ノンテクニカルサマリー

管理職への昇進率に関する比較研究:日韓における男女格差

執筆者 YOUM Yoosik (客員研究員)/山口 一男 (客員研究員)
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

その他特別な研究成果(所属プロジェクトなし)

国際労働機関の2015年統計によると、OECD加盟国中、管理職の割合にみられる男女格差が最も顕著なのは日本と韓国である。図1は、OECD加盟国中、日韓両国は男女格差の数値が突出して高いことを示している。この異常ともいえる不平等を解明するには、不平等の要素分解が必要となる。これは、人的資本における男女格差による可能性がある。不平等の要因が何かによって、男女格差是正の方策は大きく異なる。教育や経験などの人的資本が不平等の根底にあるならば、女性の人的資本蓄積の強化に向けた政策が必要である。しかし不平等の要因が、人的資本ではなく「ガラスの天井」であるならば、企業の昇進体制を分析し、変えていく必要がある。

図1:OECD加盟国における管理職割合の男女間格差
図1:OECD加盟国における管理職割合の男女間格差
出展:国際労働機関2015より。数値が得られなかった年については0と記録。

Yamaguchi (2014) は、ディナード・フォーティン・レミュー(DFL)の仮想現実分解手法を用い、日本の管理職割合の男女格差の分析を行った。表1は、2009年に行われたRIETIの調査を用いた分析結果から、日本の男女不平等について「人的資本で説明できない部分」をまとめたものであるが、2つの興味深い事実が明らかになった。1つ目は、人的資本の共変数をより大きく加重した場合、「説明できない部分」が縮小する点である。これは、管理職割合の男女不平等は、部分的に人的資本の男女不平等によって説明できることを意味する。しかし、年齢、教育、勤続年数に関し仮想現実処理での推定値を用いた場合でも、「説明できない部分」が70〜80%残る。2つ目は、係長から課長に昇進すると「説明できない部の部長のデータが十分ではなかったため、部長に関しては調査できなかったが、現状の分析結果によると、日本企業では、正社員の中間管理職以上での、ガラスの天井あるいは「(職位が上がるにつれ、女性が減る)水漏れパイプ」が存在することを示唆している。

表1:日本の男女格差を「説明できる部分」(2009年)
課長 部長
差異 説明できない 説明できる 差異 説明できない 説明できる
-0.3 79.0 21.0 -0.3 69.7 30.3

図2は、同様の分解手法を用いて、韓国のガラスの天井の推移を示したものである。この数値から、3つの事実が明らかになった。1つ目は、年齢、勤務年数、学歴などの人的資本、およびこれら各要素間の3つの相互作用項に関し、仮想現実処理での推定値を用いた場合、管理職割合の男女不平等について「説明できない部分」(黄色い線)が62%だった2007年を除けば、75〜85%であった。これは、係長の数値が70%、課長が80%を示す日本とほぼ同じ状況である。韓国の管理職全般の数値には部長以上が含まれているため、両国の数値は著しく類似している。2つ目は、韓国の女性は日本同様、係長(灰色の線)から課長(オレンジの線)、そして部長(青い線)へとより高い職位に昇進するに従い、「説明できない部分」の拡大に直面するということである。トップマネジメントに関するデータはないが、これは明らかにガラスの天井の存在を示している。また、係長と課長における「説明できない部分」が、1997年までは何らかの理由で極めて似通っているのも興味深い点である。管理職への昇進における男女平等という点においては、韓国企業は過去四半世紀の間、ほとんど改善が見られない。

図2:韓国の正社員におけるガラスの天井の推移(1990〜2013年)
図2:韓国の正社員におけるガラスの天井の推移(1990〜2013年)
参考文献
  • Yamaguchi, K. (2014). "Gender Difference in the Proportion of Managers/Supervisors among White-Collar Regular Workers in Japan." Presented at the symposium of the Asia Research Fund. Seoul.