人工知能の経済学-暮らし・働き方・社会はどう変わるのか-

開催日 2018年11月28日
スピーカー 馬奈木 俊介 (RIETIファカルティフェロー / 九州大学大学院工学研究院都市システム工学講座主幹教授・都市研究センター長)
モデレータ 福永 開 (RIETIコンサルティングフェロー / 経済産業省経済産業政策局産業構造課課長補佐)
開催案内/講演概要

私たち人類は新たな道具や技術を開発し、自分たちの生活圏を拡大させ、豊かな生活を実現してきた。そして新たなイノベーションと共に、食糧生産、衛生環境、交通など、私たちの社会・経済活動も大きく変容している。しかし、日本は人工知能(AI)開発において米国のみならず、インド・中国といった新興国にもおくれを取っている。科学技術に対するこれまでの不十分な対応の積み重ねが根本的な原因だ。

今回のBBLセミナーでは馬奈木俊介ファカルティフェローが講演。実際にAIがどのように普及しているか、また日本でAI開発のおくれを引き起こした具体的な要因は何かを考察するとともに、今後、日本はこれまでの科学技術に対する在り方をどのように問い直し、AIという革新的な技術をどのように生かしていくべきなのか、その取り組みの手段と成功する条件を解説した。

議事録

日本のAI化がおくれている原因

馬奈木俊介写真一般的に大学進学での投資はどんな株式など金融投資よりリターンが高く、そして大学や専門学校で教育を受ければ受けるほど、将来生み出す生産が増えることが分かっています。

そういった教育への投資が価値がある一方、技術への投資が新しい分野ではうまく行ってない場合もあります。それがAIです。日本企業の社長は文系出身が多く、理系でも学部卒が多いので、技術への理解が不足しています。一方、米国やヨーロッパ、特にドイツでは博士号を持つリーダーが多く、新技術や組織改編への対応が早いのです。ここに日本のAI化がおくれた理由があるといえるでしょう。

AIが大幅に雇用を奪うわけではない

AIが雇用を奪うというテーマについて、オックスフォード大学の研究グループが英国と米国、さらに日本の研究を実施して話題になりました。その結論は雇用の減る方向のみの研究でした。一般的にはITを含めた議論になりますが、雇用は製造業などで減少する分、他の産業が増えて補われるので、雇用全体が減っていくという傾向にはなっていません。

2018年ノーベル経済学賞を受賞したウィリアム・ノードハウスも、以前、AIがこのまま進化しても雇用はそれほど減少しないという結果を、簡単な計算で出しています。ただ細かく見れば、雇用が減る分野は明確にあります。

過去の雇用統計を見ると、雇用減少は新規募集をしないことで対応するので、今まで就いていた職を奪われるようなことは、まずありません。職場の中での配置転換で対応できる場合がほとんどです。

そういう意味では、特定の分野や企業で新規採用されないことが今後大きな問題になるかもしれません。日本の大学卒業者の就職率は、今のところ問題ないのですが、将来余裕がなくなった時に問題が出ることが考えられます。

産業全体の雇用状況を見ると、収入レベルでみた場合、中間層の収入の減少と、低収入レベル&高収入レベルの両方での収入の増加が見られます。収入増加している分野での今後の人材育成を考えると、何らかのプロを目指す教育は非常に大事だと分かっています。それが今、流行ろうとしているAI教育につながるのかもしれません。

AIの分野ではAI×言語学が注目される

AIでArtificial intelligenceというときの意味合いは、シンプルには機械学習で、これは統計学の活用のようなものです。統計学が分かっている人であれば何も問題なくできるものと、日本語などの言葉を取り込む自然言語、地図や衛星画像、医療データを含めた、画像を読み込む深層学習で分かれます。

既存のデータを読み込み、機械学習で予測する手法は、経済統計や普通の技術情報を含め、通常の計量経済学よりも予測の精度が上がります。しかし、何故そうなるかという理由は、普通の計量経済学等に比べると、因果性の面からは弱いため理由が分かりません。なおここでAIの専門家は因果は分かると言いますが、経済政策でいう因果とは違うため実際は予測時点では因果はあまり分かりません。

