ノンテクニカルサマリー

中国経済成長の源泉に関する会計

執筆者 伍 曉鷹 (一橋大学経済研究所)
研究プロジェクト 東アジア産業生産性
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

産業・企業生産性向上プログラム (第三期:2011~2015年度)
「東アジア産業生産性」プロジェクト

中国における経済成長の源泉に関する研究は、投入産出の総計値を使用するため、非明示的に全ての産業を均一に扱い、同じ投入産出価格を使用するという問題に直面する。本論ではこれらの問題を緩和するとともに、Jorgenson成長会計アプローチを中国産業生産性(China Industry Productivity)データから新しく構築された産業別データに適応し、1980-2010年の改革期における個別産業パフォーマンスの原因を特定することにより、中国の経済成長の源泉を検証した。中国のGDP年成長率の9.16%のうち7.14%が労働生産性の増加によるものであり、残りの2.02%が労働時間の増加によるものだということが明らかになった。この労働生産性の成長はさらに分解できる。その内訳は5.55%が資本深化、0.35%が労働の質の改善、1.24%が全要素生産性の成長である。言い換えれば、中国労働生産性の成長の約83%は第一次要素の成長、特に物的資本の成長に寄与されており、全要素生産性の改善はたったの17%に過ぎなかった。

産業別全要素生産性の成長起源における我々のさらなる検証において、政府介入がされにくい産業、たとえば農業や「半製品製造業と完成品製造業」のようなグループが「エネルギー」企業のようなより政府介入にさらされる産業よりさらに生産的であるという傾向が示された(図参照)。このことは、中国経済の問題点を解決したり、現行の政策における政府の役割をいかに軽減するかの議論を促したり、経済効率と生産性パフォーマンスを容易に改善するなどの一助となるだろう。

図:産業グループ別全要素生産性指数(1980=100)
図:産業グループ別全要素生産性指数(1980=100)