ノンテクニカルサマリー

中国企業による海外投資:現地調査による発見と考察

執筆者 CHEN Xiaohong (Development Research Center of the State Council of China (DRC))
QI Changdong (Development Research Center of the State Council of China (DRC))
ZHOU Yan (Development Research Center of the State Council of China (DRC))
ZONG Fangyu
研究プロジェクト 日本経済の創生と貿易・直接投資の研究
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

貿易投資プログラム (第三期:2011~2015年度)
「日本経済の創生と貿易・直接投資の研究」プロジェクト

本報告書は、6つの産業に属する中国企業47社の海外投資および海外事業活動に関する2012年の調査結果をまとめたものである。47社の海外売上高は平均409億元で、総売上高の約28.5%に相当する。調査対象47社の海外投資活動歴は平均8.6年であった。

本調査の目的のひとつは、対象企業がどの程度まで海外ネットワークを確立しているかを知ることである。調査の結果、対象企業は平均40拠点の海外ネットワークを確立していることが明らかになった(最大380拠点)。海外ネットワークの大半は発展途上国において展開されているが、研究・設計を目的とするネットワークについては、西欧、北米、日本、韓国が83%を占める。対象企業の海外ネットワークは、平均17カ国の事業体により構成されている。中国企業は、主として株式保有を通して海外企業と関わっており、そのため、契約モデルの重要性が増している。ネットワーク確立の主な手法は、グリーンフィールド投資である。しかしながら、特に大企業においては合併買収(M&A)の重要性も高まっている。買収対象のほとんどは、先進国・地域の企業である。

これまでのところ、海外投資によって良い成果がもたらされている。ほとんどの調査対象企業は、海外投資の増加が、海外売上高の上昇、市場シェア拡大、および研究開発力の向上につながったとした。また、一部の企業は、海外投資の結果、海外生産の関連費用を削減できたとした。このような恩恵を前提として、全調査対象企業が海外投資拡大を計画している。

本調査の結果により、中国企業の目標も明らかになった。回答者によると、海外市場進出の主な動機は技術力の獲得であった。エネルギー産業および素材産業の関連企業は、資源へのアクセスを特に重視していた。ほとんどの企業は国境を越えた事業展開の予備段階にあるが、一部少数の企業は、国際化およびグローバル化の予備段階にあった。

企業が海外事業を展開する方法は数多くある。しかし、方法に関わらず、すべての企業が、グローバル・バリュー・チェーンの統合を通じた市場競争力強化と国境を越えた事業展開促進が重要であるとした。

以上の調査結果に加え、海外事業収入と中国企業の強み、海外展開戦略、海外事業経験の間にどのような関係があるのかを調査するための分析モデルを作成した。同モデルにより、海外事業収入と以上3つの結果変数の間に正の相関関係が認められた。

表:産業別にみたネットワークの機能(%)
販売 生産・組立 研究開発・設計 天然資源 金融 その他 合計
電気・電子 67 13 6 0.2 1.2 13 100
繊維 53 27 7 7 4 1.4 100
機械 79 6 3 1 6 1 100
エネルギー・素材 30 9 1 55 1.7 3 100
自動車 88 5 3 0.7 4 100
医薬品・化学 49 3 23 9 3 14 100