世界を席巻するモノづくり日本企業
NT型企業研究で得られた知見

細谷 祐二
コンサルティングフェロー

ヒアリングした優れたNT型企業31社の企業行動面の特徴は、アンケート調査のグローバル・ニッチトップ(GNT)企業の定義に該当する企業(112社、全体の6分の1)に見事にあてはまる。製品開発では、最初のNT製品より2番目の方がユーザーニーズに基づく傾向が顕著だ。また、日頃の取引を通じる口コミの評判から相談が持ち込まれたとする比率が高い。

広域連携当たり前

開発に当たりまず頼りにするのは大小のサプライヤーや大手ユーザーで、大学への期待は逆に低さが際立つ。しかし、日頃つきあいのある研究室は多く、しばしば研究者の紹介でユーザーからニーズが舞い込む。連携先の企業や大学は広く国内に分布する。GNT企業の代表格で電子ビーム描画装置のエリオニクス(東京都八王子)の本目精吾会長兼最高経営責任者(CEO)は、「日本列島は1つの集積のようなもの。広域連携は当たり前」と狭い地域だけで小さくまとまって行う連携支援事業に懐疑的だ。

海外市場で実績

ヒアリング調査では、国内ユーザーが保守的で買い手がつかず、見本市出展を通じ海外で先に売れたとする企業が少なくない。GNT企業の場合、最初のNT製品の販売が軌道に乗るきっかけが海外市場の販売実績とする企業が22.7%と平均13.1%を大きく上回る。最初の輸出時期は1982年と平均よりも6年も早く、海外売上高比率も突出して高い。しかし、海外販売拠点や生産拠点設置にむしろ慎重でマイペースという傾向もみられる。日本で作り輸出するのが基本で、高い非価格競争力に支えられている。

企業秘密を駆使して模倣を防ぐという意識が高く、考えられる方法はいずれも採用し細心の注意を払っている。

補助金の採択件数の多さに政策活用の熱心さが表れている。同時に採択が顧客の評価や問い合わせの増加につながったとする比率が際だって高く、施策効果の高さが伺われる。施策ニーズも具体的で先鋭化している。

揃い踏み企業

今回のアンケート調査では、3つの中小企業施策について活用や効果を尋ねている。これら全てを使っている企業を大相撲の三役になぞらえて揃い踏み企業と命名した。NT型企業の約3分の1を占め、規模も企業パフォーマンスの指標でも平均を下回る。ただ、外部資源の活用に貪欲で、補助金の採択件数が4回以上の比率は40%を超えGNT企業に匹敵する。大学を技術上の頼れるパートナーとする度合いは突出して高い。とはいえ企業間連携にも極めて熱心である。海外売上高比率が10%未満の割合が75.5%と平均を上回り、基本的にドメスティックである。しかし、一部海外展開している企業は、販売拠点の設置などで慎重なGNT企業に対し、逆に積極性が認められる。

表:ニッチトップ(NT)型企業イメージ
表:ニッチトップ(NT)型企業イメージ

2013年6月13日 日刊工業新聞に掲載

2013年6月28日掲載

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