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2009年度政策研究領域(基盤政策研究領域)

II. 国際競争力を維持するためのイノベーションシステム

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(2010年4月7日現在)

我が国企業が国際競争力を維持していくためには、持続的なイノベーションが不可欠である。しかしイノベーションは、これを促進する政策も含め、それらを効果測定するのが難しい分野である。したがって、この研究の実施にあたっては、企業、産業レベルのイノベーションとマクロ経済の全要素生産性の相互関係を明らかにする理論的・実証的な分析枠組みが求められる。その中で、我が国産業が置かれている状況や個々の産業技術政策についての評価や分析を、イノベーション政策に活用していく。

1. 日本企業の研究開発の構造的特徴と今後の課題

活動期間:2009年6月29日〜2010年6月30日

プロジェクトリーダー

長岡 貞男ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本研究プロジェクトで実施した発明者サーベイの結果(昨年度の追加サーベイを含め)を利用し、また特許データ、企業活動基本調査など他の関連統計との接続を進めて、日本のイノベーション過程についての深い研究を実施するとともに、イノベーション・パフォーマンスを高めるための政策問題に光を当てる研究を実施する。このため、(1) 発明者のキャリアの分析を可能とするよう、発明者サーベイの対象となった発明の発明者と特許データベースとの接続を行い、その名寄せを進める。(2)人材育成のあり方など、科学と産業のイノベーションの関係の今後のあり方を検討するため、RIETI国際ワークショップ(「Science for innovation」)を開催する。(3)日米サーベイの統計データの公表など、日米および日欧など国際的な学者による共同研究と研究交流の推進にも取り組む。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETI国際セミナー

RIETI BBLセミナー / 国際ワークショップ

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2. 日本企業のR&D国際化における組織・戦略的課題:経営学的アプローチ

活動期間:2008年3月31日〜2009年12月31日

プロジェクトリーダー

浅川 和宏ファカルティフェロー

プロジェクト概要

最近のR&D国際展開の変容ぶりは、既存のR&D国際化の「通説」による説明可能性の限界を強く示唆している。いわば先進地域、新興地域を包括したグローバル規模でのR&D体制の地殻変動が起きている(Asakawa and Som, 2008)ともいえる。こうした問題意識の下、本研究では日本企業のR&D本部および海外R&D拠点に対し実施するアンケート調査から得られる最新データを基に、R&D国際化における新たな動向を把握し、特に組織・戦略的側面における現状と課題についての分析を行う。これまでの「通説」を再検討し、今日の状況に合った分析枠組みが必要であると考えている。本研究では企業およびその海外拠点といったよりミクロレベルの分析により、OECDをはじめとする諸機関によるマクロデータとの相互補完的位置づけを意図している。

主要成果物

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4. 産業・企業の生産性と日本の経済成長(旧 日本の生産性と経済成長:国際比較と生産性上昇源泉の分析)

活動期間:2009年6月22日〜2010年6月30日

プロジェクトリーダー

深尾 京司ファカルティフェロー

プロジェクト概要

労働人口が減少する今後の日本においては、生産性上昇が経済成長の主要な源泉である。またTFPは、物的資本の収益率を規定し設備投資の動向を左右する点でも重要である。本研究では、JIPデータベースを毎年更新することにより、日本経済の最近の生産性動向について分析可能にする。また、日本の経済活動全体をカバーするミクロデータとマクロ・産業レベルのデータを統合することにより、マクロ・産業レベルのTFP・労働生産性上昇を個別企業・事業所内の視点から分析する。

主要成果物

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6. 複雑化する人工物と設計プロセスおよび製品アーキテクチャの実証分析

活動期間:2007年7月24日〜2009年4月30日

プロジェクトリーダー

藤本 隆宏ファカルティフェロー

プロジェクト概要

デジタル化やモジュラー化の技術が発展した今、制約条件の緩い製品の設計は、たちまちコモディティ化してしまう。日本の現場の活路は、難度の高い設計問題に集団として挑戦し続け、「設計大国」になることである。歴史的経緯から「統合型ものづくり」の組織能力が偏在する日本の現場は、要求機能や制約条件の厳しい人工物、すなわち、複雑なインテグラル型の製品・工程にチャレンジし続けることに活路を見出す。そのためには、管理系・制御系を含む設計支援の諸アプローチを相互補完的に総合し、いわば総動員で現場の技術者を支える必要がある。日本の産官学は総がかりでそうした現場を支援していかねばならない。

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7. 半導体産業に関するイノベーションプロセスの調査・研究−電子顕微鏡・レジスト・パッケージング技術に関するケーススタディ分析

活動期間:2008年3月4日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

中馬 宏之ファカルティフェロー

プロジェクト概要

半導体デバイスや電子顕微鏡メーカーの科学者・技術者達との共同研究により、大発明&イノベーションが創出された時代背景やそれらが(電子顕微鏡王国とも言われる日本ではなく)ドイツやイギリスで、しかもベンチャーラボを中核として実現された諸要因について経済学・経営学の視点から分析する。

