ワークショップ

Hitotsubashi-RIETI International Workshop on Real Estate Market and the Macro Economy (議事概要)

イベント概要

  • 日時:2014年12月15日(月)9:50-17:00
  • 会場:RIETI国際セミナー室 (東京都千代田区霞が関1丁目3番1号 経済産業省別館11階1121)
  • 開催言語:英語
  • 主催:一橋大学 / 独立行政法人経済産業研究所(RIETI)

プログラム・配付資料

議事概要

オーガナイザーである植杉威一郎(RIETIファカルティフェロー/一橋大学)より、現在進行中の「不動産市場・金融危機・経済成長:経済学からの統合アプローチ」プロジェクトでは、不動産価格動向の的確な把握と不動産市場と経済活動との連関の解明という2本柱で研究活動を進めている点、本ワークショップはそれぞれの柱に係る現時点での研究成果を報告・議論し、今後のより活発な研究活動に役立てる目的で開催された点を説明した。

基調講演となる第1報告では、David Geltner (MIT)が、米国商業不動産市場に主な焦点を当て、差別化された財である不動産市場の特徴を概説した上で、不動産価格指数に関する近年の研究の進展状況について包括的な紹介を行った。(1)商業用不動産価格指数には、個別不動産の評価価格や取引価格に基づくものとREITなど株式市場に基づくものが存在すること、(2)取引価格に基づく指数に対象を絞っても、その作成手法にはヘドニック法とリピートセールス法の両方が存在しており、それぞれに長所・短所があることなどが示された。

第2報告では、清水千弘(麗澤大学)が、消費者物価指数(CPI)の重要な構成要素である家賃の名目硬直性の有無を検証するとともに、不動産価格指数の望ましい計測方法を検討するという2点に係る報告を行った。特に、家賃の名目硬直性については、民間企業が蓄積した膨大な家賃情報を用いて算出したヘドニック新規家賃価格指数と、総務省の消費者物価指数における家賃の動きには大きな違いがあることが示された。

第1報告と第2報告への討論では、Yongheng Deng (NUS)が、不動産市場とマクロ経済は担保チャンネルによってリンクしており、市場の動向を知る上で不動産価格指数の改善は非常に重要であるという認識を示した上で、計測方法の選択が不動産価格指数の動向に影響するのではないか、仮に影響するのであればどの推計方法を採用すべきなのか、さらに、どの情報を用いるべきなのか、といった観点から議論を行った。

第3報告では、内田浩史(神戸大学)が、保有不動産の価値が企業の資金調達に与える影響に注目し、担保チャンネル(collateral channel)の有無についての実証結果を示した。具体的には、2011年3月に発生した東日本大震災前後の保有不動産の価値毀損が企業の資金調達活動に及ぼす影響に注目し、土地や有形固定資産に関する被害額が大きいほど、企業の借入確率は低下することを示した。

第3報告への討論では、渡部和孝(慶應義塾大学)により、土地に対する被害は外生的と考えてもよいのだろうか、Kiyotaki and Moore (1997)が想定するような「地価の下落→担保価値の下落→資金制約の強化→投資の減少→地価の下落」という経路を踏まえて土地の被害額が計上されているのではないか、等の指摘がされた。

第4報告では、小野有人(みずほ総合研究所)が、2000年代における日本の家計のポートフォリオ選択について特に住居用不動産と株式保有の関係に着目した報告を行った。2000年から2010年における都市部を対象とした家計調査である「日経RADAR」を用い、家計の株式保有の決定要因を調べたところ、住居用不動産が総資産に占める割合が高い家計ほど、株式を保有する確率が低い。これは、住居用不動産の保有や住宅ローン負担に伴い生じる流動性制約により、家計の株式保有が抑制されるという仮説と整合的である。

第4報告への討論では、平形尚久(日本銀行)から、流動性制約が生じるために家計の株式保有が抑制されていると言うためには、住居用不動産の流動性の低さを示す必要がある点、家計の株式保有が抑制されている背景には流動性制約以外の別の理由も考えられる点などが指摘された。

第5報告では、植杉威一郎(一橋大学)が、不動産市場が企業行動に影響を与える経路として銀行貸出チャネルに着目し、不動産価格が銀行貸出に与える影響を実証する報告を行った。リーマンショックを含む時期において、銀行ごとに異なる不動産価格ショックを特定し、これが銀行の自己資本や貸し出しに与える影響を検証した。公示地価で計測した不動産価格の上昇は、銀行の自己資本比率を上昇させるだけではなく、不動産関係貸出や総貸出の増加をもたらすが、不動産関係以外の貸し出しに及ぼす影響は比較的小さいことが示された。

第5報告への討論では、胥鵬(法政大学)から、推計結果の頑健性に関する確認の必要性と、不動産担保ローン比率と地価に関した動的パネル分析など補足的な分析の可能性、公示地価と取引価格のいずれを不動産価格として用いるかについての掘り下げた検討の必要性などが指摘された。