やさしい経済学―非営利部門と統計整備

第2回 経済規模と成長

山内 直人
ファカルティフェロー

非営利部門の新しい統計であるサテライト勘定(前回参照)では(1)組織(2)非営利(3)非政府(4)自己統治(5)自発性――の5つの要素をもつ主体を営利団体と定義している。その非営利団体が2004年度に生み出した付加価値(産出額マイナス中間投入)は20.7兆円であった。これは日本経済全体の付加価値の合計である国内総生産(GDP)の4.2%に相当する。

付加価値の規模では輸送用機械製造業、通信業などを上回る「巨大産業」といえる。またGDP比率を国際比較すると、5%を超すカナダや米国には及ばないものの、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなどを上回っている。

ただし、非営利部門の法人種別にみると、医療法人が45%、公益法人(財団法人・社団法人)が18%、学校法人と社会福祉法人が各16%を占める一方、特定非営利活動法人(NPO法人)は0.5%にすぎない。新聞などでは非営利団体といえばNPO法人を意味するほど目立っているが、付加価値でみると、非常に小さな存在であることが分かる。

非営利サテライト勘定では、非営利部門全体を12の分野に大別する国際非営利産業分類(ICNPO)が提案されている。これに沿って日本の非営利部門を分けると、保健医療49%、教育研究19%、社会サービス16%など大きなシェアを占めている。

この部門の成長力の高さも目を引く。失われた10年といわれた1990年代以降、日本経済の成長率は大きく鈍化したが、非営利部門の成長速度はそれをはるかに上回り、名目の年平均で90年代は6%、2000年以降も4%台を記録している(図)。その結果、非営利部門の付加価値のGDP比率は、90年度の2.2%から04年度には先述のように4%を超えた。

日本の非営利部門の成長率と対GDPシェア

このような非営利部門の成長率がGDP成長率より高いという傾向は多くの国でみられる。サテライト勘定で把握した統計数値が、非営利部門のグローバルな規模での台頭を鮮やかに裏付ける形となっている。

2007年11月7日 日本経済新聞「やさしい経済学―非営利部門と統計整備」に掲載

2007年12月6日掲載

この著者の記事