世界を席巻するモノづくり日本企業
成功理由をきちんと分析

細谷 祐二
コンサルティングフェロー

独自の製品やオンリーワンの加工サービスを提供する独立性の高い中小企業が全国に広く存在することはよく知られている。地域の経済社会に貢献し存在感があり、自治体や商工会議所が名鑑を作り、PRしてきた。研究者による事例紹介の文献も多く、テレビ番組でもよく取り上げられる。

成功の秘訣は?

国も1990年代末から独自製品保有を目指す第二創業を支援し、さらにグローバル・ニッチトップ(GNT)企業を増やす取り組みを強化してきた。01年から全国の経済産業局が個別にきめ細かい支援を行う「産業クラスター計画」を展開した。中小企業庁も「元気なモノ作り中小企業300社」という顕彰事業を06年から4年続けた。

しかし、ユニークな企業や製品を伝える情報はあふれていても、次々に製品開発に成功し、高い競争力を維持するGNT戦略の実態は十分解明されていない。一方、ここ10年ほど支援が強化される中、補助金が売れる製品開発に結びつかない、さまざまなマッチングイベントの参加が低調で成約につながらないなどの支援機関側の支援疲れ、中小企業側の支援され疲れが見え始めている。これは発生メカニズムの病理的研究が十分でない臨床現場に例えられる。

支援者も中小企業も成功の企業のイメージを共有できず、成功理由も十分解明されないため、他の中小企業の役立つ具体的処方箋が示せない。GNT企業には業種、社歴、規模が異なっても製品開発パターンは驚くほど共通点が多い。これをしっかり分析し、成功の秘訣を伝授することが求められている。

スーパー新連携

大企業製造事業所の海外移転が進み空洞化懸念が高まり、他方で需要不足、後継者難で中小企業の廃業が進んでいる。このままではモノづくり技術基盤の継承・維持もままならない。最近、GNT企業がプレゼンスの低下する大企業の役割を代替し、中小企業を束ね新しい価値を創造する「スーパー新連携」と呼ぶべき動きが出てきている。市場規模が小さいなどの理由で、モノづくりに不可欠だが大企業が生産を中止した製品や研究開発の成果が出つつあるのに製品化を断念したものを事業化する動きが1つ。

図:スーパー新連携の動き

ネットワーク

自社が技術の限界に挑戦する上で必要な加工機械を既存メーカーに依頼できず、国の補助金を活用して周りの企業と開発するパターンもある。開発成果はスペックを落とせば他社にも売れ、加工機械メーカーの道も見えてくる。環境変化に対応したGNT企業のこうした動きも、連携先企業・大学とのネットワークや政策資源をうまく活用する能力があってはじめて可能である。この点をしっかり分析し、それを広く世の中に知らせていくことも重要な課題だ。

2013年6月12日 日刊工業新聞に掲載

2013年6月28日掲載

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