熊本地震を教訓に直下型への備えを急げ
「東名と東海道新幹線が危ない」と埼玉大・角田教授が警告

藤 和彦 上席研究員

4月14日午後21時26分、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード6.5の地震が発生し、その28時間後の4月16日午前1時25分に同じく熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生した。

気象庁はこの地震を「平成28年熊本地震」と命名した。気象庁が地震に命名するのは5年前のいわゆる東日本大震災以来である。

マグニチュード3.5以上の余震の数は、2004年の新潟県中越地震の際の記録を上回り、1995年(いわゆる阪神淡路大震災)以降の内陸や沿岸で発生した地震で最多となった。

熊本県で発生した今回の地震は「活断層」で起きたとされている。最近100万年ぐらいの間に変位したことが認められる断層のことを活断層と呼ぶが、日本には2000以上の活断層があり、全国どこでも大きな地震が起こる恐れがあると言われている。

地球の中を移動する熱エネルギー

筆者は『地震の癖──いつ、どこで起こって、どこを通るのか?』(講談社)等の著者である角田史雄(つのだ・ふみお)埼玉大学名誉教授に4月17日午後に電話したところ、「活断層を動かしたものが何かを考える必要がある」とのコメントをいただいた。

角田氏は「2014年10月の御嶽山噴火後に『信濃川地震帯』でマグニチュード6〜7クラスの地震が今後数カ月以内に発生する」と予測したことを以前コラムで紹介した(2014年11月22日に「信濃川地震帯」内の長野県北部の白馬村でマグニチュード6.7の地震が発生した)。

角田氏は、プレートテクトニクス理論に代わる「熱移送説」を提唱していることで知られる。

熱移送説の中で主役を務めるのは熱エネルギーの伝達である。その熱エネルギーは、地球の地核(特に外核)からスーパープルーム(高温の熱の通り道)を通って地球表層に運ばれ、その先々で火山・地震活動を起こすというものである。

火山の場合、熱エネルギーが伝わると熱のたまり場が高温化し、そこにある岩石が溶けてマグマと火山ガスが生まれると、そのガス圧で噴火が起きる(マグマとは約1000度に溶けた地下の岩石のことであり、この高温溶融物が地表へ噴出したのが溶岩である)。

地震の場合は、硬いが脆い岩層の地下岩盤が熱エネルギーによる膨張で割れることにより発生する。つまり熱エネルギーが通ることにより断層が活断層になるのである。

角田氏によると、南太平洋(ニュージーランドからソロモン諸島にかけての海域)と東アフリカの2カ所から、地震や火山の噴火を引き起こす大本の熱エネルギーが地球表層に出てくるという。日本の地震や火山噴火に関係あるのは南太平洋の方である。

南太平洋から出てきた熱エネルギーは、西側に移動しインドネシアに到達すると3つのルートに分かれて北上する。3つのルートとは、(1)スマトラ島から中国につながるルート(雲南省では地震が相次いでおり、2008年5月に発生した四川大地震もこれに該当する)、(2)マリアナ諸島から日本につながるルート、(3)フィリピンから台湾を経由して日本につながるルート(今回の地震に関連するルート)、である。

角田氏はさらに「噴火と地震の発生場所がほぼ変わらない」と指摘する。地球の内部構造は環太平洋火山・地震帯が約10億年も不変であることが示すとおり、高温化する場所や岩盤が割れやすい箇所はほとんど変わらない。そのため、熱エネルギーが移送されることによって生じる火山の噴火地点や地震が起こる場所は不動だという。

角田氏は「熱エネルギーは1年に約100キロメートルの速さで移動する」ので、インドネシアやフィリピンで地震や火山の噴火が起きた場合、その何年後に日本で地震や火山の噴火が起きるかがある程度予測できるとしている。

こうした一連の火山・地震過程を角田氏は「VE過程」と名付けており、このような熱エネルギー移送のルートや周期、日本各地の地域特性から「地震や火山の癖」を読み解こうとしている。

熱エネルギーはまだ熊本、大分の地中に滞留している

角田氏は今回の地震について、次のように解説する。

「今回の地震の性質は、2004年10月に発生した中越地震(マグニチュード6.8)と同様の火山性地震である。中越地震の場合、2001年に浅間山と新潟焼山で火山活動が活発になり、その熱エネルギーが北上して中越地域で地震を引き起こした。

