CEPR-RIETI 国際ワークショップ

金融のグローバル化と安定

イベント概要

  • 日時:2007年9月6日(木) 10:00~15:00(受付開始及び開場:9:45)
  • 会場:経済産業研究所セミナー室(経済産業省別館11階1121)
  • 開催言語:英語⇔日本語(同時通訳あり。先着40名)
  • 参加費:無料
  • 主催:Centre for Economic Policy Research (CEPR)、独立行政法人経済産業研究所 (RIETI)
  • お問合せ:石原千恵子
    Tel:03-3501-1375 Fax:03-3501-8416
  • RIETIは欧州屈指の政策シンクタンク、CEPR (Centre for Economic Policy Research)との協力関係の強化を推進しています。その一環として、9月6日に国際ワークショップ「金融のグローバル化と安定」を開催し、CEPRから所長のRichard Portes氏 (ロンドンビジネススクール教授) 、リサーチフェローのPhilip Lane (ダブリン大学教授) 、Philippe Martin (パリ第1大学教授) が来日してプレゼンテーションを行いました。RIETIからは藤田昌久RIETI所長、鶴光太郎、小林慶一郎、Willem Thorbecke上席研究員が議論に参加。さらに吉野直行氏 (慶応大学教授) 、竹内洋氏 (政策投資銀行理事) 、The Economist誌東京支局長Dominic Ziegler氏、経済産業省からは西山圭太産業構造課長、寺澤達也中小企業庁金融課長などが加わり、ラウンドテーブル形式で活発な意見交換を行いました。

議事概要速報版

第1セッション「最近の金融市場変動の動向とその原因」

この20年間、国境を越えた金融資産保有が拡大し、全ての資産分野で価格変動が縮小してきたこと、最近数週間の変動の幅も過去に比べれば、今のところそれほど大きなものではないことなどがデータで示されました。その理由としては、経済の基礎条件 (ファンダメンタル) の好調さ、金融市場の流動性の上昇、金融政策の透明性やコミュニケーションの向上などが考えられます。しかし、こうした変動の縮小傾向は永久に続くかどうかはわからず、スパイク (価格乱高下) の可能性は常に存在し、また市場変動の減少が逆に過剰なリスクテークを促進しているかもしれないということも指摘できます。

さらに、ユーロの創設は資本市場の取引費用を大幅に低減したことや、欧州外の企業にとっては資本調達コストを上げる「転換効果」が見られたことも実証分析によって示されました。また、米国の金融政策の歴史的な展開を見れば、1980年代初頭、金融政策がインフレを起こさないことに強くコミットして市場の信頼を回復したことが今日の金融市場安定の基礎となっており、その信用を維持することの重要性が指摘されました。

これを受け、ラウンドテーブルでは、日本における金融政策の評価やヘッジファンドは金融安定化に寄与しているのかどうかが議論されるとともに、安定性の低下はリスクマネーの供給を縮小し、イノベーションを阻害するといった意見が出ました。

第2セッション「さまざまな地域の金融安定性」

最初に、エマージングマーケットの市場クラッシュの要因に関する実証研究の成果が示されました。それによれば、貿易投資の自由化は市場クラッシュを起こしにくくする傾向がある反面、金融自由化は資本コストを下げ高い投資をもたらすが市場クラッシュ・資本逃避のリスクを高めるという二律背反的な側面があります。第2にユーロ導入以降の、欧州金融市場の変化が報告されました。ユーロボンド市場の規模は2005年以来、米国市場を凌駕するに至っており、欧州における間接金融中心の金融システムが資本市場中心に大きく構造変化しました。近年の欧州の大規模なM&Aもこうした構造変化なくしては考えられません。

ラウンドテーブルでは、市場クラッシュを少なくする要因には貿易投資自由化以外にもさまざまなものがあり得、今後の研究テーマとしても重要であることが認識されました。また、グローバルな流動性の上昇が欧州における地価上昇を招いたかについては、否定的な見解が示されました。

第3セッション「グローバルな金融市場の展開の政策的意味」

先ず経常収支不均衡の調整シナリオの経済モデルによる影響分析が取り上げられ、ドル急落を伴うハードランディングシナリオの下で、資産効果を通じて日本と中国にGDPの16-17%以上の資本損失が生じる (他方でヨーロッパの損失は小規模) が、GDPへの影響は軽微との報告がありました。また、キャリートレードは為替変動によって大きな影響を受け、その場合投資家に損失は避けられないものの、グローバルな金融市場の安定性を脅かすには至らない、さらにヘッジファンド自体の損失は金融システム全体には及ばないが、資金供給している銀行へのリスク波及については不透明性があるとの見方が示されました。全体として、現時点で大きく金融市場が動揺する実体的な要因は少ないが、政策当局が市場の信頼を維持できるかがカギとなるという認識も示されました。

これに続くラウンドテーブルの議論では、ドルの為替変動については貿易投資で密接に関連するアジア全体とドルとの関係を考える方が有益であると指摘され、また、日中外貨資産の多様化は必要だが、ドル資産の大規模な売却は短期間にはドル急落を招き逆効果であること、ヘッジファンドに対するバランスのとれた見方は歓迎されるが規制への政治的圧力が強まっていることなどが議論されました。

総括

RIETI藤田所長は締めくくりとして「今日のワークショップでは、日本国内の議論だけでは得られない貴重な意見交換ができた。来年には欧州で、日本からの見方、研究成果について説明して議論する機会も設けたい」と述べ、CEPRとのさらなる関係強化に向けた意欲を示しました。CEPR所長のPortes氏もRIETIとパートナーとして研究協力を行っていくことを表明してワークショップを閉会しました。

握手を交わすRichard Portes CEPR所長 (写真右) と藤田 昌久RIETI所長
【握手を交わすRichard Portes CEPR所長 (写真右) と藤田 昌久RIETI所長】