2010-2-05

平成22年度「わが国における四半期報告制度の社会的定着度」に関するアンケート調査

プロジェクト

企業情報開示システムの最適設計

プロジェクトリーダー

古賀 智敏 (RIETIファカルティフェロー/同志社大学商学部特別客員教授)

調査の目的と背景

平成20年4月1日以降を開始事業年度とするわが国の上場企業に対して義務付けられた四半期報告制度では、金融商品取引法第193条の2第1項に基づき、公認会計士または監査法人(以下、監査人)による監査証明を受けた四半期連結財務諸表を含む四半期報告書の提出が要求される。この監査証明は「四半期レビュー」と称されるが、その報告書の提出が全ての上場会社に法令によって義務付けられているのはわが国だけである。

金融商品取引法が指向する信頼性の高い企業内容開示制度の整備・充実によって投資者の保護を図ることは、資本主義経済社会において極めて重要である。特に、保証のない信頼性の不明な情報の開示は、意思決定者を誤導し損害を与える可能性があるだけでなく、結果的には証券市場そのものの存在を脅かすことにもなりかねない、という点からすると、全ての上場企業の四半期財務諸表に保証としての四半期レビュー報告書が添付されることは目的適合的であると解される。しかし、この四半期報告制度をめぐる当事者が、四半期財務諸表を中心とする意思決定情報の信頼性の程度が、年度監査とは異なっているということを理解しているかどうかは、重要な観点である。

当アンケートでは、
(1) 四半期財務諸表を作成している上場企業
(2) 当該財務諸表に対して監査証明を付与する監査人
(3) 当該証明済み財務諸表を利用する利用者(アナリスト)
の3当事者が、年度監査による監査証明と四半期レビューによる監査証明の相違を識別して、情報を作成し、証明し、利用しているのか、について明らかにした上で、もし当該識別が適切になされていない、或いは期待されたとおりの行動が取られていないのであれば、その原因を探ることを目的にする。

具体的には、
(1) 企業側に対しては、どの程度の手間と時間による経済的コストをかけているのか
(2) 監査人の側では、何時間、どのようなレビューの手続を、誰が、実際には実施しているのか
(3) 利用者は四半期レビュー報告書の「適度な保証(moderate level)」を把握し、意思決定情報としてどのように利用しているのか
というそれぞれの当事者の意識と行動を明らかにし、監査証明に係る基準の改訂を含む四半期報告制度のあり方に対して提言を行なうため、アンケート調査を実施する。

調査概要

     
調査対象・対象者数

①平成22年3月31日決算企業(一部、二部、マザーズ) 2,599社
②日本公認会計士協会の上場会社監査事務所として登録された監査事務所 203件
③主要アナリスト 111件
 合計2,913件(別途RIETIよりご案内を送付させていただいた方のみ)が対象

調査手法

郵送調査

実施時期

平成22年 (2010年) 11月1日~12月6日

回答数(回収率)

①企業:923社(回収率35.5 %)
②監査人:77事務所(同37.9 %)
③アナリスト:13社(同11.7 %)

関連リンク