もう1つは、言葉は日本語なら日本語、英語なら英語と、国の特徴を踏まえたやり方になるので、その国のエキスパートが必要になります。今後も伸びるのはAI×言語学の分野です。機械学習は理論的には先はあまりなく、その次に深層学習は先がある程度は見えています。応用面での重要性はどれもまだかなりあります。

理想を追求しすぎて日本はAIブームに乗るのに失敗

日本が初期から今回のAIブームに乗るのに失敗した理由は、研究者と経営層が人型ロボットのような高すぎる技術開発レベルを目指してしまったことです。そして、その他の大半の人が「どうせそこまで到達しないだろう」と判断し、研究開発投資が増えず、活用も増えませんでした。

一方、米国などでは企業によるAI絡みの投資が活発に行われています。この理由について調査したところ、優先度が高かったのは「より良い予測、意思決定」と「データのより良い理解」でした。つまり、そのきっかけはデータを活用しようという理由でした。より良い予測をした方が今後の収益予想ができ、意思決定はそれを生かせば良いと考えたのです。日本のように大きな改革を期待する一発逆転ではなかったのです。

サービス向上や製品設計も同じで、米国のホテル会社のマリオットなどは顧客満足度と顧客が実際に何月何日にいくらで泊まってくれたかというデータを分析し続けることで、より高い価格でホテルの稼働率を増やすことに成功しています。

投資理由について、次に優先度が高かったのは、「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」、続いて「マーケティング向上」と「新規顧客獲得」です。「より良い予測、意思決定」と「データのより良い理解」は人々の生活の質を上げます。「ルーティーン自動化」と「労働費用低下」も、労働時間を減らすことでいずれ将来、週休3日制度が導入されるのであれば、人々の生活にとって良いことでしょう。きちんと働く環境にあって十分満足できている状況であれば、AIは生活をより良くします。

AIに取り組まない理由として一番多く挙がるのが、今更やってもGoogle、Apple、Amazon、Facebookにはかなわないということです。独自のデータを採るのが大変だ、独自でないといけない、という勘違いがあります。

もうひとつ、企業内のData analysists(データ分析者)が思ったほど使えなかったという事例ですが、それは期待が高すぎたためです。ビックデータだったらいいことができるけど、たいしてビックでなければたいしたことができないと安直に考えて、やらないというのがよくある勘違いです。その大元は長期で分析者を経営の意思決定で活用しようという意思の無さです。一度使って上手く以下にので辞めています。継続的にうまく行ける会社は今後もうまく行くでしょう。

雇用代替 vs 仕事(タスク)代替

雇用代替予測がよくニュースになりました。予測の数値はばらばら(日本の場合、5%から70%)で、あまり結果に意味がありません。雇用代替は失業の危機につながるのでショッキングですが、新技術に人の雇用が取られるというのは大昔からある話で、実際はたいして減っていません。大きな問題は、雇用代替予測の研究について、仕事全体として雇用が減るかどうかに注目した研究が多いという点です。

AIが代替するものは、業種そのものではなく個々のタスクなので、日本でも雇用統計をとる際は、タスクまで調べるのが望ましいと思います。実際には政府統計ではアメリカでは出来ていますが日本では調べていません。AIに限らず技術進歩はこれまでも今後も常に起こります。そういう時にタスクベースで何が減って何が残るか、教育は何に集中したらいいのかを考える上で役立つと思います。

ローテク、ハイテクという区分では、雇用とタスクともに影響を受けていません。影響を受けているのは、ルーティーン化される仕事です。ルーティーン化できるものはいずれはすべてAIに任せる方向になるというのが現在の傾向です。

AIは生産性を補うために必要とされる

どの国も労働生産性がそれほど伸びておらず、将来の経済成長率は落ちていきます。AIが必要なのは、これを技術力で代替する必要があるからです。日本の場合はさらに人口減少が加わり、過去30年で650万人の生産年齢人口が減少しています。この生産年齢人口と人口減少に代わって、日本ではAI化が必須です。

