IT戦略と規制改革

開催日 2002年3月15日
スピーカー 鈴木 幸一 ((株)インターネットイニシアティブ代表取締役社長)
モデレータ 池田 信夫 (RIETI上席研究員)

議事録

スピーカーの紹介(池田研究員による)

今日はIIJの鈴木さんに、IT革命と規制改革という題でお話しいただきます。
鈴木さんは、ご存じの通りIT戦略本部のメンバーでもありますが、昨年末にIT戦略本部で出した、「IT分野に関する規制緩和の方向性」、いわゆる宮内レポートですが、これの衝撃は非常に大きく、特に放送業界では大騒ぎなんですが、今日は、そういった政治的なところからは離れて、よりフランクにITと規制の問題に関して、お話しいただきたいと思っています。それではどうぞ。

米国通信業界に見る「バブルの幻想」

鈴木:こんにちは。最近はIT業界も911テロ以降、だいぶ構造変化が進んでいるようで、この前米国に行ったのですが、一昔前のゴルフ場でBusiness Talkingといったような、過剰接待は鳴りを潜めて、ずいぶんとmoderateになったように思いました。また、911以後の変化として、通信はNational Securityの重要な部分なのだという認識が社会に広まったように思います。ですから、通信はすべてが自由ではないという認識の下、堅実な経営をしているところが残るようになってきた。そういう意味では、1984年頃の状況に戻ったような気もするのですが、たとえばベビーベル系統の通信会社(Verison、Bellsouth等)が業績好調で、逆に元の本体であるAT&Tをどう立て直していくかというのが、投資銀行なども絡みながらの大きな通信業界の焦点になってきている状況です。その中で1つ興味深いのが、米国では昨年、インターネット利用料金が10数パーセント上昇しました。しかし、その状況下でもインターネットユーザー数は増え続けているという現象がありました。好調な企業、たとえばVerison等は、雇用を完全に維持しながら、業績を伸ばしている。一方で、iDC(インターネット・データセンター)等、インフラ系企業はとても苦しいですね。Level3とか、この前もGlobal Crossingとかが破綻しましたけれども、エクイティ・マーケットのおかげで、1万対1ぐらいのものすごい割合で投資ができたので、ばんばん光ファイバーを引きまくったのですが、911以後、投資が冷え込んでしまったので、一気に破綻してしまったわけです。たとえばLevel3とかは、2兆円規模の投資を「まあ10年後に花開けばいいや」という感じでやっていたのですが、そういう通常の投資観念からすると考えられないようなことが起こっていたのです。つまり、ここでわかってきたことは、同じ通信インフラといえども、電話とインターネットでは全然違うということなのです。電話と違って、インターネットはすべてがつながっているので、東京~大阪だけ引っ張ればよいというわけではなくて、それ以外も世界中にどんどんファイバーを引きたくなってしまう。ワールドコムのような、割と健全な経営をしているようなところでも、その呪縛にとらわれてどんどん引こうとして、経営を圧迫しているところもあります。ただし、通信、インターネットビジネスの世界は、きわめてローカルな部分もあるのです。たとえばワールドコムはドイツに光ファイバのバックボーンをばんばん敷設して乗り込もうとしたのですが、ドイツテレコムが排除にかかった瞬間、勢いをなくしてしまった。

このインターネットが持つグローバルなイメージと、実際のビジネスを進める際のドメスティックな面とのギャップ、この幻想のようなものが、通信業界のバブル崩壊の背景にあるように思います。

