IT革命を日本経済の活性化につなげるために必要なこと:投稿意見

元橋 一之
RIETI上席研究員

消費者の便益向上にむけた政策を

ITコンサルタント 村上裕康

元橋さんは、「日本経済の特徴は、生産性の高い輸出業を中心とした製造業と、効率性が低い非製造業が共存していることであるが」とおっしゃっていますが、その通りだと思います。
このギャップは、日本の政策はいつも「生産者のための産業政策」が主で、「消費者の便益向上」は従に追いやられていた結果のためだと思います。「消費者の便益向上」を主とするような政策に転換しない限り、サービス産業の生産性向上は期待できません。

生産性向上のカギは?

RIETI理事 根津利三郎

ご意見概ね賛成ですが、小売業の生産性が日本で向上していないのは大規模店舗調整法による、というのは実証的研究があるのでしょうか。
規制があるとイノベーションが起こりにくいというのはそのとおりですし、小生も最近までなんとなくこのように考えてきましたが、大規模店舗の新規出店が仮に自由であったとしても、全体の店舗数に対する新規店舗の数はそれほどになるとも思えません。むしろ既存の店舗における生産性の改善が進むかどうかのほうが重要ではないでしょうか。マッキンゼーの報告にもあったと記憶していますが、米国でも小売り業の生産性向上はウオルマート1社によるところが多い、つまり1社が革新的ビジネスモデルを生み出すことにより、業界全体の生産性があがっていくということのようです。日本で生産性の向上がみられなかったのはこのような革新的なビジネスモデルが生み出されなかったことにあるので、大規模店舗法がなくなれば良くなるというものではないように思うのですが。

他の分野でも規制さえなくなれば全てうまくいくといえるのか、もう少し研究がいりそうです。革新的アイデアを生み出す工夫やリスクを恐れず投資をするリスクマネー、技術と金を結びつけてあらたな事業に育てていく経営者の存在が不可欠と考えています。

根津氏コメントに対する回答

上席研究員 元橋一之

大店法によって小売業の生産性上昇が阻害されているということを直接的に実証した分析はありません。ただ、以下のようないくつかの証拠はあります。
・マッキンゼーの調査ですが、日本の小売業における業態別生産性比較をしたもので、雇用数で全体の半分をしめる個人商店(いわゆるPap and Mum shop)の生産性はスーパーや百貨店の半分以下となっている。従って、スーパーの新規出店が進んで個人商店が淘汰されると、それぞれのカテゴリーで生産性上昇がなくても、小売業の平均的生産性は上昇する。
・米国における商業統計の個票分析によると新規に開業した店舗の方が生産性が高い。(日本における同種の分析はありませんが、)かつ、小売業の開廃業率は日本に比べて米国の方が高い。
上記の2点から述べたものです。

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