エネルギー資源の制約、地球環境の制約等経済成長を制約する要因への最も抜本的な解決策は、新技術の開発とそれを活用したイノベーションである。人工知能、抗体医薬や再生医療、新素材など、新しいイノベーションの機会も拡大している。「イノベーション」プログラムでは、イノベーションの過程の根幹である、新たな知識の創造と活用を把握できるオリジナルなデータを開発し、それを活用してイノベーションを加速するための、政策、制度そして組織の在り方を分析することを目的としている。
本プログラムの特徴は、第1に技術開発過程やイノベーション過程などを把握できるオリジナルなデータの開発である。研究開発やイノベーションを駆動しているのは知識であり、利用可能な知識ストックの量と質、企業による融合化や組み合わせ能力が研究開発のパフォーマンスを決める。本プログラムでは、特許やその引用文献など知的財産に係る公表データから新たに構築するデータ、従来実施してきた発明者サーベイの活用、企業活動や研究開発に関わる政府統計などを活用して、このような知識の流れや組み合わせなどを体系的に把握するオリジナルな分析用データを構築した研究を行う。
本プログラムの第2の特徴は、こうしたデータを活用して、知的財産制度、標準制度、研究開発支援制度、産学連携、起業システムなど技術開発やイノベーションを支える制度や政策の在り方についてオリジナルな分析をして、提言を行うことを目指している。現在、科学技術イノベーション政策において、「Science for science policy」の重要性が国際的に指摘されており、日本でもこれを支援するプログラムが動き始めている。また米国特許庁、欧州特許庁、世界知的所有機関など主要な特許庁にはチーフエコノミスト・オフィスが設置され、審査データ等公開の進展、それによる知的財産の分析が進みつつある。RIETIの本プログラムでは、こうした流れと連携しつつ、客観的なエビデンスによる政策分析に資する。
本プログラムの第3の特徴は、国際的な視野に立った研究の実施である。研究開発競争は従来から国際的であるが、同時に世界的に見ると近年、国境や国籍を超えた研究開発協力が高まっており、それが研究開発のパフォーマンスにも重要な意味を持つようになっている。同時に、世界的に見れば、研究開発やイノベーションを支える制度や組織には多様性があり、その中で日本の強みの源泉を理解し、また是正や改革を要する分野を明らかにしていく上で、国際的な観点からの分析が有用である。RIETIのイノベーションのプログラムでは、日米及び日米欧の大規模な発明者サーベイを実施してきたが、その成果を活用した研究の推進を含め、国際的な研究協力の推進を含めた国際的な視野に立った研究を行う。
