著者からひとこと

大過剰 ヒト・モノ・カネ・エネルギーが世界を飲み込む

著者による紹介文

原油価格の大幅下落と回復、イギリスのEU離脱(Brexit)、アメリカのトランプ大統領誕生など2016年以降大きな、しかも想定外とも言える出来事が続出した。当然、その背景が問われるが、需要減、反グローバルいずれも、簡潔でわかりやすい表現ではあっても、出来事の要因を十分正しく言い当てているとは言いがたい。

世界経済は、減速しているが成長を続けていて需要は増え続けている。反グローバルの表現はわかりやすいが、それではなぜイギリスはEU離脱を決めた後もグローバル化を推進する姿勢を強調しているのかを説明できない。同様に、いままでグローバル化を先頭に立って推進してきたアメリカで、なぜ国民の半分もの人々が輸入抑制や移民規制を公言するトランプ氏を大統領選挙で支持したのか経緯が理解できない。

本書は、このような疑問に答え、その上でいま世界経済に何が生じているのか、そして今後どのような展開が考えられるのかを、世界経済全体を出来るだけ俯瞰して見ることで説明するものである。その中で、一連の出来事が互いに関連し、「過剰の時代」との共通キーワードでくくることができることも示している。

世界経済全体に視点を置いて見ていくと、実は2000年以降の新興国はいままでにない高成長を遂げて、かつてない量の外貨を獲得してきたことが見て取れる。ただし、それはアメリカでのサブプライムローン・バブルや中国経済の高成長で世界経済が大いに盛り上がっていたことが寄与しており、長期に持続するものではなかった。現に、リーマンショックを機に世界経済の高成長は途切れ、ヒト、モノ、カネ、エネルギー全般が供給過剰に転じている。

これは、80年代後半に未曾有の不動産バブルで好景気に沸いたものの、その後バブル崩壊に見舞われた日本経済の状況と同じである。当時の日本経済では、債務、設備、雇用の「3つの過剰」が言われ、不良債権処理に見られるように過剰供給力の処理が最優先課題であった。世界経済の現状も、高成長が急減速して需給が緩和するとともに供給力が過剰となった姿である。「過剰の時代」の到来で、いかに需要を盛り上げるかだけではなく、いかに供給力を制御するかも課題として浮かび上がっている。

この「過剰の時代」を踏まえると、EUからの離脱を選択したイギリスやトランプ政権のアメリカが移民や輸入の増加について需要国として抱いている見方に違う視点が追加される。それは、移民や貿易が増えている供給サイドがどうなっているのかという視点であり、需給双方を見ることで世界経済の動きがよりバランスよく見えるようになる。

本書の構成は、ヒト、モノ、カネ、エネルギーそれぞれに一章ずつ割いている。それぞれを、世界俯瞰的な視点で見るとどのような需給状態にあるのかを、その背景とともに示すためである。いずれも、地域によって事情が異なりつつも不足から過剰に転じている。後半では、過剰の時代の世界経済が今後どう展開していくかも示しているが、大きなブレイクスルーが生じうる時代にあって、日本経済にも十分チャンスはある。

激動する世界経済にあって、Brexitやトランプ政権の今後の動きなどさらに不透明な状況が続く。第四次産業革命など大きなブレイクスルーがどのように生じていくのかも、今後を待たねばわからない。しかし、我々が何をすべきかも含めて、「過剰の時代」のキーワードとともに本書が読者にとって現在と今後の内外経済を読み解く一助となれば大変ありがたい。

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