やさしい経済学―非営利部門と統計整備

第7回 政府との関係

山内 直人
ファカルティフェロー

政府と非営利団体の関係は複雑であり、その境界線も明確に引くのは難しい。政府の範囲を明確に規定できなければ、政府ではない民間非営利団体の範囲を確定することもできない。

政府と民間の間には、中間的な性格を持つ多様な団体が活動している。特殊法人、いわゆる三セク企業、一部の公益法人のように事実上政府の一部を構成するような非営利の外郭団体は従来もあった。さらに最近は政府部門の構造改革が進んで独立行政法人なども登場し、政府と民間の中間的な性格の団体が増える傾向にあるようだ。

たとえば従来の国立大学は2004年度に法人化し、独立行政法人の一種である国立大学法人が設置・運営することとなった。ただし、これを機に国立大学が政府部門から民間の非営利部門に移ったわけではない。法人化によって形式上、政府から独立した組織になったものの、人的にも財政的にも政府に大きく依存していることに変わりないからである。

政府からの独立性を判定する明確なリトマス試験紙は存在しないが、ある団体を解散する意思決定を自分自身でできるかどうかが1つの判定基準になるだろう。国立大学法人は、その意味でも依然として政府の一部であると考えられる。

最近、官から民への流れのなかで、パブリック・プライベート・パートナーシップがけん伝され、国・地方自治体と特定非営利活動法人(NPO法人)など非営利団体の間のさまざまな協働事業が行われるようになっている。

具体的な形態としては、たとえば、NPO法人が行う事業に対する補助や助成がある。金銭的な補助だけでなく、行政施設の無償貸与や、行政職員の派遣なども含まれる。また、自治体の業務の一部を非営利団体に委託するケースも増えている。

03年の改正地方自治法で設けられた指定管理者制度の下では、美術館、音楽ホール、体育館など行政が設立した公共施設について、非営利団体や営利企業が指定管理者となり、行政の行うべき施設管理の実質的な代行が可能となった。

こうした多様な形態の協働の広がりによって、政府と非営利部門の関係もより複雑になっていると考えられる。しかし、両者の関係については非営利部門の新しい統計であるサテライト勘定でも部分的な情報提供にとどまっており、今後の統計整備の大きな課題になっている。

2007年11月15日 日本経済新聞「やさしい経済学―非営利部門と統計整備」に掲載

2007年12月6日掲載

この著者の記事