著者からひとこと

日本企業の為替リスク管理 通貨選択の合理性・戦略・パズル

日本企業の為替リスク管理 通貨選択の合理性・戦略・パズル

日本企業の為替リスク管理 通貨選択の合理性・戦略・パズル

    著:伊藤 隆敏、清水 順子、鯉渕 賢、佐藤 清隆

著者による紹介文

日本には世界有数の製造業があり、円は国際通貨であるにも関わらず、日本の輸出入において円よりもドルの方が貿易建値(インボイス)通貨として多く使われているのはなぜなのだろう。その謎を解明すべく、著者は2007年から日本の製造業企業(本社と海外現地法人)にインタビューとアンケート調査を繰り返し実施してきました。いくつかのジャーナル論文を公刊した後、その成果をまとめて2018年には英語書籍『Managing Currency Risk : How Japanese Firms Choose Invoicing Currency』(Edward Elgar Publishing)を出版し、第62回日経・経済図書文化賞を受賞するなど高い評価を得ることができました。

本書は、英書の理論的・実証的な枠組みを最新の調査データを用いた実証分析によって発展させ、さらに研究成果から得られた知見から導かれる日本企業の現状に即した実務的な解釈や政策含意も加えて新たに書き下ろした著者渾身の一作です。

本書の貢献は次の通りです。第一に、英書執筆後に実施された最新のインタビュー・アンケート調査のデータを網羅して、どのような要因が日本企業のインボイス通貨選択や為替リスク管理に影響を与え、どのような変化が生じているのかについて、最新の分析結果を詳細に報告しています。第二に、事例研究として、実際の企業インタビューを具体的な事例として紹介しています。この中には、日本の主要輸出企業の為替リスク管理のベストプラクティスからの教訓が詰まっています。第三に、アジア域内貿易において人民元も含めたアジア現地通貨建ての取引が増え、全体としてドル建て・円建て取引が減少しつつある事実を新たに示しています。これを踏まえて、基軸通貨ドルのゆくえについて考察しています。第四に、コロナ禍での世界の貿易構造の変化やフィンテック(デジタル通貨)を利用した決済手段の可能性が広がる中、今後のインボイス通貨選択の変化の方向性を展望しています。

本書は、為替リスク管理やインボイス通貨選択に関する学術的な要素を基礎としつつも、貿易や投資で為替を利用する実務家の啓蒙書として、政策担当者のみならず海外に進出する日本企業・金融機関やビジネスマンの為替リスク戦略の一助となることを目指しています。

著者(編著者)紹介

伊藤 隆敏顔写真

伊藤 隆敏

清水 順子顔写真

清水 順子

鯉渕 賢顔写真

鯉渕 賢

佐藤 清隆顔写真

佐藤 清隆