政策シンポジウム他

京都議定書とその実施─合理的政策選択としての地球環境対策をめざして─

イベント概要

  • 日時:2002年3月19日(火)10:00~18:00
  • 主催:RIETI
  • 基調講演1

    マイケル・トーマンマイケル・トーマン氏(リソース・フォー・ザ・フューチャー/シニアフェロー)、ローレンス・グルダー氏(スタンフォード大学教授)の両氏は、基調講演のなかで地球温暖化対策をすすめる上で、経済効率性・実現可能性を重視する必要があると述べた。

    両氏はともに、米国の京都議定書からの離脱を批判する一方、京都議定書そのものについても欠陥があることを指摘、より効率的かつ政治的に許容できる地球温暖化防止のメカニズムの構築をめざすべき、との見解を述べた。

    トーマン氏は、温暖化ガス排出量削減を過剰に重視し「短期間に大幅な削減」を義務付ける京都議定書に対し、「意図的な、しかし漸進的なアプローチ」の方がより好ましい選択であることを強調。温暖化ガス排出を抑止・削減するためには、環境と経済のバランスを考慮し、経済的インセンティブを利用した経済効率の高い政策を設計することが不可欠である、と述べた。このようなアプローチをとることで見当違いな政策への資金投入を最小限にとどめ、温暖化対策技術の開発により多くの時間を費やすことができる、とした。

    一方で、トーマン氏は、技術だけで問題解決できないとし、技術開発・利用を促す政策やインセンティブの重要性を指摘した。

    米国政府は先日、二酸化炭素排出抑制技術の開発と利用を促す優遇税制を含む温暖化対策を発表したが、想定する温暖化ガス削減目標が京都議定書で課されたレベルをはるかに下回るため、非難を受けている。しかしトーマン氏によれば、米国案の根本的な問題は削減目標の低さではなく、むしろ確実な削減を担保するメカニズムの欠如にある。

    「初期段階における控えめな削減目標設定は、経済的に正しい選択であると言えます。むしろ問題なのは、排出削減が確実に実行されるであろうと確信するに値するメカニズムが何ひとつ示されていないことです」(トーマン氏)

    米国は、たとえ控えめであっても2006年までに確実に実行する削減目標を設定し、仮にその目標が達成されないときは強制的政策を実施することを現時点で約束するべきだ、と述べた。

    目標達成のための具体的な施策について、トーマン氏は、排出削減の上限(キャップ)を決め、取引可能な許可排出量を、エネルギー産業など地球温暖化対策による負担が極めて大きい産業の痛みを緩和するかたちで配分する「キャップ・アンド・トレード」システムの導入を提言した。

    京都議定書における義務履行期間が終了する2012年以降を視野に入れた長期的課題について、トーマン氏は、途上国参加の必要性を指摘し、この点において米国の強行的なアプローチは実効性に欠けると批判した。

    「時間の経過、経済発展、生活水準の向上、経済効率性の改善を経てはじめて、途上国はわれわれ先進国がやろうとしているような長期的な排出削減目標を受け入れられるということを認識することが必要です」(トーマン氏)

    一方、途上国の側も、政治的に先進国がとうてい受け入れようもないような先進国から途上国への所得移転の要求を辞めるべき、と主張した。

    締めくくりに、トーマン氏は、米国および他のすべての諸国はともに、地球温暖化対策のメカニズムを再考すべきとし、以下のように述べた。

    「米国はもっと積極的な姿勢で臨むべきです。京都議定書から離脱するのではなく、このプロセスにおけるリーダーシップを取り戻さなければなりません。しかし、一方で、米国以外の先進国・途上国も、過去10年におよぶ経済的研究が提示する見識を真剣に受け止めるべきです。その見識とは、長期的な問題は長期的な問題として扱われなければならない、つまり、徐々に、効率よく、そして確実に進む方法で対処しなければならない、ということです」(トーマン氏)

    基調講演2

    ローレンス・グルダー引き続いて基調講演を行ったグルダー氏は、トーマン氏の見解に同意を示すとともに、エネルギー費用の増大やエネルギー供給・需要産業における利益減少などをもたらす地球温暖化対策をいかにして政治的に受け入れられやすいものにするかについて見解を述べた。

