「グローバル・ニッチトップ企業」に続け! 元気な中小企業

細谷 祐二 コンサルティングフェロー

経済産業研究所は、昨年夏に、企業として独立性が高く、競争力のある独自製品や加工サービスを提供するものづくり中小企業、すなわちニッチトップ型企業の全国調査を行った。その調査により興味深いファクトファインディングが多数得られた。その中で、特筆すべき新発見は、回答企業の約1/3と多数を占める「揃い踏み企業」という一群の存在である。名前の由来である国の三つの施策を全て使っているだけでなく、大学であれ取引先であれ利用できる外部資源の活用に貪欲ともいえる元気な中小企業である。こうした積極性もさることながら、注目されるのはその誕生に産業クラスター計画をはじめとする国の働きかけが大きな役割を果たした可能性が高いということである。

「ニッチトップ型企業」という共通の特徴を有する優れた中小企業

詳細はディスカッション・ペーパー「グローバル・ニッチトップ企業に代表される優れたものづくり中小・中堅企業の研究―日本のものづくりニッチトップ企業に関するアンケート調査結果を中心に―」(13-J-007)を参照いただきたいが、ニッチトップ型企業(NT型企業)2000社を対象にアンケート調査を行い、663社から回答を得た。

NT型企業は、従業者数97人、売上高23.5億円、従業者1人当たり売上高2070万円という平均像である。定量的、定性的な膨大なデータの解析から、一般中小企業とは明らかに異なる企業群であることが統計的に実証された。ものづくり中小企業全体の平均に比べ、規模が大きく、生産性、利益率等のパフォーマンスもよい「優れた中小企業」群である。創業年の平均は1962年であり、長寿企業も多数含まれている。

NT型企業は、これまで中小企業庁の「元気なモノ作り中小企業300社」をはじめ全国の自治体や商工会議所が地域の優れた中小企業として熱心にPRしてきた存在である。そのため、ともすれば、他の企業との違い、ユニークさが強調される傾向にあった。しかし、やる気と能力のあるこうした中小企業には、業種・業態、社歴、規模が異なっていてもいくつかの特色のある共通点がみられる。

「グローバル・ニッチトップ企業」という特に優れた中小企業

こうしたNT型企業の特徴を典型的に備えパフォーマンスにも相対的に優れる代表選手がグローバル・ニッチトップ企業(GNT企業)(注1)である。その最大の特徴は、1)ユーザーがこの企業に相談すればなんとかしてくれると期待する「評判」を確立し、ニーズを持ち込んでもらえること、2)ソリューションを出す時に協力してくれる関連企業や大学との独自のネットワークを長年にわたり築いていることである。また、高い市場シェアを維持するため模倣されない工夫を尽くしていること、製品の高い競争力を背景に輸出からはじまり自然体で海外展開を行っていることも重要な共通点である。

GNT企業の平均像は、従業者数111人、売上高27.6億円、従業者1人当たり売上高2390万円とNT型企業の平均をいずれも上回っている。創業年は平均で1959年と50年以上の社歴を有し、NT型企業の平均よりも更に古い。

「揃い踏み企業」という前向きで元気一杯な中小企業

さて、本題の揃い踏み企業であるが、大相撲の「三役揃い踏み」になぞらえて筆者が命名した造語である。アンケート調査では、技術開発補助金の採択、経営革新支援法の経営革新計画等の法律上の認定の取得、「元気なモノ作り中小企業300社」への選定という3つの中小企業向け施策を取り上げて尋ねている。揃い踏み企業とは、これらを全て利用している三施策揃い踏み企業という意味である。

揃い踏み企業は、創業年は1961年とNT型企業の平均より1年古いものの、従業者数88人、売上高22.1億円、従業者1人当たり売上高2010万円と平均をいずれも下回っている。更にGNT企業と比べると若くて、かなり小さい企業である。異常値を補正した利益率でもNT型企業の平均を若干下回り、GNT企業にはかなり水をあけられている。海外売上高比率が10%未満の比率が74.9%と高く、かなりドメスティックな企業が多いことがわかる。GNT企業の値はちなみに45.1%である。

しかし、国の技術開発補助金の利用では、採択回数4回以上という最多選択肢の割合が40.5%とGNT企業の40.8%と並び、多頻度利用主体として際立っている。また、足りない技術の最重要の入手先として大学等研究機関を挙げた比率が31.0%と突出して高くNT型企業の平均17.3%を大きく上回っている。産学連携に極めて熱心といえる。これに対し、GNT企業はこの値が9.8%と低く、産学連携よりも企業間連携を重視する傾向が強い。しかし、揃い踏み企業は詳しい解析を行うと、産学連携だけでなく企業間連携においてもGNT企業に匹敵する積極性があることが確認される。さらに、揃い踏み企業は全体として海外売上高比率の低い企業が多い中、一部海外展開の進んだ企業に限ってみると、GNT企業よりもむしろ海外販売拠点の設置に熱心であることもわかった。

産業クラスター計画に刺激され覚醒した「揃い踏み企業」

定義から当然である施策をはじめおよそ外部資源の活用にここまで熱心な揃い踏み企業の驚くべき積極性はどうして生まれたのだろうか。

アンケートに先立つヒアリング調査によると、GNT企業であっても補助金等の施策の利用を本格化させるのは1990年代末から2000年代はじめである。2001年からスタートする産業クラスター計画では、地域ブロック機関である経済産業局の職員が優れた中小企業を関係機関の職員とともに訪問し、政策ニーズの把握、公募事業の情報提供に加え、必要に応じ補助金の申請書の書き方指導等きめ細かい支援を行った。国がはじめたこの支援手法は、自治体や民間団体に受け継がれ全国各地で定着しつつある。中小企業も最初はとまどいが大きかったが、国や自治体の施策を外部資源の1つとして活用することに習熟してきたとみることができる。揃い踏み企業群の形成はおそらくここ10年強の現象であり、国の働きかけが一定の役割を果たしたことはまず間違いない。その限りにおいて国の政策は効果があったといえる。

元気だけでは足りない「GNT企業」への道

ディスカッション・ペーパーでは、GNT企業を成功企業、揃い踏み企業をその候補企業として必要な政策的支援を詳しく論じている。コラムということで個人の見解を大胆に述べれば、揃い踏み企業がGNT企業になる道は決して平坦ではない。多くの質問項目から、揃い踏み企業は施策活用に熱心だが、施策が製品開発等成果に結びつく度合いはGNT企業に比べ低く、空回りをしているという可能性が推測される。

今後は、GNT企業の特徴であるニーズをしっかり捉えていること、ソリューションを出すために頼れるパートナーを持っていること、この2つを補助金採択の審査の中でしっかり確認することが必要である。また、企業間連携の経験がGNT企業を育てたことを考えると、例えば大企業をまじえた企業間連携に揃い踏み企業を巻き込んでいく仕組みの構築が必要である。

さらに、揃い踏み企業はいわゆる内弁慶である可能性が高く、海外市場に自社製品を売り込む経験を通じ、真の競争力を磨く必要がある。そのためには、海外見本市という他流試合の場に彼らを直面させ修行させることが最も効果的な方法であると筆者は考えている。

何よりも重要なのは当事者の努力である。揃い踏み企業には自覚を持って意識的にGNT企業を目指してほしい。

2013年4月2日
脚注
  1. ^ GNT企業の定義はアンケート調査上、「競合他社が国内に少ない、独自の製品である『ニッチトップ製品』を複数保有し、そのうちの少なくとも一つは海外市場でもシェアを確保しているNT 型企業」である。

2013年4月2日掲載

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