マクロ経済ショックと製品構成の変化

執筆者 Robert DEKLE (University of Southern California)
川上 淳之 (帝京大学)
清滝 信宏 (プリンストン大学)
宮川 努 (ファカルティフェロー)
研究プロジェクト 日本企業の競争力:生産性変動の原因と影響
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム (第三期:2011~2015年度)
「日本企業の競争力:生産性変動の原因と影響」プロジェクト

生産性を上昇させる手段の1つとして、企業レベルの新陳代謝が注目されてきたが、本論文は、企業レベルより詳細な製品レベルの変化に着目し、マクロ的な変動が、この製品レベルの変化にどのような影響をもたらすかを考察する。

「工業統計表」からみた1企業当たりの製品数は約1.7個である。ただこれを輸出企業に限ると、その製品数は平均的な企業の製品数よりも多く、製品の追加や削減も平均的な企業よりも活発である(下図参照)。この結果、輸出企業の生産性は平均的な企業よりも高くなっている。

こうした製品数の変化に企業レベル、産業レベルの生産性、外需、政府支出などがどのような影響を与えているかを実証的に検証すると、企業レベルおよび産業レベルの生産性の上昇や外需の増加は、製品数を増加させることがわかった。ただし、為替レートの減価は、生産性の高い企業については、必ずしも製品数を増加させることにはつながらない。輸出についても生産性の高い企業ほど活発に行うことが確認された。

以上の分析から政策的含意として2つの点が指摘できる。1つは、企業の参入・退出だけでなく、既存の企業の新製品開発にも着目し、これを促進する政策を行うこと。2つ目は、こうした製品構成の変化は、マクロの景気循環要因にも左右されることから、景気安定策にも注意を払う必要があるということである。

図:製品追加数および削減数
図:製品追加数および削減数