今回の地震でも2013年8月に鹿児島県桜島の昭和火口で大規模な噴火が発生し、2014年に入ると霧島火山帯の新燃岳で火山性地震が発生していた。霧島火山帯から宮崎県沖合の日向灘は地震多発地帯であることに加え、今回の地震の規模が中越地震よりも大きい(移動している熱エネルギーが大きい)と推定されるため地震活動が沈静化するにはしばらく時間がかかりそうだ。

中越地震の約3年後の2007年7月に中越沖地震(マグニチュード6.8)が発生したように、放出されず滞留している熱エネルギーにより、数年後に熊本・大分県で大規模な地震が再び発生する可能性がある。

今回の地震を引き起こした熱エネルギーは、(1)中国地方の日本海沿岸地域、(2)瀬戸内海地域、(3)四国の太平洋沿岸地域(南海トラフ)の3つのルートに枝分かれして東方に移動するため、今後、これらの地域で地震が発生する可能性が高い。南海トラフでは熱エネルギーの移動が遅いため熱が溜りやすく、それだけ巨大地震が発生しやすい」

伊豆・相模地域で大規模な直下型地震が発生する

角田氏が「2017年から2018年にかけて、伊豆・相模地域でかなり大規模な直下型地震が発生する」とかねてから警告しているのは気になるところだ。

角田氏は、(2)のルートの線上にある小笠原諸島の西之島(東京の南約1000キロメートルに位置する)の海底火山が2013年11月に噴火し、 2014年10月に八丈島(東京の南約287キロメートルに位置する)東方沖でマグニチュード5.9の地震が発生したため、この熱エネルギーが2017年から2018年にかけて伊豆・相模地域に到達することになると予測している。

角田氏によると「首都圏でマグニチュード6以上の大きな地震が発生する前に、マグニチュード3〜5クラスの地震が次々と起きる」というが、4月14日午後8時58分に東京23区を震源とする地震(マグニチュード3.6)が発生している。

また、「マリアナから伊豆諸島へのVE過程の活動期の間隔は約40年である」という点も留意すべきだろう。約40年前の1978年1月14日に伊豆大島近海地震(マグニチュード7.0、震源の深さは0キロメートル、死者・行方不明者26名)が発生している。さらにその約40年前の1930年11月26日には、北伊豆地震(マグニチュードは7.3、震源の深さは不明、死者・行方不明者272名)が発生している。

「国の大動脈」は守れるか

今回の地震で、九州を南北に貫く2つの大動脈が寸断された。

JR九州は4月19日、今回の地震で九州新幹線の設備上の損傷が熊本県を中心に約100カ所に上ったことから、「修復には相当の時間がかかり、運行再開の時期は見通せない」ことを明らかにした。

また、福岡と鹿児島を結ぶ九州自動車道も盛土法面が崩落するなどの被害が生じて通行止めとなり、復旧の見通しは立っていない。倒壊した家屋の状態は阪神淡路の場合と同様である。

今回の地震で改めて明らかになったように、日本の地震防災は横揺れには強いものの、縦揺れの対策が遅れている。したがって伊豆地域で今回のような地震が発生すれば、阪神・淡路大震災の二の舞となることが予想される。

阪神高速道路は、砂などが埋まった化石谷の上に建てられたため、直下型地震特有の「ドスン揺れ」でもろくも倒壊してしまった。山陽新幹線も高架橋が桁ごと落ちたり、トンネルの内壁が剥落するなどの深刻の被害が出た。首都圏南部も阪神・淡路地域と似た地盤でできており、地震の震源が浅いという共通点がある。

伊豆・相模地域を通る東名高速道路や東海道新幹線の備えは大丈夫だろうか。2020年の東京オリンピックを前に、東海道新幹線と東名高速道路という「国の大動脈」が大打撃を受けることは絶対に避けなければならない。

東日本大震災以降、巨大な海溝型地震(津波)対策ばかりがクローズアップされるきらいがあったが、今回の地震により改めて直下型地震の恐ろしさを痛感した。

地震のメカニズムについてはさまざまな理論や研究があるが、いまだに正確な予測は実現できていないのが現状だ。だが、どれだけ用心してもしすぎることはない。角田氏のような理論があることも踏まえ、国を挙げて一刻も早く直下型地震に関する抜本的対策を講ずるべきである。

2016年4月19日 JBpressに掲載

2016年4月26日掲載