    グルダー氏は、経済効率性の観点で最も有効な排出削減策として、炭素税、または二酸化炭素排出権取引を挙げた。

    「化石燃料を購入する際、その燃焼による社会的なコストは購入者に転嫁されません。つまり、社会的な観点からいえば、化石燃料の価格は過少に設定されており、その結果、化石燃料への過剰依存をもたらしているわけです」(グルダー氏)

    米国政府が提示した温暖化対策については、炭素税のような価格インセンティブを使うアプローチを拒否し、補助金と自主的削減努力を強調するもので、成果は期待できないとする一方、エネルギー産業を強力な支持基盤とするブッシュ政権にとっては、ある意味でごく自然な選択である点も指摘した。

    技術開発補助を中心とするアプローチは、「無駄が多く、経済的に非効率」とし、社会全体で負担するコストを最小限にとどめながら環境政策をすすめるには、炭素税または排出権取引のようなエネルギー産業の上流部門に働きかけるような政策が必要であり、その政策を政治的に受け入れやすくすることは可能である、と述べた。

    具体的には、温暖化政策による痛みが顕著な業界に対し、ある一定の排出権を無料で与える「グランドファーザリング」という手法を挙げ、必要に応じて法人所得税減税と組み合わせて実施することを提言した。

    このような施策を採ることで、エネルギー生産業者およびエネルギー集約産業など最も痛みが大きいであろうと思われる企業が、自らの利益を損ねることなく二酸化炭素排出削減にむけて努力できる、と述べた。

    このような施策は政府にとっては歳入を犠牲にすることを意味するが、グルダー氏によれば、その規模は最小限で済むという。

    「日本や米国、その他の先進国が炭素税または取引可能な排出権の分配で得られる収入の規模を考えれば、エネルギー産業の上流・下流部門の業界の利益保護に必要な費用は、その10、15、または20%程度の僅かなものです。もちろんこれで確実に政治的に受け入れられるというわけではありませんが、少なくとも、その可能性は高くなるはずです」(グルダー氏)

    一特定業界に対して損失補てんすることの是非については議論の余地があるとしながらも、グルダー氏は、温暖化対策を現実のものにするためにはある程度の補償制度を考案する必要がある、と述べた。

    パネルディスカッション

    会場風景世界第2位の温暖化ガス排出国である中国をテーマにしたパネルディスカッションでは、胡鞍鋼氏(清華大学教授)から、過去5年間、高い経済成長率を維持しながら二酸化炭素排出量を抑制してきた中国の状況についての説明があった。

    胡氏によれば、第9次五カ年計画期間(1995-1999)における中国の国内総生産(GDP)の伸び率は年平均8.3%となり、第8次五カ年計画の12%より低下したが、歳入の伸び率は年率3.4%から14.7%に大幅に上昇した。

    エネルギ-生産の伸び率は、第8次計画における4.4%から第9次計画のマイナス3.3%、石炭生産は4.27%からマイナス6.0%、エネルギ-消費は5.9%からマイナス0.5%と、それぞれ上昇から減少に転じた。

    「エネルギ-効率が改善し、石炭消費が下がりました。その結果、二酸化炭素排出量は1990年代初めに予想されていたより大幅に低いレベルにおさまりました」(胡氏)

    胡氏は、中国が過去5年間に量産を基盤とし工場中心の成長パターンから質の高い技術・知識集約型の成長パタ-ンへ移行した結果、高成長、低エネルギ-消費、二酸化炭素排出量抑制が達成された、と説明した。

    また、その際、政府が主導的な役割を果たしたことを指摘、ひたすらGDPの上昇をめざした過去の政策スタンスから環境と経済成長のバランスをとろうとする姿勢への転換が産業構造転換に大きく寄与したと述べた。

    産業転換をはかり、二酸化炭素排出量を抑制するという強力な政治的意思が表明され、二酸化炭素排出量を2010年に1995年レベルまで抑制、数種類の汚染物質を5~10%削減、今期五カ年計画中にGDPの1.3%を環境保護政策に向ける(前・五ヵ年計画では0.93%)など、中国政府の意欲的な目標と取り組みを紹介した。

