入額の中央値(万円)の違い
図2:法人格による役員に占める女性比率の平均値の違い
図2:法人格による役員に占める女性比率の平均値の違い