主要成果物

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8. ソフトウエア・イノベーションについての実証的研究

活動期間:〜2009年5月31日

プロジェクトリーダー

田中 辰雄ファカルティフェロー

サブリーダー

鈴木 潤ファカルティフェロー

プロジェクト概要

周知のように、ソフトウエア産業での日本の競争力は弱い。ソフトウエア産業全体では圧倒的に輸入超過であり、輸出は輸入の1割にも満たない。付加価値の高い先端技術産業のなかで、これだけ圧倒的に日本の競争力がない産業は珍しい。また、このことはIT技術を利用したビジネスプロセスの革新においても悪影響をもたらしている可能性もある。これはなぜであろうか。なぜこんなにも競争力の格差が生じたのか。競争力を高めるための政策的処方箋はありうるのか。本研究の目的は、この問いに答えるための仮説を実証的に検討することで、日本のソフトウエア・イノベーションの現状を把握し、ソフトウエア産業の競争力強化とソフトウエアを利用したビジネス革新の推進のための政策を探求することにある。

主要成果物

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9. 日本における無形資産の研究

活動期間:2010年1月19日〜2011年3月31日

プロジェクトリーダー

宮川 努ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本研究は、平成20−21年度にわたって実施されてきた日本の無形資産に関する研究を、マクロ・産業・企業にわたってさらに深化させることを目的としている。マクロ面では、これまで推計された日本の無形資産投資系列を、JIPデータベースを利用して延長推計すると同時に、詳細な産業別の系列の作成を目指す。企業面では過去2年にわたって行われたインタビュー調査のデータと「企業活動基本調査」、「情報処理実態調査」などの個票を利用して、より詳細な分析を行う。具体的には、(1)人的資源管理と企業パフォーマンス、(2)企業レベルの無形資産の決定要因、(3)組織改革の要因とその効果、(4)無形資産が設備投資行動、研究開発投資行動に与える影響、(5)無形資産等に対する資金調達の影響などである。また、現在申請中の科研費が認められれば、欧米やアジアの研究者と連携し、より広範な無形資産に関する調査を実施し、再度企業パフォーマンスとの関連を検証したい。

主要成果物

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10. サービス産業生産性向上に関する研究

活動期間:2010年1月19日〜2011年3月31日

プロジェクトリーダー

権 赫旭ファカルティフェロー

プロジェクト概要

サービス生産性研究会では、欧米に比べて低いと言われている我が国の商業とサービス業(特に、市場型サービス業)に焦点を当てて、(1)わが国のサービス業の生産性の動向を把握し、(2)サービス業の生産性を改善させるための必要な要素と手段を明らかにすることを目的とする。(1)としては、法人企業統計調査の個票データを用いて、企業レベルの生産性データベースを作成し、製造業、建設業などと比較することで、わが国のサービス業の生産性の特徴と問題点を把握する。(2)では、ICT投資、人的資本、新規参入や制度・政策変化に注目し、これらの変数が生産性にどのような影響をもたらしたのかを明らかにする。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

RIETIポリシーディスカッションペーパー

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11. New Technology‐based Firms(NTBFs)の簇業・成長・集積のためのEco-systemの構築

活動期間:2007年7月9日〜2009年12月31日

プロジェクトリーダー

西澤 昭夫ファカルティフェロー

プロジェクト概要

大学の研究成果によるプロダクトイノベーションを実現するため、その担い手となるNew Technology-Based Firms(NTBFs)を数多く創業(=簇業)させ、これらNTBFsの成長・集積により、大学を擁する地域からハイテク産業を創出させる政策が世界的潮流となっている。しかしわが国では、成功事例が未だ出現しないだけでなく、先駆的事例として注目された「札幌バレー」は発展へのモメンタムを失いつつあるとも評価される。わが国では、有力な研究大学を擁する地域においてさえ、NTBFsの簇業・成長・集積を通じたイノベーションの実現によるハイテク産業創出というモデルが機能しないのはなぜか、NTBFs簇業・成長・集積を阻むいかなる障害があるのか。この点を実証的かつ理論的に明らかにし、Eco-System構築に向けたベンチマークを作成することが本研究の目的となる。

主要成果物

RIETIディスカッションペーパー

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12. サービス差別化と生産性:独占的競争モデルに基づく生産性分析