NTTを巡る規制の議論の誤り

NTTコムさんも、そう考えると海外投資で高い授業料を払っちゃったな、と思うわけです。どうも日本企業は、世界の趨勢を後追いする傾向にありますね(笑)。NTT分割という判断も、(AT&T等)世界の趨勢を追っかけているように思えるのですが、私が思うには、日本の市場規模などを考えると、分割したところできちんとしたネットワークサービスの競争は生起するとは思えないのです。日本の国土は、カリフォルニア州+αくらいしかないのですから。ファイバーの入口と出口は、だいたい600kmくらいあります。ということになると、日本のネットワークトポロジーは、米国でいうところのメトロネットワーク、つまりバックボーンの下にぶら下がっている子ネットワークくらいの規模でよいのではないか、ということですね。そうなると、現状のNTTを巡る規制の論議というのは根本的に間違っているのではないかという感を持つわけです。NTTからスピンアウトした会社がNTT本体と競争して、本体を脅かすという構図はあまり考えられないのではないか。これは一見競争のように見えますが、実際は全然競争ではありません。こんなこというと殺されそうですが(笑)。昨今のいろいろな情報通信関係の会議では、NTTが嵐のように叩かれるのですが、叩いただけでその先に行かない。そこで止まってしまうわけです。ただ叩くだけではなく、どこがおかしいのかを的確に指摘して直していかなければならない。(おかしいところといえば)電話の料金体系というのはよくわからないですね。交換機を通るたびに接続料金が発生するのであれば、都内の通信の方が高いわけですよね。交換網がごちゃごちゃしてますから。一方、東京から大阪にかけようとしたら、ファイバで1本です。このように、全体の構造がおかしいので、たとえばラストワンマイルの議論で個別撃破を図っても、意味が無くなってしまう。一方でユニバーサル・サービスという議論があって、米国は経済合理性のないところは徹底してサービスをしないのですが、その概念にのっとって、NTTは知床の端の方までほかと変わらないサービスをしている。これは国鉄の末期の議論と同じで、経済合理性を全く無視した議論をしているわけです。このような状況が続けば、永久にこの業界はオープンでなく、クリーンな状態にならないのではないか、というのが私の考えです。この問題を考える際のポイントは、NTTがいかに経済合理性を追求した経営ができるようにするか、そして、合理性を追求した際に潰れた企業へのレスキュープログラムを前提としない、情報通信に関する政策ビジョンを作ることなのだと思います。

ブロードバンド市場の展開で起こる問題点

米国のブロードバンドの特徴は、常時接続が当たり前になったこと、そしてその主役がDSLとケーブルだということです。日本も昨年から急激に伸びていますが、今後はどうなるかといえば、少し不安なところがあります。なぜかといえば、P2P等で、猛烈に帯域を食うアプリケーションが普及して、全体的にこれからネットワークの負荷は高くなる傾向にあると思います。その際に、現在のバックボーンが耐えきれるかどうか。このような状況に対応できる基幹網は、まだ日本では整備されていないと思います。IIJで、そのような帯域増加時代のバックボーン網として、現在力を入れているのがCDN(Contents Delivery Network)です。これは、IPを利用してはいますが、トラフィックを誘導することで、事実上放送局と視聴者のような関係をネットワーク上で構築する技術です。最近、インターネット上でのブロードバンドコンテンツを配信する際に、特に18禁方面で、アジアからの膨大なアクセスがあるのですが、これをさばくのが結構苦しいのです。ネットワーク屋としてはさばかざるを得ないのですが、それへの解決策として、このような新しい形の、ISPをバイパスするコンテンツ配信システムへのトライをしているというわけです。このようなコンテンツ配信を行うことによる制度的な問題点はどこにあるのでしょうか。NHKが現在、ホームページ上でニュースを配信しています。1日に数回の更新で、クリップを流しているわけですね。これは海外に出張したときなどに非常に便利で、実際かなりのアクセス(600-700万アクセス)があるのですが、これは、法律上の問題で「実験」ということでやっているのです。ただ、このような取り組みは、実験に止まらずどんどんやっていただきたいですね。インターネットの持つ大きな特徴の1つに、既存の構造をどんどん壊してしまうというものがあります。しかも、その先のビジネスモデルが全く予想できない。これは面白いですね。たとえば、音楽業界などはその典型です。現在、大手レコード会社は、毎年数百億円のレベルで売り上げが落ち込んでいます。その背景には、MP3や、CDのRippingがあることには疑いがありません。善し悪しは別として、すでに、RippingしたMP3がタダで流通するマーケットができてしまっているのです。これは著作権とかで止められるものではありません。ですから、レコード会社が1曲200円、300円で音楽配信のビジネスモデルを作っても、結局うまくいかないのです。新聞も同様で、すべてウェブにしてしまってもいいんですが、既存のビジネスを捨てきれないものだから、どうしても中途半端、おまけ的なものになってしまい、広告を取ることくらいしかできないから、儲からない状況になってしまう。現状は、馬車から鉄道への転換のような、もはや押しとどめることのできない構造転換が起きているというのが正しい理解ではないかと思うのです。そのような状況では、イノベーションをベースに、誰かに破壊的なすごく新しいサービスを作り出していただくしかない。アマゾンは着眼点はすごかったが、ボトルネックは物流にあった。現在日本では、マイラインという、これからシュリンクしていく産業でたたき合いをしているという、すごい競争が起こっていますが(笑)、そのおかげで固定電話の通話品質はどんどん下がってきています。値下げ競争をしているわけですから、ある意味当たり前なのですが、そうなるとIP電話でもいいや、品質も少ししか変わらないだろ、と思う人が多くなって、乗り換えが発生してくることになると思うのです。こうやって、新しいサービスが起こっていくのだと思います。IPv6に関して、私が1つすごいと思っているのは、いろいろなモノがネットワークにつながることによって、人とモノの関わり合いが根本から変わるのではないか、という予想ができる点です。ここに、間違いなくビジネスチャンスがあるはずなんですが、日本の電器メーカーとかは、フットワークが鈍いので、このビジネスチャンスを活かすイマジネーションに欠けているんですね。これでは日本からすごいコトは起こってこないと思います。

