ノンテクニカルサマリー

貿易自由化とアフターマーケットサービスの輸入

執筆者 石川 城太 (ファカルティフェロー)
森田 穂高 (ニューサウスウェールズ大学)
椋 寛 (学習院大学)
研究プロジェクト 複雑化するグローバリゼーションのもとでの貿易・産業政策の分析
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

貿易投資プログラム (第三期:2011~2015年度)
「複雑化するグローバリゼーションのもとでの貿易・産業政策の分析」プロジェクト

消費者が耐久財を消費するためには、その財自体はもちろんのこと、加えてさまざまなサービスが必要である。たとえば、流通、マーケティング、修理、メンテナンスといったようなサービスである。そして、消費者が購入する前のサービスをbefore-market services、購入した後のサービスをafter-market servicesと呼ぶことがある。

生産者が自国以外の国、すなわち、輸出先国においてそのようなサービスを提供するのは容易ではない。そのようなサービスを提供するために、生産者は直接投資を行ってサービスを提供する拠点を構築することが考えられる。しかしながら、そのような直接投資には、さまざまな費用がかかる。当然直接投資自体に費用がかかるが、さらに、外資規制や許認可制といったさまざまな規制も費用の一部と考えられる。

サービス貿易においては、直接投資によって拠点を整備してサービスを提供するといった形態が約50%を占める。したがって、これらの費用の低下がまさにサービス貿易の自由化といえる。しかし、多くの国、とくに発展途上国では、サービス貿易の自由化はあまり進んでいない。このような状況の下では、サービスの提供を輸出先国のライバル企業にアウトソースしたり、場合によっては、輸出先国のライバル企業が勝手に修理やメンテナンスといったサービスを提供したりしている。

本論文では、after-market services貿易の自由化、すなわちafter-market services拠点を直接投資によって整備する際の規制などの緩和や撤廃が、財貿易の自由化とどのような関連をもつのかを理論的に分析している。

本論文の主要な結論は、財貿易の自由化をおこなっても、after-market services貿易の自由化が同時に行われなければ、輸入国の消費者や輸出国の生産者が損失を被り、世界全体の経済厚生も下げてしまう可能性があるというものである。GATT・WTOのもとで、財貿易の自由化はかなり進んできているが、サービス貿易の自由化はGATSのもとで進められてはいるものの、そのスピードは遅い。したがって、このまま財貿易の自由化のみが先行してしまうと、実は輸入国の消費者や輸出国の生産者が不利益を被りかねない。

今後は、財貿易の自由化を進めると同時にサービス貿易の自由化も積極的に進めていく必要がある。

耐久財の消費とサービス
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