RIETI/GRIPS ワークショップ

公的研究機関とイノベーション

イベント概要

  • 日時:2014年1月20日(月)
  • 会場:RIETI国際セミナー室(東京都千代田区霞が関1丁目3番1号経済産業省別館11階1121)
  • 共催:独立行政法人経済産業研究所(RIETI)・政策研究大学院大学(GRIPS)

開催報告

RIETIにおいて、「公的研究機関のイノベーションシステムにおける役割」プロジェクト(リーダー:後藤 晃ファカルティフェロー)のワークショップ「公的研究機関のイノベーションシステムにおける役割ワークショップ」が開催された。国研、公設試などの公的研究機関が国のイノベーションシステムにおいてどのような役割を果たしているか、果たしうるかについて活発な議論が行われた。前半では、米国、アジア、日本における公的研究機関の役割についての報告が行われ、後半では我が国の代表的国立研究機関である産業総合研究所、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構の産業連携の担当者を交えてパネル討論を行った。ワークショップにおける報告の概要と成果は、以下のとおりである。

ジョン・ウオルシュ(ジョージア工科大学):「米国のナショナル・イノベーション・システムにおける連邦政府の地研究所の役割」
米国の国研はおよそ700存在し、極めて多様であるが、大学が運営している国立研究所もあり、また大学や産業の研究者が国研の施設を利用して研究しているなど、大学、産業との連携がもともと進んでいた。さらに1980年代以降、国研から民間への技術移転が強調され、CRADAの導入などこれを促進する制度改革が行われた。他方で、NIHでは研究者が特定の医薬企業と結び付くことが問題となり、2005年にコンサルティングは禁止された。

パタラポン・インタラクムナード(政策研究大学院大学):「アジアにおける公的研究機関の2つのモデル」
アジアの公的研究機関は2つのタイプに分類される。第1のタイプ(タイプA)は企業のイノベーション能力を強化することを援助する研究機関で、第2のタイプ(タイプB)は企業に成り代わって自らが技術的能力を強化しようとするタイプである。タイプAには日本の産総研、台湾のITRI、韓国のKISTが、タイプBにはタイのNASDAのようなアジアの多くの国研が含まれる。タイプAは企業のキャッチアップを効果的に助け、学習志向の国のイノベーションシステムの欠かせないアクターになっているのに対し、タイプBはキャッチアップに後れを取った弱い、分裂したイノベーションシステムの中にある。

鈴木潤、塚田尚稔、後藤晃(政策研究大学院大学):「日本のイノベーションシステムにおける公的研究機関の役割;産総研、理研、JAXA」
この研究では、産業技術総合研究所、理化学研究所、宇宙航空研究開発機構の3つの公的研究機関に注目し、それらの機関から生み出された特許について、大学、民間企業と比較しつつ、民間企業との共同研究の効果などについて分析を行った。産業総合研究所、理学研究所、大学の特許は、企業の単独研究による特許と比較すると、技術的価値を表す発明者前方引用や知識波及の広さを表すジェネラリティーの指標が高い特許が比較的多い。公的研究機関と民間企業の共同研究と民間企業同士の共同研究を比較した場合も、産総研や大学は、共同研究によって発明者前方引用やジェネラリティーが高い特許を生み出している傾向にある。一方で、大学発の特許は、これらの指標でみた意味でのパフォーマンスが2000年代に入ってから低下傾向にあることが指摘された。

後半のセッションでは濱川聡(産業技術総合研究所)、前川治彦(理化学研究所)、三保和之(宇宙航空研究開発機構)の3氏からそれぞれの研究所におけるイノベーション促進活動について報告が行われた後に、我が国の公的研究機関の在り方を巡って活発なラウンドテーブルディスカッションが行われた。

議論は多岐にわたったが、そのなかでも注目されるのは、以下のようなポイントである。1)キャッチアップ段階と、フロンティアに達した後とで公的研究機関の役割は変化すべきか。キャッチアップ後は公的研究機関の役割は、産業育成から国防、環境、医療・健康あるいは基礎研究などの公的なミッションに重心が移る、という一般的な考え方がある。これに対して、米国では公的研究機関は多様で、さまざまな目的を持った者が広く存在していること、また、むしろ1980年代以降は産業への貢献が強調されるようになったこと、が指摘された。また、キャッチアップしたといっても、すべての分野についてすべての企業が最先端に出たという訳ではなく依然として技術的に遅れている分野や企業(中小企業など)もあるので、そのような分野、企業について依然として公的研究機関が産業に貢献する必要はある、といった意見がだされた。

2)最近の公的研究機関を取り巻く環境の変化のなかで、企業でもオープンイノベーションということが強調されるようになった、という点が重要なものの1つだと思われる。たしかに1企業、1分野だけでは対応しきれない問題が増加しており、そのなかで公的研究機関がハブとして果たす役割はより重要になると思われる。しかし、オープンイノベーションはそれが効果的に進むには知的財産権の管理などそのマネージメント、しくみづくりに慎重な工夫を必要とし、実行上は難しい問題も出てくる、という点が指摘された。