政府がやるべきIT戦略は、実はインフラ叩きではない

最後に、私が現在非常に腹を立てていることをお話ししたいと思います。それは、日本ではいまだにメインフレームの利用率が高く、昨年はなんと、17%も伸びたんです。この要因は、間違いなく政府機関と(合併が相次いだ)銀行です。安定した性能を発揮することとか、勘定系システムにおけるメインフレームマシンの優位性は認めますが、世界の趨勢がダウンサイジング、オープンシステムへと移行している中、全部それでやることはないでしょう。米国で、昔IBMが、もうウチはメインフレームのメーカーではありません、と宣言したことがあったと思いますが、政府が頭から引っ張らないこともあって、新しいコンピュータ市場が成熟せず、いまだにメインフレームが生き延びている。つまり、ブロードバンド、NTT、インフラ叩きだけが政府が取り組むべきIT戦略ではないのです。むしろ、国家としての情報システム戦略をデザインし、立案していくような、国家CIOのようなポジションを作らなければならないと思っています。たとえば、銀行は合併が相次いだので、システム統合も兼ねてメインフレームの利用が伸びたのですが、いまだに勘定系のコンピュータは夕方に一気にバッチ処理をかけている。これを随時送るようにするだけで、相当のコスト削減になるはず。私が思うに、金融業界がいまだに競争力がない原因の1つに、情報システムに莫大なお金を突っ込んだ割に、それを業務効率の向上という形で回収できていないことにあると思うのです。それなら効率的なシステムに入れ替えちゃえばいいのですが、そうせずに、また同じようなムダなシステムを作ってしまっている…。最悪なのは、このような動きをトップが理解していないことなのです。こういう事をいうとまた殺されそうですが(笑)、ある意味NTTなどは、こういった状況の中で、生け贄状態になっているのかもしれません。別に競合他社なので、かばわなくても全然いいんですが(笑)。以上です。

質疑応答

Q:

通信業界で、抜本的な構造変革が起こるとしたら、どのあたりから始まるのであろうか。既得権益をぶっこわす動きの発火点とは。硬直化した日本の中で、いくつかレバレッジを利かせるポイントはどこか。

鈴木:

有名な言葉に、CIOの首を切ることから、インターネットは始まったというものがある。米国企業は、ネットワーク化された構造に情報システムを変換する必要性が出てきた時、CIOの首をサっとすげ替えちゃった。CIOは米国企業ではナンバー2とかナンバー3の人材ですが、それをすげ替えるとはたいした度胸です。ただ、そうでもしないと情報システムは複雑なので、変化しないということもあります。先ほど銀行の話をしましたが、銀行がどうなっているかというと、メインフレームの技術者を、銀行が数万人規模で抱えている一方で、日本全体ではネットワーク、システム技術者が足りない足りないという状況なのです。そんなことをやっているのはナンセンスです。一般の情報システムではもうメシを食えない人々をたくさん囲って、彼らにしかいじれないシステムを作っている。話にならない。
日本企業でも、グローバルで競争をしている人たちは分かっているので、世界の流れにきちんと追従しています。たとえば東芝はGEに習って、調達コストを大削減しましたね。

