「開発援助の経済学」研究会

プロジェクト概要

プロジェクト概要

開発援助の先端研究

経済成長支援から直接の貧困削減支援へ、プロジェクト中心から財政支援中心へ、融資中心から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと国際的な開発援助に関する議論が大きな転換点を迎えている。2002年3月のモンテレー会議以降、世界的な援助、特にアフリカへの支援が急増している。国連の場やJeffrey Sachs教授率いる「ミレニアムプロジェクト」では、援助の「量」へのコミットメントを中心とした議論が展開されている一方、William Easterly教授を中心として、そのような「量」の議論に対する批判も根強い。

2006年度の「開発援助のガバナンス構造」プロジェクトでは、アジアとアフリカにおける援助パフォーマンスの違いにつき明らかにすること、より詳しくは、「ドナーの意思決定構造」、「受入国の意思決定構造」と「援助の形態(モダリティ)」の三つで構成される、公的国際資金フローとしての開発援助の「統治構造」を前提として、エビデンスに基づきながらアジアとアフリカの援助効果の違いを体系化することを目的にした。公刊予定も含め、8本のDPから明らかになった主な諸点は以下の通りである:

  • 日本の援助は、日本からのFDIを促進する頑健な効果を持っており、日本の援助における援助・投資・貿易の「三位一体論」の存在が支持される。
  • 東アジア諸国に比べてサブサハラアフリカ諸国で顕著な問題となっている援助氾濫は、援助受入国の経済成長パフォーマンスに負の影響をもたらす。
  • 技術協力は、対外的な経済開放政策・FDIともに重要な国際技術波及経路となっている。
  • ミレニアム開発目標を基準にすると、ドナーの援助配分は、効率的ではなく、改善の余地がある。

開発援助のガバナンス構造

開発援助に関する議論の中心は、プロジェクトから財政支援へ、融資から債務削減・グラント中心へ、バイからマルチへと大きな転換点を迎えている。しかし、国際援助コミュニティにおける基本的開発目標である、MDGs (Millennium Development Goals) 達成の政策ツールは必ずしも明らかではなく、「直接的貧困削減」と「経済成長媒介戦略」の相対的有効性についても議論が続いている。また、援助の「量」を巡る議論が展開される一方、援助の「質」に関する議論は深化していない。

これらの問題意識を踏まえ、本研究では、「開発援助のガバナンス構造*」をエビデンスに基づきながら体系的に解明することを目的としている。具体的には、こうした問題意識に基づき、アジアとアフリカにおける開発援助効果の違いとその要因について、貿易・投資・援助の「三位一体のモデル」による計量分析等を行う。
*「開発援助のガバナンス構造」とは、ドナーの意思決定構造、受入国の意思決定構造と援助の形態(モダリティ)で構成される、公的国際資金フローとしての開発援助の「統治構造」のことである。

プロジェクト成果(ディスカッションペーパー)

プロジェクト成果(ポリシーディスカッションペーパー)

プロジェクト成果(Research Digest)