やさしい経済学―日本企業のオープンイノベーション

第1回 モノからソリューションへ

元橋 一之 ファカルティフェロー

国際競争の激化に対応するにはイノベーションの効率やスピードを上げることが重要です。将来の不確実性が大きくなる中で、研究開発の幅を広げることも必要になっています。この「スピード」と「幅」の両立を自前で達成することは困難です。そこで、多くの日本企業にとってオープンイノベーションが重要な経営課題となっているのです。

長期的な視点として、イノベーションの形態が変化していることにも注意が必要です。日本企業は従来、品質の高い製品を効率的に生産することで競争力を保ってきました。しかし、近年は韓国や中国の企業の追い上げで経営が悪化する企業が出ています。特に半導体や家電製品などの分野で顕著です。製品特性のみで競争優位を築くことが難しくなっているからです。

必要なのは、製品の性能向上を追求する「モノ」モデルから、顧客価値を最大化する「ソリューション」モデルヘの移行です。複合的な製品を組み合わせ、顧客ニーズの変化に対して最適なサービスを提供することで、模倣されにくい持続的な競争優位を作り出せます。ここで大事なのは、パーツをすべて自前でそろえるのではなく、最適なものを外から探してくることです。ビッグデータや人工知能(AI)を使って顧客データを収集・解析し、最適なソリューションを提供することも必要になるでしょう。その際のキーワードはやはりオープンイノベーションです。

外部連携は1対1の協力だけでなく、複合的サービスのために複数の構成メンバーを集める活動も重要となります。モノがインターネットにつながるIoTで米ゼネラル・エレクトリック(GE)がコンソーシアム(企業連合)を作っていますが、これは個々のソリューションの共通部分を集めてプラットフォーム化する典型例といえます。

日本企業の自前主義は「モノ」モデルではうまくいきました。しかし「ソリューション」モデルでは、オープンイノベーションを経営の中心に据えて取り組む必要があります。

2016年7月8日 日本経済新聞「やさしい経済学―日本企業のオープンイノベーション」に掲載

2016年8月3日掲載

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