著者からひとこと

アウトソーシングの国際経済学 グローバル貿易の変貌と日本企業のミクロ・データ分析

著者による紹介文

国境と企業の境界を越えるアウトソーシングに関するミクロ・データを用いた新・新貿易理論の実証研究

情報通信技術の高度化とその世界的な普及、中国やインドを始めとした新興国の急速な発展などを背景に、グローバル貿易は近年変貌を遂げている。なかでも、部品など中間財の製造や最終組立工程にとどまらず、かつて日本企業では社内でしか行われていなかった多様なサービス業務が、国境を越え、そして企業の境界をも越えて、アウトソーシングされるトレンドは無視できない。国際貿易理論においても、海外アウトソーシングを含む企業のグローバル化行動に関する研究が今世紀に入って新・新貿易理論として本格化した。本書は、RIETI独自の調査や経済産業省の公式統計から収集された企業ミクロ・データを活用して、日本企業による海外アウトソーシングをさまざまな指標により多角的かつ定量的に把握するとともに、生産性、雇用、研究開発に関する新・新貿易理論の仮説をいち早く検証した実証研究の成果をとりまとめている。全体を通じてアウトソーシングという切り口から見た国際貿易論に関する鳥瞰的な展望につながるよう、個々の推計結果の位置付けに説明を加えた。また、現実社会との関わりにふれるとともに情報的価値の高い各種データを広く収録した一方で、説明に数式はほぼ全く用いていないので、国際経済学研究者だけでなく、長期的な潮流に関心のあるビジネスまたは経済政策関係の方々にもご参考になれば幸いである。

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