ノンテクニカルサマリー

資源消費国の資源獲得戦略が資源価格に与える影響

執筆者 東田 啓作 (関西学院大学)
森田 玉雪 (山梨県立大学)
馬奈木 俊介 (ファカルティフェロー)
寶多 康弘 (南山大学)
研究プロジェクト 大震災後の環境・エネルギー・資源戦略に関わる経済分析
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

新しい産業政策プログラム (第三期:2011~2015年度)
「大震災後の環境・エネルギー・資源戦略に関わる経済分析」プロジェクト

新興経済国が経済成長を実現する中で、グローバルな資源需要が高まってきている。一方で、資源は偏在している。たとえば、下の図は原油の埋蔵量を表している。青く濃いエリアほど埋蔵量が大きいことを表している。

図
出典:BP Statistical Review of World Energy June 2012

このような状況において、資源消費国にとって資源を低価格で安定的に調達することは、その経済活動にとって重要な鍵となっている。それでは、資源消費国の政府が資源獲得を行うこと、あるいは自国企業の資源獲得行動を支援することは、資源価格を引き下げるのだろうか。

石油価格のデータを用いた実証分析からは、政府が資源獲得戦略を強めた直後には、その国の直面する石油価格が上昇するが、長期的には低下するとの結果が得られた。短期的な価格上昇の効果より、長期的な価格低下の効果の方が大きく、政府の資源獲得戦略をサポートする分析結果となっている。

このような結果が得られる理由としては、資源産業においては、上流産業のほうが、市場集中度が高いことが考えられる。資源メジャーと呼ばれる少数の企業が世界の鉱山権益のかなりの部分を所有しているが、そのような状況においては、資源消費国の政府の行動が、これらの資源メジャーや資源産出国の行動を変える可能性が考えられるのである。

他方、理論分析からは、将来の資源需要が少々の価格変動に影響を受けることなく十分大きく、また資源権益獲得の投資による限界的な採掘量の増加が十分大きい場合には、政府の資源権益獲得戦略がサポートされた。この分析結果は、資源消費国の政府の資源獲得戦略の成否を見通すためには、将来の需要予測や資源採掘への投資効果の計測が重要であることを意味している。