生産量/人口=生産量/労働時間×労働時間/雇用者×雇用者/人口です。生産性をどこで上げるかを考えやすい分離してます。1つめを時間あたり生産性と呼ぶと、これでAIなら同じ時間でどれくらい生産性を増やせるかが測れます。

2つめの雇用者で割った労働時間ですが、雇用時間を減らすという長期の流れからすると、将来にわたり増やしていくのは難しいでしょう。

雇用者/人口を雇用の参加と呼ぶのなら、人口に占める雇用者の割合は、生産年齢人口が減っている日本の状況からみると増える要素があまりないので、やはり最初の項目のAIが必要です。

ロボット化は進んでもAI化は進まなかった日本

AI以前の一般的なロボット活用を見ると、日本と韓国では1万人あたりのロボット数が300を超えていて、米国よりも活用が非常に大きいのです。製造業に特化した国は、すでにロボットに特化をしたやり方を進めています。それが今後は銀行の窓口業務など、サービス部門の比較的ルーティーン化が簡単だと思われている分野でも進められます。

ロボット化に比べ、AI化では日本はおくれを取っています。AIの特許数や論文数は、確かに米国、中国に比べて少ないです。その理由は、使われないことにあります。IBMにはワトソンがありますが、顧客の情報をこれらの企業の社内分析で活用して一般的な技術開発に使えるなら、割引できる場合は米国の企業ではデータ漏洩のリスクよりも割引が大きいことを理由に導入を進めます。一方、日本企業は、情報のシェアを避ける文化があり、情報セキュリティを懸念します。データが少し漏れたというミスを含めて、それをリスクとして許容できるものとならない限りは、AIで精度を上げていこうとはならないでしょう。

2つ目は日本の自動車産業などが得意だった技術開発や、化学部門または材料部門が、工学系の技術者レベルでの非常に特化した熟練の技術に頼っていたことです。これはデータ利用でのシステム化できないと思われていたので、ロボット化はしたけれども、AIで大枠や長期の流れ、将来を予測しようとはならなかったのです。

また電気自動車系では、アプリをアップデートすれば、瞬時に最新のハイテクに更新されます。これにより、これまで技術の難しさゆえに日本が強みを持ってきた自動車産業が廃れてしまいます。そのため、日本の自動車会社はハイブリットで、その次がせいぜいプラグインハイブリット、最後はまだ先ですが燃料電池自動車に移行しようと考えていました。しかし思った以上に電気自動車の技術開発のスピードが早く、遅れを取ってしまったため、これはまずいと対応しているのが現状です。

中国は、AIの中のネットワーク分析に力を入れています。なぜ中国が強いかというと、AIは全部まとめて自分が理解しようとする中央集権だからです。その反対が分散型のビットコインなどのクリプトカレンシーですが、これも量子コンピューティングによって置き替わっていきます。日本の量子コンピューティングが他国より優れているかというと、相対的に見てそんなことはありません。

米国は、昔ながらのエクスパートシステムをより良くすることに特化して、ネットワーク分析を行っています。この5年のトレンドは、量子コンピューティングを含めた個別的技術応用の方にシフトしています。

特許数では日本は完全に負けています。米国と中国はビジネスが市場をとったもの勝ちの文化なので、まずトライアルができます。自動運転自動車も、まず走行して、事故が起こったら調査報告書をしっかりと出しますが、それを許す文化にあります。

日本、韓国などガイドライン文化の国は、まずルールを決めてから競争に入るのですが、ルールを決めるのに延々と時間がかかります。ヨーロッパもガイドライン文化ではあるものの、ガイドラインを世界に普及させようというISO的なやり方が色濃いので、自分で標準化して特許を取ることが良いとされています。日本もガイドライン主義で行くなら、そのようにすれば良いのですが、メーカーやコンサルタントが対応出来ないならばビジネス文化の方がいいかもしれません。

