やさしい経済学―女性の活躍と経済効果

第1回 多様な人材活用で競争力強化

児玉 直美 コンサルティングフェロー

政府の男女共同参画会議は2012年、女性の就業促進により、就業希望の女性342万人が就労し、雇用者報酬総額が7兆円程度増える可能性があると試算しています。

政府は従来、女性活用を福祉政策や人権、企業の社会的責任(CSR)の観点から捉えてきました。これに対し、安倍政権は経済を活性化する経済政策、企業の活力を高める経営戦略の一環と位置付けています。女性活用を通じて、多様な価値観を持つ幅広い人材を確保し、その能力を発揮できる環境を整えることが、企業経営としても重要との視点を取り入れたのです。

経済産業省と東京証券取引所は毎年、「なでしこ銘柄」を選定しています。これは女性活躍推進に優れた上場企業を投資家に紹介することで投資を促し、企業の取り組みを後押しすることを狙いとしています。

女性活用の効用として以下の3つが挙げられます。(1)労働力人口が減る中で労働力を確保できる。(2)「日本人、男性、転勤や残業要請に対応可能」という小さな集団ではなく、より大きな集団から人材を選ぶ方が適材適所を実現できる。(3)多様な職業経験や価値観を持った人材を活用することで競争力を強化できる。

一方、デメリットも考えられます。同じような価値観を持つ人が長時間働き、同期入社は同じように昇進する組織にとっては、価値観や時間制約の異なる人が加わることで、新たな調整コストやあつれきが発生するかもしれません。女性用トイレや更衣室を準備したり、短時間勤務や在宅勤務制度など働き方を多様化するための人事労務管理や評価制度を構築したりする必要があるかもしれません。

女性活躍の経済効果を議論する方法は大きく2つあります。マクロ経済の国内総生産(GDP)と女性の労働参加率の関係を見る方法と、ミクロ的に企業の利益率や生産性と女性活用の状況を調べる方法です。この連載では4回目にマクロ的に捉えた研究・調査を、5回目に企業データを使った研究を紹介します。

2016年8月22日 日本経済新聞「やさしい経済学―女性の活躍と経済効果」に掲載

2016年9月7日掲載

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