Q:

動きにくい中で、ダイナミックな会社が少しずつ出てきて、例外を作る、風穴を開ける、というのが必要だと思う。IIJでは、どのようにその例外を作ってきたのか。大暴れしてきた経緯を教えてほしい。

鈴木:

IIJは、技術第一主義を掲げてきたが、やはりNTTと競争するには相当な準備(巨額な費用)が必要です。ゲリラ戦術でどうにかなる問題ではありません。インターネットインフラ事業では、競争で生き残るのは非常に難しいのです。企業ユーザー、中でも先ほど非難したような金融系の企業だったりするのですが、そうしたところしか、利益率の高い顧客は残っていない。ただ、彼らは技術にはしっかりお金を払いますから、そういう意味ではIIJとしてもきちんと囲い込めているのですが。

それ以外の個人サービスは、すでに叩き合いになっていて、利益はほとんど出ない状況です。本当にコンペティションを起こすには、違うルールのゲームを作ってしまうしかないのではないでしょうか。

Q:

日本の通信政策がおかしいという話があったが、鈴木さんは米国の通信政策のパフォーマンスをどう見ているか教えてほしい。たとえば、インターネット料金は上がっている中でもVerison等の利益が上がっている。一方で、新興企業がビシバシ潰れて、結局ベビーベルが一人勝ちである。そのような状況に対して、政策的な誘導があったとすれば、それは成功か失敗か。

鈴木:

米国の国家政策としては成功でしょう。やっぱり相手に市場を開放させて、各国の通信会社をつぶしまくり、自国の庭には外国企業を入れなかったのですから。一方で、ラストワンマイルが利益が上がるようにしないと、国のインフラがもたないのですが、米国の場合会社が潰れても、すばらしいインフラはまた誰か(外国資本の場合もありますが)によって引き継がれて行くのです。そういう意味で、介入せずというFCCの政策は骨格としては非常に上手いと思います。ARPAネットのコアにいた連中が作ったBBN社には外国資本が今入っていますが、もともと国防総省のプロジェクトからスピンアウトした会社に外国資本を入れるなんて、やはり柔軟性は信じられないモノがありますね。

翻って、日本は変です。NTTがものすごい過剰品質を要求するので、世界中でNTTしか買わない機器をメーカーが作るようにしてしまった。だから、NECなんて、世界的に競争力のないコスト高の機器しか作れないので、国際的にはアルカテルとかにボコボコにされているのです。

インターネットに関して日本がすごいのは、ネットワークオペレーションの技術で、これは日本の看板ですが、ルータなどの機械に関するコア技術は米国に全部もって行かれました。インターネットの標準を作り、もっと使いやすくしよう、とすべてタダで米国に投げちゃったので、そこから起こるビジネスは米国発になっちゃった。我々にいわせれば、ネットスケープが出たとき、彼らの作るブラウザなんて、俺らでも簡単にできると思っていたのです。ただ、いったん広まってしまうと、それを覆すのは大変難しいですね。コアな技術は非常に原理的に簡単だが、それにどんどん細かい技術が積み重なるために、どんどん参入できなくなっているのです。

Q:

米国では、1996年通信法の時に、かなり水平分離(アンバンドル)という考えが広まった。最近、日本でも1周遅れで議論が進んできているように思えるが、それについてはどうか。

鈴木:

米国でも、もし911が起きず、莫大な投資が今も続いていたら、レベル3とかも続いていたかもしれない。ただ、水平分離した会社の設備投資を支えてきた、巨大なエクイティマーケットは、政府の責任ではなくて、マーケット、その会社自身の責任である。もう1つの問題は、そうしたマーケットを作っても、金がうまく循環するシステムはデザイン可能なのか、という話。これは難しいですね。

Q:

米国でのインターネット接続価格は上昇しているが、ユーザは増加していて、収益もあがっているという話について、もうすこし詳細に教えてほしい。

鈴木:

米国でのブロードバンド接続エリアと居住所得階層は符合しているところがある。高所得者地域に、ブロードバンド網ができている状況です。というか、彼らが作ってしまう。これは、通信業者的には実に適切な設備投資が行われていると思います。

Q:

