ノンテクニカルサマリー

グローバル多極秩序への移行と日本外交の課題

執筆者 中西 寛 (ファカルティフェロー)
研究プロジェクト 大国間秩序の変化と日本外交の課題
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このノンテクニカルサマリーは、分析結果を踏まえつつ、政策的含意を中心に大胆に記述したもので、DP・PDPの一部分ではありません。分析内容の詳細はDP・PDP本文をお読みください。また、ここに述べられている見解は執筆者個人の責任で発表するものであり、所属する組織および(独)経済産業研究所としての見解を示すものではありません。

現在の国際秩序の特徴は、国際的に主要国(大国)と認知される国家の再編成が起きると共に、世界経済システムが市場主導型グローバリゼーションからそれへのある種の反省を内包したものへと移行しつつあることである。この変化は総じてグローバル多極秩序への移行を意味しているが、新しい秩序のあり方はまだ十分に姿を現していない。本稿では、新たな国際秩序の基底をなす要因として、主要国関係とグローバル・ガバナンス・メカニズムに着目した。前者についてはアメリカ、中国、欧州連合(EU)、ロシア、インド、ブラジルの対外政策の傾向を踏まえた上で、主要国関係の見通しとしてアメリカの覇権後退と代替的な覇権国の不在、米中基軸論の限界、先進国―新興国関係の摩擦といった要素に触れる。後者では特にG20の可能性と限界に言及し、既存の国際機関との分業体制の重要性を説く。

このような情勢下で日本は、アメリカ、中国との関係を主軸に他の主要国ともそれぞれ二国間関係の基本方向を定義すると共に、G7/8の役割を定義し、G20では韓国、インドネシア、オーストラリアなどとも協力するなど多層的外交を追求することが重要となる。また、東アジア・太平洋地域での国際協力を増進し、自由民主主義・市場経済の基本枠組みを漸進的に定着させることが日本の安全および繁栄に資すると共に、国際的な発言力の確保につながることを論じる。