韓日産業協力のさらなる強化に向けて

司空 穆
ヴィジティングスカラー

最近、韓日の産業協力が非常に発展しており、両国は相互の緊密な協力を通じて、WIN-WINの関係を構築している。したがって、領土や歴史問題などをめぐる外交摩擦が、両国間の経済や文化など他の分野に悪影響を与えないように、今後双方の新政権が賢明に対処すべきである。

韓日企業は競争と協力関係の中で共存共栄の関係を構築

両国の企業は世界市場で激しく競争しながらも、同時にお互いに緊密な協力関係を維持している。

日本のマスコミは最近、シャープやパナソニックなど日本の薄膜液晶TVおよび半導体分野での業績不振とサムスン電子などの韓国企業の業績好調を比較して報道する傾向が多く見られる。このような報道により、日本国民は韓日両国の企業が激しい競争関係にあるという点だけに注目し易くなる。

しかし、サムスン電子等の成果のかなりの部分は、素材や部品や機械装置関連の日本企業との協力のお陰でもある。そして、サムスン電子等の韓国企業が業績好調の時には、取引先の日本企業も大きな利益を得るということを指摘したい。

すなわち、サムスン電子を始めとする韓国の電子メーカーが携帯電話、LCDなど先端製品を生産するにあたって、日本の機械装置および材料、部品等を多数採用している。

韓国は部品素材分野のみで2010年に243億ドルの対日貿易赤字を記録した(注1)。部品素材分野での世界シェア(2009年)も韓国の4.6%に対し、日本は8.2%とはるかに高い。また、同部門の韓国の対日貿易特化指数(2009年)は-0.50と輸入特化であり、特に素材の場合は-0.59で部品の-0.41を大きく上回っている(注2)。

つまり韓国の場合、一部品目での大きな成果にもかかわらず、部品素材分野の対日競争力がまだ非常に劣っている(注3)。

また、韓国企業は日本からの輸入以外にも、貿易統計にはあまり反映されないが、韓国に進出している日本の現地企業から相当な装置および材料部品を調達している。

最近、日本企業は、東日本大震災以降、いわゆる「6重苦」の克服や、韓国の大型需要者のニーズに迅速に対応するために、積極的に韓国に現地生産拠点を構築あるいは拡張している。韓国の知識経済部(日本の経済産業省に当る)によると、日本の対韓投資(申告ベース)は、2011年22.9億ドル、2012年には45.4億ドルと、急増している(注4)。

また、JETROによると、韓国に進出した日本の現地法人の営業利益は他の地域に進出した現地法人と比べてはるかに高い(注5)。

つまり、韓国企業が日本企業との協力関係を通じて著しく成長する一方で、日本企業も 韓国企業の活力を取り込んで共に成長できるというWIN-WINの関係が構築されているといえよう。

韓日協力の持続的な拡大発展のための課題

市場経済と自由民主主義という価値を共有した韓日両国の企業が相互のコアコンピタンスを活用して、熾烈に競争しながらも、緊密な連携を拡大していけば、両国はもちろん、東アジアひいては世界経済にも大きく貢献できるだろう。

まず、東日本大震災の教訓から最適部品素材調達体制の構築が必要である。日本政府と企業は、東日本大震災後、サプライチェーンの再構築に尽力している。日本企業と緊密な協力関係を持っている韓国企業としても、部品素材や機器の安定調達という側面から、この問題は非常に重要である。両国がリスク分散を通じた最適な調達体制を構築するためには、韓国の裾野産業の育成強化を通じた両国間提携促進の基盤造成も考えられる。そのためには、従来の日本企業の対韓投資拡大のほか、韓国企業も積極的に日本企業に投資する必要があるだろう。韓国の対外投資誘致政策を考えると、韓国企業の対日投資拡大のために、日本政府と地方自治体の一層の環境づくりと支援政策が必要であろう。

2つ目は、韓日両国は新たな成長産業の育成にも関心を持っており、かなりの共通分野が存在するので、競争しながらも、相互協力する方案を積極的に模索することが望まれる。特に環境とエネルギー分野の協力の可能性が大きい。

3つ目は、韓日間の部品素材の標準統一化と部品共通化の推進が必要である。韓国はもちろん、日本としても韓国企業との戦略的提携および標準化の分野などでの協力拡大は「ガラパゴス現象」を克服するにも効果が大きい。

4つ目は、両国間の協力拡大のインフラとして韓日あるいは中国を含む3カ国間の貿易と産業コードの統一化作業を推進することを提案する。部品素材の分類も統一すれば今後の韓日や韓日中3カ国が推進する各種の交渉や協力を議論する過程で有用なものと考えられる。

最後に、政経分離を通じた韓日の持続可能な協力環境作りの重要さを再び強調したい。

2013年1月15日
脚注
  1. ^ 一方、韓国は中国に対しては459億ドルの黒字を記録している。
  2. ^ (輸出 - 輸入)/(輸出 + 輸入)で計算。
  3. ^ Mok Sakong, Lee Moon-Hyung, Shin Hyun-Soo, Cho Chul『韓中日部品素材産業の分業構造変化と課題』, 産業研究院, 2011. 12(韓国語), Mok Sakong, "Competition and Complementarity in Component and Material Industries between Korea, China and Japan", IER Vol 17, No 2, KIET, Mar/Apr2012, pp. 15~30を参照せよ。
  4. ^ 知識経済部のプレスリリース「2012年の外国直接投資(FDI)の実績、過去最大」2013年1月4日
  5. ^ JETRO「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2012年度調査)」2012年12月 韓国にある日本現地法人が2012年黒字を予想する割合が75%、バランスが14.6%、損失が10.4%で、主な工業国のなかでは台湾に次いで2位を占めている。

2013年1月15日掲載

この著者の記事