数日前に、日本経済新聞の1面に「人工知能(AI)に関する7つの原則」という記事が出ていました。AIを開発した企業に説明責任を持たせ、説明ができないとAIを使った製品開発はできないという主旨でした。しかし深層学習の傾向は、過去の流れがわからない、説明できないけれども予測が当たるというのが特徴なので、説明をしないといけないというのは合致しません。実際は事後が起こった後に、事後的に調査して自分たちで説明するということになると思いますが、それが伝わらないとAI開発はさらに滞ってしまうでしょう。

日本では社長の思いつきやコンサルタント会社の営業で、AIの開発を始める例がよく見られましたが、そこで構築されたシステムは、工場レベルでは工場長を含めて信用しないので、データも出しません。それが国内の現実です。

技術だけの問題で終わらせるのではなく、社会の問題を解決する手段として理解しないと、今後もAIを活用できる社会にはならないと思います。

システム教育、サイエンス・テクノロジー・エンジニアリングでは、一個のツールしかできない人は、その分野はすぐに廃れるので賃金が長期的には下がるといわれています。そのため理系の賃金は日本では高くはないですし、日本は海外以上に短期的に成果を求めがちです。そういう意味では、個々の細かいKPI判断を経営に生かすという流れが今後は大事です。

日本でAI化を進めるためには

日本はGDP世界3位で、マーケットとしても非常に大きい国です。日本語に特化したAI活用の自然言語は、今後も技術開発が進められる可能性が高いです。

AI研究では、個別の数学者、工学者に小さな研究費を渡して、まれにでも大成功すれば良いというのが現在の日本が勝ちうる戦略です。産業界レベルではデータ規模の経済性が大きいと考えられるので、優れたデータを持っている分野はAIを更に活用して収益につながります。しかし、データが少ないからといってうまくいかないということは全くありません。個人事業者も十分活用できるものになっていくでしょう。

データを独占的に所有・活用していることで弊害が生まれています。対応する規制政策の議論が欧州をはじめ議論が進んでいます。今後の政策課題としては、生産性向上にきちんとAIを活用するように、企業単位だけではなく工場単位まで落とした議論をできるかどうかが大切です。AIにも失敗は多いです。最後はそれを使う人の判断が大事です。

AIを使ってはならないという規制はできないでしょう。統計手法の規制はあり得ないので、「深層学習を使ってはいけません」という規制もないでしょう。もっと一般的な安全規制など、これまですでにある規制にAIを考慮した修正を入れていくことになると思います。法的なサポートが必要になるのは、スピードオーバーやデータ流出などです。

AI推進政策としては、税制優遇をR&Dにする、基礎研究に力を入れるなど、何らかの税金を上げてそれを雇用がうまくいかない方に回す仕組みにしない限り、格差は広がります。今の税制ではベーシック・インカムには予算が足りなくできないので、税制優遇を民間に生かして、お金が戻るようにしないと経済が回らないのではないかと思っています。

質疑応答

Q:

豊かさと人工知能の関係について関心があります。日本ならではのAIの考え方の1つに、社会の問題や課題をAIで解決し、それによって豊かさにつなげていくというものがあると思います。豊かさの指標や国富とAIの関係について具体的にお考えがあればお聞かせください。

A:

今までだと海外に行ったとき、何を食べればいいかも、どこに行けばいいのかもわかりませんでしたが、AIを活用したアプリを使えば、ランキングを見て、その場でレストランを予約できるので美味しい食事を食べることが出来ます。満足度も上がるので、自分の豊かさも上がるわけです。自然や地域の豊かさも、評判が高い場所が認知されやすい仕組みになっています。

そういう意味でAIは、一定の所得があり情報を取得できる人の生活レベルを上げます。問題は、雇用を奪われる人が、その技術が無いゆえに損失を被ることです。

私は物の豊かさと人の教育・健康の豊かさと自然の豊かさを総合化して、地域と国の生活レベルを上げていくための新国富(inclusive wealth)という指標を使えるようにしています。個々のレベルを上げる触媒としてAIは明確に使われていると思います。

Q:

