誰も知らない日本の周波数政策

開催日 2003年9月17日
スピーカー 田中 良拓 ((有)風雲友 代表取締役/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員)
モデレータ 池田 信夫 (RIETI上席研究員)
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議事録

モデレータ:
ここ5年間の情報関連投資は、IT業界全体での12%ぐらいの投資額の伸びの中で、無線通信機器だけで24%の伸びと、IT業界全体の2倍の伸びを示しています。つまり無線通信機器が成長産業のIT業界の中でも最も成長率が高い部門であるということで、このことからも電波の有効利用が日本の産業全体の活性化に役立つものと思います。本日のお話はこれから電波をどうするかということを考える土台になるもので、今電波はどう使われているか、調査した結果を報告していただきたいと思います。

はじめに

無線サービスの根幹にある周波数が、政策的にどのように使われているか、お話ししたいと思います。経済産業研究所にIT研究グループがありまして、その中で2002年の夏に「電波探検隊」というプロジェクトが作られました。電波利用状況が国民にわかりにくので、まずどのような状況なのか探検しよう、ということです。その研究報告書が先日発表されましたので、その要点をご説明したいと思います。

報告書の説明の前におさえておきたいのは、周波数割当計画です。これは総務省の電波法の告示で、周波数利用の基本的事項を定めているものです。これに則って無線局は電波を使用しています。もし新しい無線サービスが出てきたら、周波数割当計画を変えて対応することもありますが、ともかくこれが根幹となるものです。

これは土地利用計画にたとえられます。土地利用計画は、その土地にどういう建物を建てるか、それは工業地帯とか準工業地帯とかで違ってきます。同じように、どこの周波数をどういうふうに使うかということを計画して、表にしているのです。

配付資料P5 参照)

一番左の欄は国際分配、次に国内分配があります。国際分配の中に、第一~第三地域があり、第一地域はヨーロッパ・アフリカ、第二地域は南北アメリカ、第三地域は日本・アジア・オーストラリアになります。その地域で、たとえば5150MHzから5250MHzの間は何の無線通信業務が利用できるかということを定めていて、表を見ますと航空無線航行、固定衛星という無線業務を国際的に使ってよいということになります。

国内分配というのは、国際分配に沿ったうえで分配するという規則になっています。つまり国際分配が固定衛星だったら、国内分配も固定衛星となります。「移動」というのは移動業務を使ってよい、ということです。周波数帯域別に、どのような業務に使っていいかが決まっています。電波は土地と違って区画が周波数別になり、基本的に日本全国同じです。

周波数帯域の利用状況の調査

調査のために、周波数割当計画のほかに3つの資料を組み合わせて利用しました。1つめは日本無線局周波数表、これは総務省のホームページにあるデータベースのことです。2つめは無線設備規則、これは電波法の規則、技術基準を定めたものです。技術基準の中には周波数をどのような変調で使えばいいかという説明があります。3つめは周波数の長期利用計画です。これは総務省内だけの公式資料です。この4つの資料の情報を足し合わせると、若干の例外を除き、総務省の持つデータベースで行える調査と同程度の分析が可能だとわかりました。

総合無線局管理ファイルは総務省が行政を行うためにもっているデータベースです。そのうちの一部だけを外部公開していて、それが日本無線局周波数表です。例外を除くというのはどういうことかというと、治安とか国防とか、そういう無線局は隠されているからです。全部公開されていれば民間でも調査しやすいのですが、ほかの資料を組み合わせて推測しました。

これを世界的にもトレンドである3.0-6.0GHz帯の利用状況に適用して、どのような電波の利用状況になっているかを調査しました(この周波数帯は、日本がアメリカや欧州と同じようには電波開放をしていないので、そのことから注目を集めているということです)。

この調査で、次の4つの条件を満たす周波数帯において電波開放などの措置をとる余地が大きいことがわかりました。
(1)国防・治安・安全関係用途に利用されていない。安全とは航空・海上業務などのことです。
(2)免許不要局がない。免許不要局とは皆さんがよく使っているワイヤレスLANのようなものです。こういう免許不要局がない周波数帯があります。
(3)移動する無線局がない(少ない)。つまり固定の無線局のみがある周波数帯です。
(4)無線局がそもそも少ない。

