著者からひとこと

サービス立国論―成熟経済を活性化するフロンティア―

著者による紹介文

本書は、高齢化・人口減少、経済活動のグローバル化が一段と進行することが確実に予測される中、すでに成熟経済となっている日本の活力を維持・向上するための課題について、サービス経済という切り口から考察した日本経済論です。

日本の潜在成長力を高める上でサービス産業の生産性向上が重要な課題となっており、成長戦略や経済政策の中でも、サービス産業の活性化や生産性向上が柱の1つとして位置付けられるようになってきました。しかし、依然としてサービス分野に関する研究の蓄積は乏しいのが現状です。本書は、各種統計データや筆者自身のものを含む内外の理論・実証研究に基づいて、サービス産業に関するさまざまな誤解を解くとともに、サービス経済の時代における望ましい政策について幅広い視点から考察したものです。

本書全体を通じて、サービスが今後の日本経済を牽引する大きな役割を担うこと、規模の経済の活用、イノベーション、経営の質の向上、円滑な新陳代謝などを通じて、サービス産業の生産性を向上させる余地が大きいことを指摘しています。また、サービスの多くは「生産と消費の同時性」、「質の評価の困難性」といった製造業とは異なる特性を持つため、その生産性に対して人口や企業の地理的分布、個人の時間使用パターン・働き方などが大きく影響することを示しています。

結果として、優れたサービス企業を生み出し、また、日本のサービス産業全体の生産性を高めていく上で、国土・都市計画、労働市場制度、税制、企業法制、各種の社会的規制など経済的・社会的な諸制度の設計がカギとなり、その巧拙がサービス経済のパフォーマンスを左右すると論じています。

本書が、経済政策の企画・立案や企業経営の実務に携わる方々にとって有用なものとなることを願っています。

2016年4月
森川正之

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