今の国富との関係で、経済学的には厚生は消費者余剰と供給者余剰の総和で分析されると思います。デジタルエコノミーで、AmazonやGoogleといったサービスは消費者余剰を高めているものの、供給者余剰が偏っており、それを原資とした雇用者報酬の分配はあまりうまくいっていません。一方では消費者余剰を押し上げつつも、他方では賃金分布の格差を広げています。デジタルエコノミーにおいて、経済学的に豊かさをどのように分析したらいいのでしょうか。

A:

個人的な豊かさを測る手法は、今までは単純にAとBの比較や消費レベルで測っていました。米国では、レジャーや自由な時間、社会の不平等感、寿命といった、経済の指標に入らないものも消費に加えて分析する手法が開発されています。この方法を用いることで、経済学的には個人が使う時間をどれに分配するかということが測れますし、AIがあるゆえに情報へのアクセスや自分が使うツールの精度が上がるのでプラスになります。

国や地域全体の社会の不平等は、その地域の安全性にも関わるのでマイナス要素となります。AI化が進むと、あまり必要とされなくなったタスクが多い産業界ではシェアが減り、賃金が減ります。他のグループは賃金を増やすので、相対的に格差が増えることは今後も多々あると思います。それを解決する手段は、今のところは社会保障で分配するやり方に頼らざるを得ないと思います。デジタルエコノミーにて再配分が効果的に出来る課題に取り組むことで解決できるかもしれません。

大学教育では、コンピュータ・サイエンスに力を入れようと予算が増やされてます。それが賃金格差を止めるところまで上手く機能するとは思えません。ひとつのプログラム言語ができたり、数学が深く分かったりしても、最終的にはそれを使うという意思決定ができないので、うまく回りそうにないのです。辛抱強く、データを使い意思決定に活用し社会の厚生を上げるという取り組みが出来れば良いです。

データ・サイエンティスト側も、課題を適切に自分の上司に説明できるコミュニケーション能力が必要ですし、データ・サイエンティストにわかるように課題とデータを用意する上司も必要です。そうした部分が工学系の大学のトレーニングでは欠けているのです。

課題を見せて、それを技術でどう解決するかという授業やトレーニングがあれば上手く行くと思いますが、今のところはあまりないです。学生にプレゼンをさせるような授業もあまり多くはありません。

Q:

日本でAIが進まない原因の1つに、企業がリスクを過度に回避するあまり、他者と情報をシェアしたがらないというお話がありましたが、ビジネスモデルを描けない、あるいは日本では、それをやることで社会をより良くしようといったビジュアリーなリーダーが意思決定することができないといった要因の方が大きいのではないでしょうか。

A:

おっしゃる通り、新しいシステムを売り込む方も、短期でどのくらい収益が上がるかという、ラフな数値まで話を持っていくことが出来ていないと思います。これが出来ないと日本的な企業では、経営層、他部署を説得できないと話が進まないので物事は進みません。

ただし、ラフな計算することはできます。例えば、この建築プロジェクトを行うと、こんな想定になっていますといった算出をします。過去のいろいろな事例をもとに算出しているだけであって、場合によっては正しくないかもしれません。そのモデルを、数値を含めて出せるまでの人が、データ活用を売り込みたい側と、データを持っている側の、両方にいないのだと思います。それが日本に特徴だと思います。

また、個人や一部署で任されている資金の余裕も無いです。単年度予算の弊害とも言われますが、自分の予算では何もできないから、他の部署から持ってこなくてはならない。そうすると他の部署への説明が難しいのです。

イギリスやドイツなどでは、最初のミーティングから打ち合わせに異分野であっても博士号取得者が多く、分野外であってもほどほどの専門家を集めてきて理解しようとしたり、一緒にしかも早くプロポーザルを作ろうとする文化があるので、共同プロジェクトがやりやすいです。ビジュアルリーダーはいますし、ビジュアルリーダーが部局内でも活用しやすい組織です。日本では売り込む側がビジネスプランまで作るという特徴がありますが、まずそもそもビジュアルリーダーが足りないと思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。