この4つの観点から3.0-6.0GHzの利用状況を見て、5.0-5.255GHz帯と5.35-5.47GHz帯の電波開放可能性が一番高いと判定しました。総務省では4.0-5.0GHz帯のところを開放しようという動きが強く、電波探検隊の判定とは違っています。この違いについて、総務省は全てのデータを持っていて、私どもは持っていないので、ちゃんと議論ができないという問題があります。

各無線局種別の周波数利用度の調査

次の調査は実際の無線局データを利用しました。東京のどの辺にどのような無線局が免許されているかが総務省のデータベースでわかるので、それに基づき調査しました。

(1)各無線通信業務別の利用周波数量
割当計画を見ますと、5150-5250MHz帯には固定衛星業務が分配されています。つまり、固定衛星業務は100MHz分配されているということになります。すると全周波数帯域(0kHzから1000GHzまで)の中での比率はどうか、ということを算出しました。その結果、固定業務、移動業務、電波天文業務が多くの周波数分配を受けているということがわかりました。ただし、この調査方法では、低周波数帯の100kHzと高周波数帯の100kHzとを同一評価するということになり、それではナンセンスです。どうしてかというと、高周波数帯の100kHzはほとんど実用に使えないからです。それで、無次元化した帯域幅△fを、帯域幅の単位として利用しました。
△f=(f2とf1との帯域幅)(f1とf2の中心周波数)
先ほどの5150-5250MHz帯では、△f=(5250-5150)/(5200)=100/5200 で1/52となります。

(2)各無線局種別の利用周波数量
ここまでは分配の話で、その周波数帯ではどの無線通信業務が使えるかという話でした。そして、ある帯域が移動する無線業務に分配されている場合に、その帯域でMCA無線(運送業などによく使われている)が使えるのか、携帯が使えるのかというように、それらの無線局に対してある周波数を割り当てるという作業が免許割当(アサイメント)です。総務省は2つのフェーズで実際に無線局が周波数を使えるようにしているというわけです。まず国際分配に沿いながら国内分配をし、そのあとで国内分配に沿いながら、免許割当をすることになります。
無線通信業務と無線局種の違いを理解していただきたいのですが、分配される対象は無線通信業務、割当の対象になるのは無線局です。無線局というのは、皆さんがお持ちの携帯1つ1つも無線局になります。無線通信業務の中で固定業務と呼ばれているものでは、無線局種も固定局のみとなります。放送無線通信業務に対応する無線局種は、放送局および放送衛星局となります。放送業務の中にさらに放送試験業務というのがありますが、これに対応するのは放送試験局、放送試験衛星局となります。
さて、この調査は各無線局の局種にどれだけたくさんの周波数帯が割当されているかということを算出したものです。まず日本無線局周波数表を利用し、周波数割当計画のある一区画内の周波数帯において、どの種別の無線局が、何局利用されているかを検索することにより、全国の全周波数帯域の各周波数区画に対して、その無線局種が何局免許されているかを算出しました。
たとえば5150-5250MHz帯では、固定衛星と移動に分配されていますが、固定衛星業務もしくは移動業務に対応する無線局が免許されていないことがあります。免許されている場合は、1つの無線業務に対して、2つ、3つの無線局が対応することがあり、どの局に免許されているかということを1番下から1番上の周波数まで見て、たとえば移動だったら、ある陸上移動局が使われている、そこに5150-5250MHz帯が割当てられているという近似をして、それを全周波数帯域で足し算をします。この無次元化した帯域を使って足し算をしました。その結果が次のグラフです。
配布資料P13 各無線局種別の利用周波数)
すると固定局には7.4%の周波数が割当てられている、ということがわかります。1番大きいのが実験局の29.6%で、これはどういうことかというと、実験局は二次的基礎という条件で免許が与えられていて、一次的基礎の無線局に干渉などの悪影響を与えない範囲だけで運用ができるという免許の与え方をいいます。一次的基礎というのは、独占的に使えるということです。携帯も一次的基礎です。ですから実験局は実際は大がかりな無線局の運営はできず、多くの周波数を利用しているとは考えにくいです。なおかつ、実験ですから継続的には使っていない。ということで、実験局を除いたグラフが次のものです。
配布資料P14 各無線局種別の利用周波数-実験局を除いた場合)
これを見て大きいのは、固定局、放送局、海岸局、船舶局、陸上移動局、携帯局ということがわかります。

