プロスポーツ・リーグの経済学 近鉄合併問題の本質=マネジメントの欠如:投稿意見

広瀬 一郎
上席研究員

「近鉄合併問題の本質=マネジメントの欠如」について~十分なファン層の有無と関連して

(株)情報通信総合研究所 岩田祐一

営利組織であれ、非営利組織であれ、その運営が財政的に立ち行かなくなるのは、(a)当事者が環境の変化に対応しきれなくなることと、(b)その組織を支える人々の見限り、ということが原因として存在すると思われます。特に(a)の意味で、凡そあらゆる組織運営/事業運営は「ステークホルダー型経営」であることがいえると考えます。
また、いかなるマーケットでも、それが基本的な生活必需品でない限りは、複数の供給者の競争によってマーケットが拡大するのが一般的と考えられ、スポーツだけが「単独では成立しない特異な商品」ではないと思われます。
と考えますと、今回のプロ野球チーム再編をめぐる一連の動きは、スポーツのみにあてはまる問題ではなく、むしろ組織運営/事業運営全般に共通する普遍的な問題に基づくのではないか思われます。

今回の根源的な問題として置き去りにされがちなのは「球団運営を十分に支えるだけのファンが存在しているか否か」という点であります。
ファンが存在しているにもかかわらず、球団運営がままならないのであれば、それは運営当事者の責任に帰する部分が大きいでしょう。またファンがそもそも十分に存在していないのであれば、運営当事者の努力不足もさることながら、十分なステークホルダーが存在していない、という問題にも同時に注目すべきでしょう。
ファンが十分に存在していない状態であった場合、球団を支えられるレベルまでにファンを増加させるか否かは、一義的には運営当事者の意思、更にはステークホルダーの総意によるものでしょう。そして何よりも、これこそがスポーツ組織の維持・拡大にあたって最も難しいハードルだと思われます。

「12球団で生き残るならどうすればよいのか」「生き残れないにしてもどういう手を打つべきか」ファン層の現状をふまえた具体的施策と数値とを結びつけた議論がなされることを願っています。

コラムを読む