    目標達成のために、中国が市場メカニズムを利用しようとしている点にも言及、計画経済から市場経済への移行の過程で、エネルギ-集約型経済構造から経済効率を重視する経済構造への転換を図る上でも市場メカニズムが重要であると指摘した。

    中国政府は引き続きエネルギ-構造の改革に努め、石炭から石油・天然ガスなど、より害の少ない燃料への転換を推進、省エネ・環境技術を積極的に取り入れていく計画であると述べた。

    市場メカニズムをより有効に利用するための手段として、政府は、石油・ガスの輸入関税をゼロにし、政府による石油輸入の独占廃止、環境技術・設備の輸入関税の低減または無関税化を掲げていると指摘。さらなる手立てとして、胡氏は、中国政府は二酸化炭素排出権取引を開始し、日本からの技術移転など、より多くの海外援助を求めるべき、と提言した。

    「中国は二酸化炭素排出量削減に向けた国際的努力に参加したいと思っています。世界第2位の排出国として二酸化炭素排出量を削減しようとする強固な政治的意志を持っています。過去5年間は、それをやり遂げられるという自信を与えてくれました。次の5年間が中国にとって、世界にとってより多くのいいニュースをもたらしてくれることを祈っています」(胡氏)

    胡氏の報告に対し、岡松壮三郎氏(経済産業研究所理事長)は、京都議定書は先進国にのみ温暖化ガス排出削減努力を課すものであるが、途上国の参加なしに地球の大気を守ることはできない、と述べた。

    特別な政策を講じない(ビジネス・アズ・ユージュアル)ことを前提にすると、2100年における途上国の温暖化ガス排出量だけで1990年の全世界排出量の2倍に上るとの推計を紹介した。

    途上国における将来の人口増加や生活水準の上昇を考慮すると、排出量削減は先進国以上に困難かつ政治的抵抗も大きいと指摘、先進国にとっては経済効率のいい排出量削減手段、途上国にとっては海外からの援助を得て先進的な省エネ・環境技術を導入する手段としてのクリーン・ディベロップメント・メカニズム(CDM)の重要性を強調した。

    「中国においても今後さらなる経済発展をしていく過程で環境政策が伴わなければならないということです。環境配慮型開発への転換を促進するというのがCDMの活用上、大事になってきます」(岡松氏)

    日本は京都議定書で6%の削減義務を負っているが、これは地球規模の削減効果で考えるとわずか0.03%に過ぎないにもかかわらず、この削減目標を国内のみで達成しようとした場合、GDPを1%押し下げることになる点を指摘。日本や他の先進諸国がCDMを活用して途上国の二酸化炭素排出を削減すれば、先進国・途上国ともに恩恵を受けると述べた。

    「私は、CDMはプラス・サム、ウィン・ウィン・ゲームとして地球環境政策に貢献できるという認識をもっています。この認識を多くの国が持って先進国と途上国で協調を進めていくべきです」(岡松氏)

    小谷勝彦氏(日本鉄鋼連盟地球環境委員長)は、今日の中国と1950年代、60年代の日本の類似性を指摘、中国の国民一人あたりのGDPが900ドルとなっているが、これは、粗鋼生産がアップし、公害が顕在化した高度経済成長期当時の日本の国民一人あたりのGDPとほぼ同じレベルであると述べた。

    中国では今後、粗鋼生産が増大すると予想され、その過程で公害問題が顕在化する可能性があるとの見解を示した。

    中国の鉄鋼業が生産性で大きく躍進しながらもコ-クス・ドライ・クレンジング、トップ・プレッシャ-・リカバリ-・タ-ビン、オフ・ガス・リカバリーなど廃熱利用技術の利用は進んでいないと指摘、エネルギ-効率改善の余地は大きいと述べた。

    しかし、環境関連プロジェクトは採算性に問題があり、民間ベースの投資は困難との見解を示し、政府開発援助(ODA)など政府による資金面の援助が必要とした。

    「日本の持つ環境技術は、中国における環境と経済のバランスある発展のために大きな力を発揮できると自負しています。我々の持つ技術をいかに早くトランスファーするか、そしてどうやってそれをCDMに実現していくかが重要です」(小谷氏)

    小谷氏は、この点について、CDMにつながるようなあらたなODAの枠組みをつくること、さらに日中政府がCDM具体化に向けた枠組み交渉を始めることが重要との見解を述べた。

