国際ワークショップ

イノベーションの科学的源泉を探る:今後のイノベーション政策への含意 (議事概要)

イベント概要

  • 日時:2014年3月17日(月)10:30-17:45
  • 会場:文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室(16B)(〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-2、中央合同庁舎第7号館東館16階)
  • 概要

    この国際ワークショップは、イノベーションの科学的源泉を探り、今後のイノベーション政策への含意を得ることが目的である。午前の部では、「科学をイノベーションに活用する:政策と研究への課題(Capitalizing on science for innovation: policy issues and research agenda)」をテーマに、イノベーションの経済学の世界的な第一人者であり、ニュージーランドのMotu Economic and Public Policy Researchの所長でもある、アダム・ジャッフィー教授に基調講演を行っていただいた。

    午後の部では経済産業研究所、科学技術・学術政策研究所および一橋大学イノベーション研究センターで現在進められているイノベーションの過程に関する3つの共同研究プロジェクトから発表があった。セッション1("Science sources of industrial innovations")では発明者や製薬に注目し、産業イノベーションの科学的源泉を探る2つの研究成果の発表があった。また、セッション2("Bridging science to innovations")では、日米の科学者に対する質問票調査や産学共同研究を行った研究者に対する質問票調査を通じて、サイエンスにおける成果をイノベーションにつなげるプロセスを探る3つの研究成果の紹介があった。

    アダム・ジャッフィー教授からのコメントがあり、本分野の研究者や文部科学省や経済産業省の政策担当者も参加して、政策のための教訓や今後の研究課題を探った。総勢で約100名の参加があった。

    アダム・ジャッフィー教授の基調講演の結論

    サイエンスの経済的な便益の分析を行うことはサイエンスの破壊につながると主張する科学者も存在するがそれは誤りだと考える。サイエンスを行うこと自体に人類への貢献があるとの主張は、サイエンスが経済的な利益をもたらす可能性がある場合にはこれを必ず実現するようにすべきだとの主張には矛盾はないからである。

    他方で、イノベーションへの貢献を証明できないサイエンスには政府の資金をつけないとの主張は、サイエンスがいかなる商業的な利益をもたらすかの予見ができない以上、サイエンスもイノベーションも阻害することにつながる。

    科学技術イノベーション政策の科学においては、理論だけではどのような政策が有効であるかの結論を得ることはできない。理論は、どれだけの予算、どのような組織、どのような制度が良いかの結論を示唆することはできない。現実にどのようにこれらが機能をしているかを理解することが必須であり、そのような実証研究は国毎にやっていく必要があろう。

    結論をまとめれば以下のポイントとなる。

    1. イノベーションについて考えることは、サイエンスの地位を下げることにはならない。
    2. 理論のみでは有用な結論は得られない。
    3. イノベーション・システムの考え方はある国における政策からの経験が他国に容易には移転できないことを示唆している。
    4. 国毎のマイクロな実証分析が不可欠である。
    5. 気候変動と所得の不平等という関連した問題にも注力していく必要がある。