やさしい経済学―日本企業のオープンイノベーション

第6回 海外展開、現地との連携が重要

元橋 一之 ファカルティフェロー

企業活動の国際化に伴いオープンイノベーションも国境を越えて海外に広がっています。海外での研究開発の目的は、(1)海外の先端技術の探索と、(2)海外市場へ向けた製品のローカル化に大別できます。これらの活動における主な技術や知識の流れは、前者は海外(在外研究所)→国内(本社)、後者は国内→海外と逆になります。いずれのケースでもオープンイノベーションは重要です。

まず、先端技術の探索ですが、国内と比べて進出先に技術的優位性がある場合に成り立ちます。典型的なのが、米国西海岸のシリコンバレーに研究所を設置するケースです。その場合、スタンフォード大学などの現地の有力大学と産学連携を行うための現地拠点としての機能が期待されます。

シリコンバレーはハイテクベンチャー企業の集積地でもあります。有望な技術を持つベンチャー企業との連携も重要な選択肢です。ベンチャー企業に出資することで研究開発の方向性に影響を与えたり、技術の専有性を高めることが可能になります。そのために必要となるのが、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)です。シリコンバレーにはIT企業のほか、自動車や材料関係など、多くの日本企業がCVCを構えています。また、現地に進出している世界のハイテク企業とのネットワーク構築も重要な役割です。

次に現地市場に向けたローカル化ですが、日本企業にとって重要な市場である中国の研究開発拠点を例にとってみましょう。生活様式や所得水準の違いがあるため、現地市場に受け入れられやすい中国向け製品の設計・開発が必要になります。現地の環境規制や安全規制への対応、現地サプライヤーの活用など様々な現地対応も求められます。

その際に重要なのは迅速かつ正確に現地の情報を入手することです。そのためには現地企業とパートナーシップを組むことが有効です。また規制環境に対する対応は現地の大学や研究所と組むことが有効なケースがあります。移動体通信、電力送配電システム、省エネ基準など技術規格の策定や標準化は現地の大学などが参画して行われることが多いからです。

2016年7月18日 日本経済新聞「やさしい経済学―日本企業のオープンイノベーション」に掲載

2016年8月3日掲載

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