    久留島守広氏(新エネルギー総合開発機構主幹研究員)は、海外で実施されたジョイント・インプリメンテ-ション(JI)のための基礎調査プロジェクトを紹介、メキシコにおける省エネ・バスの導入(三菱電機)とタイにおける交通渋滞緩和(自動車工業会)を成功例として挙げた。

    1997年に実施されたメキシコのプロジェクトでは、三菱電機は輸出の機会、当時の日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)は融資機会、メキシコ政府は先進的な省エネ・バス導入という恩恵を得たとし、CDMプロジェクトがウィン・ウィン・ゲームとして機能しうることが示された、と述べた。

    桝本晃章(経済団体連合会地球環境部会長)は、中国のエネルギー政策を評価する一方、将来にわたって改善傾向を続けることの難しさを指摘、東京におけるヒート・アイランド現象を例に、都市化とともに温暖化が加速される可能性について懸念を示した。

    「日本がかつて、20年、30年前に犯したエネルギ-消費と環境という面での過ちを繰り返さない余地が中国にはまだある。政策的にぜひ配慮いただきたいのはエネルギ-の転換効率がきわめて高い社会づくりをしていただきたいということです。住宅、ビル、町並み、道路のあり方、交通体系という生活環境自体を省エネ型にしていく・・・、これは我々も再開発でやっていくが中国もできることです」(桝本氏)

    桝本氏は、このような都市開発プロジェクトをCDMにリンクさせていくためには、エネルギ-の需要側でどのようなエネルギ-削減効果が得られたかをしっかりと評価する仕組みが必要であると述べた。

    さらに桝本氏は、片やODA資金で開発を促進し、開発の結果増大した温暖化ガスを削減すべく環境プロジェクトにさらなるODA資金を注入しようとしていると指摘、ODAがマッチ・ポンプ化していると懸念を表明するとともに、前向きなODAのあり方を検討すべき、と述べた。

    ワークショップ1

    草川孝夫ワ-クショップ1では、草川孝夫氏(経済産業研究所グラジュエ-トリサ-チアソシエイト)と大河原透氏(電力中央研究所上席研究員)が排出権取引の実験結果を紹介した。

    実験は、議定書で定められた温暖化ガス排出削減義務を効率的に達成するため、排出権取引制度をどのように設計すればいいか明らかにすることを目的とする。

    草川氏は、「相対取引」と「オ-クション」、「売り手責任」と「買い手責任」、京都議定書遵守を優先する「京都先」と個別売買契約における相手国への義務履行を優先する「国先」など、異なるルールと条件を与えて60回近くの排出権取引実験を実施、その経済効率性を比較分析した。

    大河原氏は、日本の9電力会社に似た仮想電力会社を想定して国内における排出権および卸売り電力の取引実験を2回実施、その前提は各取引とも2012年で期間が一度終了し、その後グレ-ス・ピリオドを設けて不履行の罰金を支払うか他の取引参加者から不足分を調達するものとした。
    (実験の詳細および結果については各調査報告書参照)

    ワークショップ2

    会場風景ワ-クショップ2では、京都議定書後のメカニズムについて議論された。

    まず、斎藤浩氏(経済産業研究所上席客員研究員・総合司会)が新たな温暖化防止制度を設計する上で、1)途上国と米国のインボルブメント(参画)、2)制度そのものと経済発展のサステイナビリティ(持続可能性)、3)参加の拡大とサステイナビリティを可能にするための柔軟性が重要と指摘した。

    京都議定書では、サステイナビリティを重視、途上国は法的拘束力のある削減義務を負わず、先進国は各国異なる削減義務を負い、それを達成するための国内制度については各国の裁量にまかせることになったが、その結果生じるすべての矛盾は京都メカニズムというフレキシビリティ・メカニズムに押し付けられた、と述べた。

    京都議定書のディ-プ・ゼン・ブロ-ド・アプロ-チのもと意図的に不十分な状態におかれたインボルブメントをどうやって拡大するかが、議定書後の新たなメカニズムを設計する上で重要であり、そのためには、各国ばらばらではなくより統一されたアクション、より平等な負担配分、フレキシビリティ・メカニズムの財政援助機能拡充を図ることが必要との見解を述べた。