(3)各無線局種別の電波利用料財源の負担割合
この調査結果を利用して、電波利用料の問題考えてみました。
電波利用料は、携帯を持っている人が年間利用料540円を払うように、無線局を使っている人が料金を払います。ただしワイヤレスLANのような免許不要局は除きます。2001年度の電波利用料の総額は449.5億円でした。この財源が違法無線を防止するような研究に使われたり、総務省のデータベースをつくる費用になっていたりします。
配布資料P15 電波利用料財源の負担割合)
この図は電波利用料財源の負担割合を示したものですが、携帯・PHS事業者が93.4%を占めていて、放送事業者が1.1%、その他の事業者が5.5%です。ここで問題なのは、先ほどお話しした電波利用料財源の使い道のほかに、地上波デジタル放送のいわゆるアナアナ変換(既存局の周波数変更)の財源が計算の仕方によって800億円から1800億円に変わってしまったので、足りない1000億円を電波利用料の値上げで補おうという議論になりました。電波利用料を誰が負担しているかというと、一目瞭然ですが携帯・PHS事業者です。しかし今回放送のデジタル化、もしくはアナアナ変換で実際にお金を使うのは放送事業者です。放送事業者が使うお金を、どうして携帯事業者が払わなければならないのか、ということになって、そもそも携帯事業者と放送事業者の割合が90対1ということ自体おかしいのではと考えました。
この議論は結局、総務省と携帯事業者と放送事業者が陰で話し合ってつくった電波法改正案がこの夏に決まってしまいました。放送事業者のアナアナ変換のために電波利用料の徴収額を増やすというような内容で、その中では私たちがこれから話すようなことは議論されていませんでした。
もし電波利用料の負担が、利用している周波数量に応じて行われるならということで、(2)で挙げた実験局を除いた利用周波数割合を2001年度電波利用料財源に適用すると、次のようになります。
配布資料P16 各無線局種別の電波利用料財源の負担割合)
すると放送局は34.7億円負担しないといけません。ここでいう放送局は無線局のことで、個別のテレビ局の意味ではなく、また放送事業者は放送局だけではなく、固定局なり他の局も持っています。ですから、放送局だけの電波利用率は放送事業者自体が持っている利用率より低くなります。携帯利用者の場合は移動通信事業者の一部であって、移動通信事業者の全体は基地局と陸上移動局を使っていることになります。その仮定の下で電波利用料を計算すると、放送事業者は34.7億円、携帯事業者は83.5億円で2対5の比率になります。

(4)空中線電力を考慮した各無線局種別の電波利用料財源の負担割合
日本全国である周波数帯をある局が使っていたら、その場所を占有していることになり、他の局は利用できません。もし大出力で使っているならば、干渉の恐れもあります。ここまでは周波数利用度を帯域幅だけで考えていましたが、帯域幅と到達面積の2つを考えました。帯域幅×到達面積とは、短域幅×空中線電力(アンテナ出力)に置き換えられ、それを周波数利用度として考えた場合、次のグラフのようになります。
配布資料P20 各無線局種別の電波利用料財源の負担割合-空中線電力を考慮)
この場合、到達面積自体のデータがなく、空中線電力に置き換えたわけですが、空中線電力のデータも全ては公開されていないので、公開されている無線局種のみを挙げました。無線航行陸上局、これはレーダーになりますが、これと放送局でほとんど100%になっています。ただし、携帯事業者のような無線局はここに含まれていません。それでそのデータを電波探検隊で推定しました。
配布資料P21 出力が公開されていない携帯電話システムの各指標を推定する)
携帯端末の数は7000万台、一基地局あたりの携帯端末の数は1000台、基地局の数は7万台、携帯端末の出力は1W、基地局の出力は50Wとしました。これを先ほどのグラフに組み合わせたのが次のものです。
配布資料P22 各無線局種別の電波利用料財源の負担割合-空中線電力を考慮)
すると陸上移動つまり携帯の端末側だけが70%を占めます。大出力の無線局は広範囲に電波を降らせている、だから他の小出力のものに比べるとその電波利用度は大きいといえます。しかし、ここにあるように帯域幅×空中線電力で、帯域幅は局数×ある帯域、を考えると、陸上移動局は7000万もあるので、その影響が大きく出て陸上移動が70%になったということです。
ただし、無線航行陸上局は用途が通信ではないので、これを除くと次のようになります。
配布資料P23 各無線局種別の電波利用料財源の負担割合-空中線電力を考慮)
陸上移動が86.6%、基地局が4.3%、放送が8.8%で、これを先ほどと同じような近似を使って、放送事業者と携帯事業者の比率を考えますと、だいたい1対10になるということです。
(3)(4)の結果から、このどちらの数字を利用しても今の携帯事業者は利用料を負担しすぎということになります。