日本では、バックボーンの競争の中で、相当業者が無理しているのではないか。バルクで一括で買っているので、バックボーンの値段自体はあまりたいしたことないですよね。

鈴木:

本当のところはわからないが、収益の出る価格帯というのはやはりあって、そこにきちんと誘導していかないといけないのか、という問題。日本は旧通産省が、安く常時接続、ということを主張してきてくれたが、そのおかげで誰も儲からなくなってしまった(笑)。

大企業さんは技術にお金を払ってくれるので、IIJはそこにフォーカスした。DSLは今までの電話線という資産を活かせるので、まだ儲かると思うのだが、光ファイバーは、引けるところ、利益の出るところからやっていくというのがやはり正しいのではないかと思います。

Q:

RBOCの戦略はかなり上手かったのではないか(911以後)。

鈴木:

やはり株主に対応する経営のスタイルが徹底しているからでしょう。あざといと思われても、どん欲に利益を追求できているのではないか。

青木所長(コメント):

米国の戦略は試行錯誤しながら変えていく柔軟性があるというところに、強さの源泉がある。米国は不況になってから、15年も試行錯誤してきたが、日本は首相をとっかえひっかえしていても、戦略の試行錯誤に時間をかけていないために、その場しのぎになっている。社会的な実験を多数、どんどんやっていくような環境整備がやはり必要ではないか。

Q:

CIOの問題について、CIOが果たすべき役割とは何なのでしょうか。

鈴木:

やそれは、サプライチェーンなどの足下の問題を、企業のトップがどう認識しているかの問題でしょう。現場とトップで、情報システムに関しての、車の両輪が機能しているかをきちんと監視する。それがCIOの役割だと思います。

Q:

シスコという名前が出ているが、WTOに出向していたときに、米~EUの紛争処理で米国が訴え、一審で勝ったが最後にEUに負けたという事件があった。このとき、EUの和解案でいったん妥結しそうになったところでシスコが止めて、結局米国が敗訴して、結果的に大損をしてしまったということがあった。米国では、民間企業が相当程度政府に食い込んでいる印象があるが。その力の源泉は何か。

鈴木:

デファクトを持つ企業は強い、ということだと思います。シスコの技術は、コアはたいしたことがないんですが(こういう事をいうと、また殺されそうですが(笑))、その技術をよりよいモノにして、使いやすくするためのアタッチメントがどんどんくっついて、それが使われていくことで強さを発揮しているのです。こうなると、もう追いつけないです。

似たような例がオラクルで、これもデータベースに関してのデファクトを持っているのですが、複雑なので結構バグが多いのです。ただ、そのバグをユーザーがよってたかって直してあげているのですね。みんなで助けてあげちゃう。そうしないとビジネスが回らないからなのですが、そういう強さがあると思います。

池田(まとめ):

水平分離というのは、言葉が先行していると思うのだが、インターネット、情報通信というのは、政府があまり面倒を見る問題はなくて、技術の進歩に合わせて、いろいろと臨機応変に政策をchangeしていくべきではないか。米国では、FCCが"handsoff"アプローチを取っている。たとえば無線がここまで性能が上がってしまうと、有線の方にもかなりの圧力がかかるのではないか。

鈴木:

有線、無線に限らず、一番いいサービスをその都度供給できるように制度設計をしてあげて、環境を作ることが重要だと思います。

先ほどのCDNの活用例なのですが、IIJで小澤征爾さん指揮のサイトウキネンオーケストラのライブを、小澤さんと面白いことやろうよと意気投合して、1円で著作権を譲ってもらい(!)、ライブ放送したのですが、驚いたことに欧州から結構アクセスが来たのです。中継コストは結構かかっちゃいましたが。ウィーンに行くとわかるのですが、オペラとかは、有名なのはチケットが売れてしまうが、それ以外にもいろいろ毎日やっていたりする。そういうコンテンツが、意外に需要があるのではないか。
そういったインターネットで簡単にできるようになった面白いことを、NHKのニュース映像「実験」ではないが、どんどん実験していくのが良い。ただ、著作権にかかる問題は、なんとかしてほしいと思う。過去のコンテンツに関しての著作権の問題は、どこかできっちり整理して、デジタル化して再送信するスキームをきちんと作ってほしいと思います。

この議事録はRIETI編集部の責任でまとめたものです。