ノンテクニカルサマリー

外国機関投資家所有比率とリスクテイキング

執筆者 胥 鵬 (法政大学)
研究プロジェクト 企業金融・企業行動ダイナミクス研究会
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業フロンティアプログラム (第四期:2016〜2019年度)
「企業金融・企業行動ダイナミクス研究会」プロジェクト

企業の稼ぐ力につながる適切なリスクテイキングは、日本企業が直面している重要課題である。本論文の目的は、Jokn, et al (2008)の手法を応用して、製造業上場企業におけるリスクテイキングおよびリスクテイキングと企業成長との関連を解明することである。ここで、リスクテイキングの尺度は産業調整済み減価償却前営業利益率の標準偏差である。この尺度はリスクテイキングや投資意思決定の迅速さ等の代理変数としてよく用いられる。

経済産業省の企業活動基本調査を用いて分析した結果、外国人投資家持株比率が高いほど企業が積極的にリスクテイキングする。その上、表1と表2に示したように、リスクテイキングは売上高成長率と企業収益を有意に高めることが明らかになった。また、企業がリスクテイキングするほど金融危機の影響が小さかったことも明らかになったが、このことから、製造業企業のリスクテイキングが過剰というよりも過少だということが推察される。さらに、先行研究と異なって、外国機関投資家持株比率が直接売上高成長率や収益性に影響を及ぼさないこと(表1(6)と表2(7))も明らかになったが、このことから、外国機関投資家が主に稼ぐ力につながる適切なリスクテイキングを促すことを通じて企業価値を高めることが示唆される。

「持続的な経済成長を成し遂げるためには、企業による適切かつ積極的なリスクテイキングが不可欠である」とわれわれの分析結果は示唆する。大胆なリスクテイキングが日本に広まれば、日本企業の収益性が改善し成長率が高まる。

政策的含意としては、日本企業のリスクテイキングを後押しする外国人機関投資家の役割を活かすために、外国人投資家を含む機関投資家の共働を促す企業統治改革が重要だと思われる。

表1:リスクテイキングと売上高成長率
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
リスクテイキング 15.24
(2.87)***
17.068
(3.34)***
16.755
(3.39)***
14.371
(3.10)***
17.75
(3.34)***
17.46
(3.29)***
短期負債比率 -0.482
(3.03)***
-0.531
(3.37)***
-0.513
(3.54)***
-0.517
(3.44)***
-0.5
(3.33)***
負債比率 -0.299
(3.00)***
その他のントロール変数(流動資産比率以外) ((1)収益性、長期負債比率(2)長期負債比率(5)親会社持株比率、外国機関投資家持株比率(6)(5)の変数とストックオプション)
表2:リスクテイキングと企業収益
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
リスクテイキング 12.426
(4.31)***
13.381
(5.12)***
12.64
(5.26)***
13.303
(5.14)***
11.927
(5.39)***
12.355
(3.67)***
9.914
(4.15)***
流動資産比率 -0.261
(2.26)**
-0.256
(2.07)**
-0.282
(2.41)**
-0.267
(2.29)**
-0.264
(2.35)**
-0.261
(2.21)**
-0.257
(2.44)**
収益性 4.671
(14.67)***
4.571
(13.64)***
4.603
(14.04)***
4.565
(13.70)***
4.681
(15.06)***
4.671
(14.73)***
4.748
(16.13)***
その他のコントロール変数 ((1)log 資産合計(2)短期負債比率、長期負債比率(3)負債比率(4)短期負債比率(6) log 資産合計、log 企業年齢(7)親会社持株比率、外国機関投資家持株比率、ストックオプション)
参考文献
  • John, Kose and Litov, Lubomir P. and Yeung, Bernard Yin (2008), "Corporate Governance and Risk Taking," The Journal of Finance, Volume 63, Issue 4, pp.1679-1728