結びとして

電波政策を理解するには、無線通信業務とか無線局とかいう用語、それと電波政策に関する法令、設備規則や運営基準、公式資料にどんなものがあるのかということとそれらの関係を理解しないといけません。また電波政策はたくさんの制度の組合せでできています。一番わかりやすいのが免許制度なのですが、そういうことを詳しく理解しないとこのようなモデルをつくることもできません。

結論として、まず電波の利用実態は、誰が使っているのかよくわからないけれども実際は非常に不均一ということです。なおかつ電波利用料の負担でわかったように、携帯事業者以外のものが生み出す価値は非常に低いのに、電波をたくさん使ってもいいような状態になっています。

2番目として、電波利用料は無線局単位で払うという制度になっています。携帯事業者は効率的に電波を利用するためにさまざまな技術を使って工夫していますが、そのような技術を使えば使うほど、おなじ帯域で無線局の数が増えてしまう。無線局の数が増えると利用料を多く払わなければならないという、逆インセンティブな制度になっています。

3番目として、電波利用の実態について本当はいろいろな側面から考えられると思うのですが、今はそのような状態にありません。それは、情報がないからとか、研究者が少ないからとかいうことが考えられますが、まずは情報を公開して多くの議論を呼び起こす必要があるのではないかと思います。

モデレータ:
電波のことを理解するのは大変難しいと思います。まず、分配(allocation)と割り当て(assignment)という概念が全然違うのも難しいところです。分配は結構均等なのに、実際に使っているのはほとんど携帯事業者で、土地利用にたとえると、住宅と工場と商店に分類されているうちの工場地帯だけはビルが林立していて、あとは空き地だらけ、という感じです。しかも効率的に使おうと高いビルを建てたら、固定資産税がますます高くなってしまう、というような不合理さがあるわけです。どうすれば効率的に利用できるかということを、これから考えていきたいです。

質疑応答

Q:

割当表についてですが、日本では国際で決まっているところをそのまま国内にもちこんでいるのでしょうか。それともそれとは違っているところもあるのでしょうか。

A:

基本的に日本は国際で使っていいというところを国内でも使うという暗黙のルールがあります。そしてたとえば国際では地球探査衛星、無線標定、宇宙研究の3つがあって、国内ではこのうちの3つとも使っていいし、2つでもいいことになっています。割当表の5150-5250MHz帯を見ていただくと、国際にはない「移動」がありますね。でもこれは、国際のところにS5.446とかいくつかありますが、これは無線通信規則の条文を指していて、第三地域は移動を使っていいと決まっているから、国内にこう書いてあるのだと思います。これがアメリカの場合、自国内なら勝手に分配してもいいという無線通信規則の例外ルールを多用して、それによってフレキシビリティが上がった使い方をしています。日本はこの例外条項を使うことはほとんどありません。韓国に混信してしまうという考え方もありますが、それでももっと例外をつくってもいいのでは、というのが私の考え方です。

Q:

2つ質問なのですが、放送事業者と携帯事業者の負担の比率が違いすぎるというお話でしたが、料金負担は何を基準にしているのでしょうか。それと、電波の効率的な運用をするにはどうしたらよいとお考えですか。

A:

1つめの質問について、まず法改正前の時点では、基本的に電波利用料というのは、マンションの管理費と同じという考え方です。マンションの管理費は1戸あたり1カ月いくらというふうに決まっていて、大きい部屋は小さい部屋より管理費が高いと思いますが、まあ1万円と3万円という、それくらいの違いです。そういうふうに電波利用料は考えられていたので、携帯端末なら年間540円、出力の大きいものでしたら2万3800円、ということで、無線局管理ファイルに登録するためには1局ごとにコストが発生するので、1局ごとにしたわけです。ところがアナアナ変換のために、改正されてしまったものは、NHKとかキー局、もしくは準キー局がもつ大出力の放送局に関しては、この8年間、2011年までは3億円へ増額というようなすごい値上げになったわけです。そして中規模のところは8万3000円、小規模のところは620円となっています。日本の放送事業というのは、各地域ごとに違う会社になっています。東京や大阪の放送会社に比べ、山間部ではお金がない。それではキー局、準キー局のように大出力のところに払ってもらおう、ということのようです。
2つめの質問に関しては、私としてもまだよくわかりません。ただ、このように情報を公開したり、意見を交わしたりしない限りは、方向性は見えてこないと思います。私はかつて内部にいたわけですが、一握りの専門家だけで今のような議論が進んでいるのです。その人たちだけに任せておくのは非常に危ないことだと思います。