    ボ-ム氏は、国際排出権取引の効率性を高めるためにも、途上国に有利な制度を構築することで途上国参加を促すべきとし、専売あるいは専買による市場独占の弊害は少ないとの見解を示した。

    CDMについては当面の必要性を認めるものの、ホスト国・投資国ともに排出削減量を不正に多く報告するインセンティブが働くという問題点を指摘、なるべく早い段階で排除されるべき、と述べた。

    また、経済効率制を高めるためには、コミットメント・ピリオド・リザーブなど排出権取引を制約する要因を取り除き、さらに、一定限度までのボロ-イング(将来の排出権借入れ)を認めるべきとの見解を示した。

    安本皓信氏(地球産業文化研究所参与)は、京都議定書の大きな欠陥として、削減義務を達成するための国内制度について基準を設けず自主性に任されている点を挙げ、その結果、モラル・ハザ-ドを誘引し、効率性と遵守の確実性について問題が出てくる可能性を指摘した。

    炭素税やCDMは、排出削減量そのものを約束するものではなく、具体的な削減目標を義務付けた京都議定書にそぐわない、と述べた。

    その上で、桝本氏は、効率性と遵守を確実なものにするためには、途上国を含むすべての国に排出許容量を割当て、それをベースに排出の絶対量を取引する排出権取引制度を構築すべきとした。

    モニタリングについては、たとえば排出権のない化石燃料は輸入させないなど、モニタリング・ポイントをなるべく上流に置くことでリアルタイムに遵守条件をチェックできる、と述べた。

    引き続き行われたディスカッションでト-マン氏は、CDMを早期に廃止すべきとしたボ-ム氏の見解に言及、CDMの欠陥について認めながらも先進国から途上国への相当規模の所得移転を可能にする手段として必要、との見解を示した。

    「このような所得移転は途上国参加を拡大するためにかなりの規模にならなければいけない。しかし、それが政治的にあからさまで痛みを伴うものであるとすると、たとえ効率性に劣り、ある意味で不明朗なものであるとしても、しばらくの間はCDMから離れられないのではないでしょうか。ひもつき所得移転が政治的にも戦略的にも要求される不完全な世界で途上国参加拡大と持続的発展を達成するための唯一の手段ではないかと思います」(ト-マン氏)

    桝本氏は、ト-マン氏の見解に賛意を示すとともに、現時点においては排他的に考えるのではなく、CDMを含めたあらゆる選択肢を用いることが重要と述べた。

    岡松氏も同様に、途上国参加をめぐる政治的な難しさを指摘、国際政治の妥協の産物として出来上がった制度とはいえ、途上国参加の道を開いたCDMが現時点では正しい選択であるとの見解を述べた。

    ボ-ム氏は、途上国が参加をしぶる理由は、温暖化問題を引き起こした先進国がまず罰せられるべきとの考えによるとした上で、そうした議論は逆効果であると批判した。

    米国の京都議定書復帰の可能性についてグルダ-氏は、ブッシュ政権が石油・エネルギ-産業に強い支持基盤を置いていること、また、より大きな犠牲を受け入れるよう政府に圧力をかけるところまで米国民の温暖化への関心が高まっていないことを指摘、やや悲観的な見解を示した。

    「米国は、いずれにしてもこの先10年、コミットメントを高めることになると思います。ただし、そのことと京都プロセスがどういう形でつながるかということについては、答えを持ち合わせていません。」(グルダ-氏)

    ト-マン氏は、グルダ-氏よりも冷淡な見方をしていると述べ、環境問題で世界を先導していたはずのクリントン政権内にいたときのフラストレ-ションについて語った。

    「1997年、ゴア副大統領ははるばる京都にかけつけて交渉の行き詰まりを打破しましたが、彼がコミットしたのは彼が2008年にホワイトハウスを去っているであろう後に発効する目標なのです。民主党を見ても共和党を見ても、楽観的になれる要素は見当たりません。米国民が温暖化の脅威を深刻に受け止めるまで、エネルギ-価格の上昇やむを得ず、と思うところまで深刻に受け止めない限り、大きな進展は望めません」

    以上(文責:名島光子)