「人民元、年内切り上げへ」は本当か?─読み取るべきポイントは「インフレ阻止」:投稿意見

津上 俊哉
上席研究員

経済産業研究所 津上俊哉上席研究員 「人民元、年内切り上げへ」は本当か

匿名希望

津上上席研究員の中国の為替政策についてのマスコミの論調と実際の中国政府の対応についての分析は非常に納得できます。

人民銀行はどんな形にせよ為替政策の変更をマスコミに意図的に伝えることはないと思います。そのような変更を伝える権限を持つのは政府ではなくて、党であり、その筋からの示唆が先に出るのがこの国の権力のメカニズムであると考えるからです。

また、違法な資金流入や外資の進出で一層加速した外貨準備の為にあふれた資金や地方政府のイメージ・プロジェクトを含む財政政策等で過剰投資が発生しインフレが起きつつあり、これに対処すべきというご見解も全く同感です。

ただ、金融機構の改革は横においてその他の政策を実現することができるのでしょうか。国有企業も金融機関も行政機関も、その経営能力は率直にいって甲乙つけがたく、津上研究員のいわれるような政策が効力を持って遂行できるとは信じがたいものがあります。

そうはいっても金融政策でインフレを収束させるよりは為替政策(元切り上げ)でインフレの芽をつむのは中国にとってみれば、よりましな選択だと思います。過去の金融引き締めの時期(90年代初期から中頃)に中国にいて、その惨状を経験してきた身からすると、金融政策によりインフレを退治するのは大変に難しいように見えます。振幅の激しいのは日本のマスコミ以上に中国の政策です。

市場関係者や中国関係アナリストの多くは元レートの切り上げはあっても小幅だという見解が多いのですが、2月27日にグリーンスパン議長はスタンフォード経済政策研究所での講演で人民元のフロート制についてこれまでの持論を展開されたようです。切り上げ幅についての言及こそありませんでしたが、米中間には既に合意が形成されつつあると見るべきではないでしょうか。

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