モデレータ:

今は出力が大きくても、東京でも山の中でも、2万3800円の負担なのに、NHKとキー局は今度3億円の負担という、こんな値上げはきいたことありません。価格体系を完全に変えてしまいました。しかもどうして変えたのかという論理がほとんどなく、要するに原則がほとんどない、ということなのです。
電波の効率的利用に関してですが、電波の問題は実はお金が大きく関わっているのです。2000年にヨーロッパで行われた周波数オークションで、イギリスの例では100MHzにトータルで225億ポンド、日本円にして3兆7000億円、そんなお金が動いたわけです。日本では業務用無線で使われていない電波がその何十倍もあります。つまり何兆円単位の無駄遣いが行われているということなのです。
周波数を有効に使うことは、皆さんが使っている携帯の料金にも関わってきます。どういうことかというと、たとえばNTTドコモは70MHzを使っていて、1つの無線局で使える人数が、かりに1000人分あるとします。携帯電話はおなじ70MHzでも、基地局をつくって、同じ周波数を多重に使っているのです。仮に周波数が倍の150MHzになったとします。そうすると2000人使えます。2000人使えたら、基地局は半分ですみます。携帯電話のコストはほとんど基地局のコストです。あれは1つ1億円とか2億円とかするのです。単純にいうと、携帯電話に割り当てられる周波数の幅が倍になると、基地局が半分になって、皆さんの携帯電話の料金が半分になるということです。日本でも世界でも、携帯電話の料金が何で高いのかというと、電波が窮屈に割当てられていて、過密に基地局を建てないといけなくて、そのコストが利用者にはね返っているからです。それを使った産業にしても、新しい機具を使うコストにも全部関わってくるので、日本経済全体にも波及効果をもたらすわけです。その価値は数十兆円の価値ということです。

Q:

3つほど教えていただきたいのですが、2.4GHzの電子レンジやNTTのFOMAなどには電波利用料は払っていないと理解していいのでしょうか。それから5GHzから30GHzというのは、これからビジネスが起こってくると思うのですが、その中で免許不要のバンドがあるのでしょうか。そうしたら無線のIP電話に利用できると思うのですが、そういう帯域というのは30GHzまでにあるのでしょうか。3つめの質問は、よく30GHz以上の世界はある意味無法地帯で、勝手に使われているという話ですが、これは本当なんですか。

A:

FOMAは2.4GHzではなくて2.0GHzだと思いますが、基本的に包括免許という免許です。2.4GHzはワイヤレスLANもそうですが、免許不要です。免許不要の場合は電波利用料は払わなくていいことになっています。
2つめの質問について、30GHzまでだと、私の知る限りではないと思います。つまりこれから開発するのは難しいと思います。
3つめについては、よくわかりませんが、実際に新サービスを開発するとしたら、私だったら60GHz帯とか、94GHz帯とかを狙います。60GHz帯は日本でも使えるようになっていますが、94GHz帯はアメリカではできるけど、日本ではまだできません。日本でもそういう技術をもつ人がでてきたら、使える帯域です。それ以外のところは衛星とか、いろいろあってそう簡単には開放されないと思います。
モデレータ:今利用されている周波数帯で、すでに使っている人がいて、新たに参入しにくいということですが、分配と割り当てを区別して考えないといけないわけですが、分配はもうされつくしている、でも割当てられているところはものすごく少ないのです。だから、空き地の部分の持ち主に「使っていないのなら返してほしい」とは言えると思うのです。それを政策としてどうするかというのが非常に重要で、本日は放送の問題を主に取り上げましたが、放送は使っているほうで、むしろ問題は業務用無線です。

Q:

どうしてこういう非効率的なことが正されないのでしょうか。

A:

無線局の免許は基本的に5年おきです。ところが再免許という制度があって、今まで5年で免許がおわりになったことはないのです。戦後電波法ができてから、ずっと免許を持っていて、規則上はずっと持っていていいわけではないのに、慣例的にそうなっていて、取り消しはできない制度になっています。それを変えるために、料金の値上げをするという考え方もあるようです。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。