活動期間:2008年6月23日〜

プロジェクトリーダー

加藤 篤行研究員

プロジェクト概要

本研究のテーマは「差別化されたサービスを生産する企業の生産性の分析」である。企業・事業所レベルのデータを用いた生産性研究において通常アウトプットとして使用されるデータは売上高(あるいはそれを用いて求められた付加価値)であり、その際のデフレーターは産業レベルのものである。これは、利用可能な統計資料から製品レベルの生産量や価格についてのデータを得ることがほぼ不可能であるためであり、サービス産業においては生産量の定義自体が困難なことも含めてこの制約はとりわけ厳しい。また、製品(サービス)の多様化が推計される生産性に与える影響も無視されている。加えて、推定される生産性の変動はマークアップや需要ショック(企業レベルでの消費者選好の変化など)も含んだものであり、厳密な意味での生産性の変動とは一致していない可能性がある。そこで本研究では以下の論点に関して研究を行う。

1)個別の生産物(サービス)価格・数量データが利用できないという現実の制約条件下において、製品(サービス)差別化を明示的に取り入れたモデルによる生産性推定
2)その結果(規模の経済性や生産性ダイナミクスなど)に関する既存研究との比較および企業特性・戦略、産業政策等の効果分析

主要成果物

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13. サービス産業のパフォーマンスに関するマイクロ計量分析

活動期間:2008年7月14日〜

プロジェクトリーダー

小西 葉子研究員

プロジェクト概要

サービス産業分析の第一歩として、比較的単純な生産構造を持つ美容産業を分析対象とする。わが国の美容産業は、そのほとんどが個人経営で、全国には20万件以上の美容院がある。組合と法律によって、1990年代後半までは営業日、時間、技術料金などが一定に保たれていた。しかし法律の廃止、組合の縮小化、カリスマ美容師ブームなどが相まって、近年は価格の過当競争、店やサービスの差別化が進んでいる。研究において、サービス産業の生産性とは何かを知るために、製造業の生産関数に相当するものを定義する必要があるが、それは需要の影響を受け、さらに、「店舗面積、人員、営業時間」に制限され、供給量に上限があるようなモデルを考えなければならないであろう。本プロジェクトでは、6店舗の美容院の非常に詳細な財務・顧客・労務データを収集し、美容産業の供給構造・需要構造を調べる。

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14. 法人課税制度の政策評価

活動期間:2009年11月10日〜2011年3月31日

プロジェクトリーダー

楡井 誠ファカルティフェロー

プロジェクト概要

法人課税のありかたを見直す機運が高まっている。日本経済の成長と雇用の源である法人活動に対して、政府部門はどれだけの負担を応分として求め、どのような活動を補助促進していくべきなのか、評価のシステマティックな基準を持つことが必要である。このプロジェクトでは、数値的動学一般均衡モデルと、そのパラメータの直接的な推計を可能にするミクロ実証手法に基づいて、経済厚生評価のための汎用性の高い枠組みの構築を行う。それによって、法人課税に係る租税特別措置の見直しや抜本改革に向けた議論に資することを目的とする。

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15. 多重ネットワーク分析指標を用いた新たな経済指標の検討

活動期間:2008年4月1日〜2010年3月31日

プロジェクトリーダー

玉田 俊平太ファカルティフェロー

プロジェクト概要

本研究は、企業間の多種多様な相互作用によって生じるイノベーションを解明するため、企業取引および共同発明のデータを、多重ネットワーク解析や特許価値評価手法を用いて解析し、経済政策の立案に資する新たな指標とすることを目的とする。本研究では以下のアプローチをとる。

1)日本企業約100万社が特許共同出願、株所有、取引、役員兼任などの関係でつながったネットワークを解析する。 2)各種ネットワーク指標を計算し、ネットワークが持つトポロジーの性質を明らかにする。 3)2)で計算されたネットワーク指標と経済的統計量との間にどのような関係があり、経済政策の立案にどのように資するのか検討する。 4)特定の企業の集合(産業など)間を新たなノードとして定義し、そのネットワークの分析を行う。これにより現在行われているような産業別の施策に意味があるのか、新たな企業集合をネットワークの観点から定義しなおすべきか、などを明らかにする。

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16. 知的財産戦略のレビューと今後の課題

活動期間:2010年3月9日〜2010年7月31日

プロジェクトリーダー

久貝 卓上席研究員

プロジェクト概要

1990年代の経済の長期停滞、わが国産業の国際競争力の低下への危機感から、2000年以降政府は官邸主導で全省庁をあげて知的財産戦略を策定推進した。知的財産高等裁判所の設立、特許の審査迅速化計画、大学知的財産本部の設置など産学連携政策、模倣品海賊版対策、特許流通対策、植物新品種や地域ブランドの保護立法、コンテンツ産業の振興のための著作権法の数次にわたる改正など知的財産の創造、保護および活用を促進する政策が集中的に実施された。本研究では、こうした知財戦略の主要施策の進捗状況について実施後4〜5年を経た時点でレビューを行う。また、一段の経済のグローバル化、技術革新の進展、インターネットを活用したビジネスの世界的な急拡大など、その後の環境変化によって生じつつある知的財産に関する新たな政策課題についても調査を行うこととする。

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