経済を見る眼 消費増税を機に検討すべきこと

佐藤 主光
ファカルティフェロー

2019年10月に消費税率の10%への引き上げが予定されている。あまり意識されていないかもしれないが、消費税の一部は地方消費税(現行税率は8%のうち1.7%ポイント)という都道府県税であり、19年に引き上げられる2%のうち0.5%ポイント分はこの地方消費税の増税となる。

増税に合わせて地方税収の偏在(人口一人当たり税収の地域間格差)が問題視されてきた。増税で増えた税収は東京など大都市に集中し、地域間の税収格差が一層拡大するのではないかという懸念だ。

偏在性が顕著なのは地方消費税だけではない。法人住民税と法人事業税という、自治体が課している地方法人2税も偏在が激しい。法人2税の税収は約4分の1が東京都に集中。地方税全体で見れば人口一人当たり税収の最大と最小の格差は2.4倍ほどだが、法人2税では6.1倍に上がる(16年度決算)。全国知事会は地方法人課税の意義を踏まえつつ、「地方法人課税について、新たな偏在是正措置を講じることにより、偏在性が小さい地方税体系を構築すべき」と提言している。

国はこれまで、法人2税の一部を国税化し、交付税・譲与税の形で地方に再分配してきた。これにより、東京都から約4600億円の税収が地方へ移された計算になる。このうち法人事業税の国税化分については19年の消費増税に合わせて廃止(都道府県税に戻す)ことになっている。知事会の言う「新たな偏在是正措置」とは、増税後も法人事業税の国税化分を存続させることなどを指す。

一見、大都市対地方の政治対立のようだ。しかし、より根本的な問題は、自治体の法人2税への依存度の高さにあるのではないか。法人2税は地方税収の2割弱、都道府県に限っていえば税収の4分の1を占めている。このことは偏在性を生むだけではなく、自治体の税収を不安定にしてきた。

たとえば、東京都はリーマンショックの後、税収が約1兆円減少した。「偏在性が小さく安定的な地方税体系」の観点からして、経済環境によって大きく増減する法人2税は望ましくない。加えて、法人2税はわが国の法人実効税率を高くしてきた。法人実効税率とは、国と地方の法人税を合わせた税率である。

現在、日本の実効税率は30%弱だが、国の法人税率は23%ほどだから、地方法人2税が6%余り高くしている格好になる。この水準は米国の28%、中国の25%、英国の19%などよりも高い。グローバル経済において、高い法人税率は国内に立地する企業の国際競争力を損ないかねない。

むろん、法人税率を下げても企業は内部留保をため込むだけとの批判もある。とはいえベンチャー企業を育成したり、企業が設備投資や雇用を拡大する環境を整備していくことも必須の課題だ。実際、諸外国では法人課税を軽減して、消費税や環境税を拡充することが税制改革の潮流になっている。

このように税源の偏在性は地域間の不公平の原因という以上に、高い法人2税への地方自治体の依存の結果といえる。この問題の出口は、税収構成を含む抜本的な税制改革ではないだろうか。

『週刊東洋経済』2018年9月8日号に掲載

2018年9月18日掲載

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